「まだ早い」麻生副総理は河野太郎に忠告 水面下で広がる“ポスト菅”の動きを後藤謙次氏が徹底解説

4月25日、衆議院北海道2区と参議院長野選挙区の補欠選挙、参議院広島選挙区の再選挙が行なわれ、3つとも野党の候補が勝利しました。注目を集めたのは広島の選挙の勝敗ですが、私は以前から、自民党が北海道2区で候補者擁立を見送ったことが、将来に禍根を残すと指摘していました。
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北海道2区は収賄罪で起訴され辞職した吉川貴盛元農水相の補選で、党内には候補者を立てるべきだという声が圧倒的でした。「政治とカネ」の問題が響いて立てられないというのが、執行部が擁立を見送った表向きの理由でしたが、自身の選挙をめぐって公職選挙法違反で有罪が確定した河井案里元参院議員が失職したために再選挙となった広島には候補者を立てたのですから、整合性が問われる苦しい理屈だったと言えます。
後藤謙次氏 文藝春秋
この擁立見送りには、こんな背景があったと永田町では囁かれています。吉川氏には、次の衆院選挙で息子を含む自身の系列の候補を擁立したいという強い希望があった。しかし、今回の補選で、候補を立ててしまうと、その目論見が崩れてしまう。そこで、当選同期の菅義偉首相や山口泰明選対委員長が阿吽の呼吸で、候補者擁立を見送りを決めたというわけです。
小選挙区制度のもとでは、一度明け渡した議席を取り戻すには、大変な労力が必要です。自民党には2016年4月実施の衆議院京都3区補欠選挙で、候補者を立てずに民進党公認候補(当時)の泉健太氏に議席を明け渡したという苦い経験があります。泉氏は2017年の衆院選でも自民党公認候補を破り、連続当選。今や立憲民主党の政調会長です。京都3区は完全に野党の牙城になってしまいました。 もし仮に次の選挙で吉川系の候補が北海道2区に立ったとしても、大苦戦を強いられるのは必至です。それなのに、今回の選挙を「不戦敗」で済ませてしまった。「党執行部は秋までに行なわれる衆院選に向けて、本気で勝つための戦略を練っているのか」という不満の声が出るのもある意味では当然と言えます。党全体の士気を保つという面では、今回の見送りは非常に問題のある決断となってしまったのです。首相に近い自民党幹部は「負けに不思議の負けなし」 加えて痛かったのが広島です。自民党は広島では勝てると踏んでいたはずです。保守王国・広島の基礎票は、ざっくり言って自公50万票、野党30万票。しかし、結果は、与党候補の西田英範氏は33万票しか獲得できず、野党統一候補の宮口治子氏に37万票を取られ、負けました。敗因は自民党の典型的な負けパターンである、支持者が投票に行かなかったためと分析されています。 二階俊博幹事長は今年3月の記者会見で、河井夫妻の買収事件について「党としても他山の石として、しっかり対応していかなくてはならない」と発言しましたが、河井案里氏は二階派。「自分の庭の石」についてもどこか他人事でした。 代わって、告示間近に県連会長を買って出て、今回の選挙の陣頭指揮を執ったのが岸田文雄前政調会長でした。岸田氏は「我々は、前の選挙で金権の河井夫妻と戦って敗れた陣営だ」という正義の味方のような気持ちでいたかもしれません。しかし有権者には、結局二階派だろうが岸田派だろうが、「自民党」という同じ風呂敷の中での出来事にしか見えなかった。さらに擁立された候補者も、地元出身の元官僚というワンパターン。広島では、自民党は状況判断を完全に読み違えて選挙を戦った結果、なすすべもなく敗れたといえます。 長野の補選は立憲民主党の羽田雄一郎議員がコロナで急逝したために行われた選挙ですが、北海道と広島は事前に予想されていた選挙です。しかし、結局のところ、自民党は全く準備ができていなかった。というよりは戦略・戦術がなかった。しかもその敗北を、深刻に受け止めず、「負けるべくして負けたのだから仕方ない」という空気が党内にある。首相に近い自民党幹部も「負けに不思議の負けなし」と言っていました。ここに、私は自民党の危機が潜んでいる気がしています。水面下で活発化する「菅おろし」の動き 地方の選挙を見ても、自民党は1月に行なわれた山形県知事選で野党候補にダブルスコアの敗北を喫し、3月の千葉県知事選で100万票の差を付けられました。今回のトリプル選挙と同じ日にあった兵庫県豊岡市の市長選でも、自公推薦の現職が敗れています。政治の潮目の変化は地方から静かに始まるものです。こうした動きを見れば、風向きの変化を感じないわけにいきません。 今年9月30日は自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了です。今回菅政権発足後、初の国政選挙に3戦全敗したことで、早期解散はできなくなりました。来年の夏には参議院選挙があります。衆院選後1年以内の参院選挙ですから、いわば「衆参ワンセット選挙」となります。これから参院選の公認候補を揃えていく時期なので、誰を顔にして、次の選挙を戦うのかという話が必ず参院側から出てきます。 そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
もし仮に次の選挙で吉川系の候補が北海道2区に立ったとしても、大苦戦を強いられるのは必至です。それなのに、今回の選挙を「不戦敗」で済ませてしまった。「党執行部は秋までに行なわれる衆院選に向けて、本気で勝つための戦略を練っているのか」という不満の声が出るのもある意味では当然と言えます。党全体の士気を保つという面では、今回の見送りは非常に問題のある決断となってしまったのです。首相に近い自民党幹部は「負けに不思議の負けなし」 加えて痛かったのが広島です。自民党は広島では勝てると踏んでいたはずです。保守王国・広島の基礎票は、ざっくり言って自公50万票、野党30万票。しかし、結果は、与党候補の西田英範氏は33万票しか獲得できず、野党統一候補の宮口治子氏に37万票を取られ、負けました。敗因は自民党の典型的な負けパターンである、支持者が投票に行かなかったためと分析されています。 二階俊博幹事長は今年3月の記者会見で、河井夫妻の買収事件について「党としても他山の石として、しっかり対応していかなくてはならない」と発言しましたが、河井案里氏は二階派。「自分の庭の石」についてもどこか他人事でした。 代わって、告示間近に県連会長を買って出て、今回の選挙の陣頭指揮を執ったのが岸田文雄前政調会長でした。岸田氏は「我々は、前の選挙で金権の河井夫妻と戦って敗れた陣営だ」という正義の味方のような気持ちでいたかもしれません。しかし有権者には、結局二階派だろうが岸田派だろうが、「自民党」という同じ風呂敷の中での出来事にしか見えなかった。さらに擁立された候補者も、地元出身の元官僚というワンパターン。広島では、自民党は状況判断を完全に読み違えて選挙を戦った結果、なすすべもなく敗れたといえます。 長野の補選は立憲民主党の羽田雄一郎議員がコロナで急逝したために行われた選挙ですが、北海道と広島は事前に予想されていた選挙です。しかし、結局のところ、自民党は全く準備ができていなかった。というよりは戦略・戦術がなかった。しかもその敗北を、深刻に受け止めず、「負けるべくして負けたのだから仕方ない」という空気が党内にある。首相に近い自民党幹部も「負けに不思議の負けなし」と言っていました。ここに、私は自民党の危機が潜んでいる気がしています。水面下で活発化する「菅おろし」の動き 地方の選挙を見ても、自民党は1月に行なわれた山形県知事選で野党候補にダブルスコアの敗北を喫し、3月の千葉県知事選で100万票の差を付けられました。今回のトリプル選挙と同じ日にあった兵庫県豊岡市の市長選でも、自公推薦の現職が敗れています。政治の潮目の変化は地方から静かに始まるものです。こうした動きを見れば、風向きの変化を感じないわけにいきません。 今年9月30日は自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了です。今回菅政権発足後、初の国政選挙に3戦全敗したことで、早期解散はできなくなりました。来年の夏には参議院選挙があります。衆院選後1年以内の参院選挙ですから、いわば「衆参ワンセット選挙」となります。これから参院選の公認候補を揃えていく時期なので、誰を顔にして、次の選挙を戦うのかという話が必ず参院側から出てきます。 そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
加えて痛かったのが広島です。自民党は広島では勝てると踏んでいたはずです。保守王国・広島の基礎票は、ざっくり言って自公50万票、野党30万票。しかし、結果は、与党候補の西田英範氏は33万票しか獲得できず、野党統一候補の宮口治子氏に37万票を取られ、負けました。敗因は自民党の典型的な負けパターンである、支持者が投票に行かなかったためと分析されています。 二階俊博幹事長は今年3月の記者会見で、河井夫妻の買収事件について「党としても他山の石として、しっかり対応していかなくてはならない」と発言しましたが、河井案里氏は二階派。「自分の庭の石」についてもどこか他人事でした。 代わって、告示間近に県連会長を買って出て、今回の選挙の陣頭指揮を執ったのが岸田文雄前政調会長でした。岸田氏は「我々は、前の選挙で金権の河井夫妻と戦って敗れた陣営だ」という正義の味方のような気持ちでいたかもしれません。しかし有権者には、結局二階派だろうが岸田派だろうが、「自民党」という同じ風呂敷の中での出来事にしか見えなかった。さらに擁立された候補者も、地元出身の元官僚というワンパターン。広島では、自民党は状況判断を完全に読み違えて選挙を戦った結果、なすすべもなく敗れたといえます。 長野の補選は立憲民主党の羽田雄一郎議員がコロナで急逝したために行われた選挙ですが、北海道と広島は事前に予想されていた選挙です。しかし、結局のところ、自民党は全く準備ができていなかった。というよりは戦略・戦術がなかった。しかもその敗北を、深刻に受け止めず、「負けるべくして負けたのだから仕方ない」という空気が党内にある。首相に近い自民党幹部も「負けに不思議の負けなし」と言っていました。ここに、私は自民党の危機が潜んでいる気がしています。水面下で活発化する「菅おろし」の動き 地方の選挙を見ても、自民党は1月に行なわれた山形県知事選で野党候補にダブルスコアの敗北を喫し、3月の千葉県知事選で100万票の差を付けられました。今回のトリプル選挙と同じ日にあった兵庫県豊岡市の市長選でも、自公推薦の現職が敗れています。政治の潮目の変化は地方から静かに始まるものです。こうした動きを見れば、風向きの変化を感じないわけにいきません。 今年9月30日は自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了です。今回菅政権発足後、初の国政選挙に3戦全敗したことで、早期解散はできなくなりました。来年の夏には参議院選挙があります。衆院選後1年以内の参院選挙ですから、いわば「衆参ワンセット選挙」となります。これから参院選の公認候補を揃えていく時期なので、誰を顔にして、次の選挙を戦うのかという話が必ず参院側から出てきます。 そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
二階俊博幹事長は今年3月の記者会見で、河井夫妻の買収事件について「党としても他山の石として、しっかり対応していかなくてはならない」と発言しましたが、河井案里氏は二階派。「自分の庭の石」についてもどこか他人事でした。 代わって、告示間近に県連会長を買って出て、今回の選挙の陣頭指揮を執ったのが岸田文雄前政調会長でした。岸田氏は「我々は、前の選挙で金権の河井夫妻と戦って敗れた陣営だ」という正義の味方のような気持ちでいたかもしれません。しかし有権者には、結局二階派だろうが岸田派だろうが、「自民党」という同じ風呂敷の中での出来事にしか見えなかった。さらに擁立された候補者も、地元出身の元官僚というワンパターン。広島では、自民党は状況判断を完全に読み違えて選挙を戦った結果、なすすべもなく敗れたといえます。 長野の補選は立憲民主党の羽田雄一郎議員がコロナで急逝したために行われた選挙ですが、北海道と広島は事前に予想されていた選挙です。しかし、結局のところ、自民党は全く準備ができていなかった。というよりは戦略・戦術がなかった。しかもその敗北を、深刻に受け止めず、「負けるべくして負けたのだから仕方ない」という空気が党内にある。首相に近い自民党幹部も「負けに不思議の負けなし」と言っていました。ここに、私は自民党の危機が潜んでいる気がしています。水面下で活発化する「菅おろし」の動き 地方の選挙を見ても、自民党は1月に行なわれた山形県知事選で野党候補にダブルスコアの敗北を喫し、3月の千葉県知事選で100万票の差を付けられました。今回のトリプル選挙と同じ日にあった兵庫県豊岡市の市長選でも、自公推薦の現職が敗れています。政治の潮目の変化は地方から静かに始まるものです。こうした動きを見れば、風向きの変化を感じないわけにいきません。 今年9月30日は自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了です。今回菅政権発足後、初の国政選挙に3戦全敗したことで、早期解散はできなくなりました。来年の夏には参議院選挙があります。衆院選後1年以内の参院選挙ですから、いわば「衆参ワンセット選挙」となります。これから参院選の公認候補を揃えていく時期なので、誰を顔にして、次の選挙を戦うのかという話が必ず参院側から出てきます。 そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
代わって、告示間近に県連会長を買って出て、今回の選挙の陣頭指揮を執ったのが岸田文雄前政調会長でした。岸田氏は「我々は、前の選挙で金権の河井夫妻と戦って敗れた陣営だ」という正義の味方のような気持ちでいたかもしれません。しかし有権者には、結局二階派だろうが岸田派だろうが、「自民党」という同じ風呂敷の中での出来事にしか見えなかった。さらに擁立された候補者も、地元出身の元官僚というワンパターン。広島では、自民党は状況判断を完全に読み違えて選挙を戦った結果、なすすべもなく敗れたといえます。 長野の補選は立憲民主党の羽田雄一郎議員がコロナで急逝したために行われた選挙ですが、北海道と広島は事前に予想されていた選挙です。しかし、結局のところ、自民党は全く準備ができていなかった。というよりは戦略・戦術がなかった。しかもその敗北を、深刻に受け止めず、「負けるべくして負けたのだから仕方ない」という空気が党内にある。首相に近い自民党幹部も「負けに不思議の負けなし」と言っていました。ここに、私は自民党の危機が潜んでいる気がしています。水面下で活発化する「菅おろし」の動き 地方の選挙を見ても、自民党は1月に行なわれた山形県知事選で野党候補にダブルスコアの敗北を喫し、3月の千葉県知事選で100万票の差を付けられました。今回のトリプル選挙と同じ日にあった兵庫県豊岡市の市長選でも、自公推薦の現職が敗れています。政治の潮目の変化は地方から静かに始まるものです。こうした動きを見れば、風向きの変化を感じないわけにいきません。 今年9月30日は自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了です。今回菅政権発足後、初の国政選挙に3戦全敗したことで、早期解散はできなくなりました。来年の夏には参議院選挙があります。衆院選後1年以内の参院選挙ですから、いわば「衆参ワンセット選挙」となります。これから参院選の公認候補を揃えていく時期なので、誰を顔にして、次の選挙を戦うのかという話が必ず参院側から出てきます。 そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
代わって、告示間近に県連会長を買って出て、今回の選挙の陣頭指揮を執ったのが岸田文雄前政調会長でした。岸田氏は「我々は、前の選挙で金権の河井夫妻と戦って敗れた陣営だ」という正義の味方のような気持ちでいたかもしれません。しかし有権者には、結局二階派だろうが岸田派だろうが、「自民党」という同じ風呂敷の中での出来事にしか見えなかった。さらに擁立された候補者も、地元出身の元官僚というワンパターン。広島では、自民党は状況判断を完全に読み違えて選挙を戦った結果、なすすべもなく敗れたといえます。 長野の補選は立憲民主党の羽田雄一郎議員がコロナで急逝したために行われた選挙ですが、北海道と広島は事前に予想されていた選挙です。しかし、結局のところ、自民党は全く準備ができていなかった。というよりは戦略・戦術がなかった。しかもその敗北を、深刻に受け止めず、「負けるべくして負けたのだから仕方ない」という空気が党内にある。首相に近い自民党幹部も「負けに不思議の負けなし」と言っていました。ここに、私は自民党の危機が潜んでいる気がしています。水面下で活発化する「菅おろし」の動き 地方の選挙を見ても、自民党は1月に行なわれた山形県知事選で野党候補にダブルスコアの敗北を喫し、3月の千葉県知事選で100万票の差を付けられました。今回のトリプル選挙と同じ日にあった兵庫県豊岡市の市長選でも、自公推薦の現職が敗れています。政治の潮目の変化は地方から静かに始まるものです。こうした動きを見れば、風向きの変化を感じないわけにいきません。 今年9月30日は自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了です。今回菅政権発足後、初の国政選挙に3戦全敗したことで、早期解散はできなくなりました。来年の夏には参議院選挙があります。衆院選後1年以内の参院選挙ですから、いわば「衆参ワンセット選挙」となります。これから参院選の公認候補を揃えていく時期なので、誰を顔にして、次の選挙を戦うのかという話が必ず参院側から出てきます。 そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
長野の補選は立憲民主党の羽田雄一郎議員がコロナで急逝したために行われた選挙ですが、北海道と広島は事前に予想されていた選挙です。しかし、結局のところ、自民党は全く準備ができていなかった。というよりは戦略・戦術がなかった。しかもその敗北を、深刻に受け止めず、「負けるべくして負けたのだから仕方ない」という空気が党内にある。首相に近い自民党幹部も「負けに不思議の負けなし」と言っていました。ここに、私は自民党の危機が潜んでいる気がしています。水面下で活発化する「菅おろし」の動き 地方の選挙を見ても、自民党は1月に行なわれた山形県知事選で野党候補にダブルスコアの敗北を喫し、3月の千葉県知事選で100万票の差を付けられました。今回のトリプル選挙と同じ日にあった兵庫県豊岡市の市長選でも、自公推薦の現職が敗れています。政治の潮目の変化は地方から静かに始まるものです。こうした動きを見れば、風向きの変化を感じないわけにいきません。 今年9月30日は自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了です。今回菅政権発足後、初の国政選挙に3戦全敗したことで、早期解散はできなくなりました。来年の夏には参議院選挙があります。衆院選後1年以内の参院選挙ですから、いわば「衆参ワンセット選挙」となります。これから参院選の公認候補を揃えていく時期なので、誰を顔にして、次の選挙を戦うのかという話が必ず参院側から出てきます。 そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
長野の補選は立憲民主党の羽田雄一郎議員がコロナで急逝したために行われた選挙ですが、北海道と広島は事前に予想されていた選挙です。しかし、結局のところ、自民党は全く準備ができていなかった。というよりは戦略・戦術がなかった。しかもその敗北を、深刻に受け止めず、「負けるべくして負けたのだから仕方ない」という空気が党内にある。首相に近い自民党幹部も「負けに不思議の負けなし」と言っていました。ここに、私は自民党の危機が潜んでいる気がしています。水面下で活発化する「菅おろし」の動き 地方の選挙を見ても、自民党は1月に行なわれた山形県知事選で野党候補にダブルスコアの敗北を喫し、3月の千葉県知事選で100万票の差を付けられました。今回のトリプル選挙と同じ日にあった兵庫県豊岡市の市長選でも、自公推薦の現職が敗れています。政治の潮目の変化は地方から静かに始まるものです。こうした動きを見れば、風向きの変化を感じないわけにいきません。 今年9月30日は自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了です。今回菅政権発足後、初の国政選挙に3戦全敗したことで、早期解散はできなくなりました。来年の夏には参議院選挙があります。衆院選後1年以内の参院選挙ですから、いわば「衆参ワンセット選挙」となります。これから参院選の公認候補を揃えていく時期なので、誰を顔にして、次の選挙を戦うのかという話が必ず参院側から出てきます。 そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
地方の選挙を見ても、自民党は1月に行なわれた山形県知事選で野党候補にダブルスコアの敗北を喫し、3月の千葉県知事選で100万票の差を付けられました。今回のトリプル選挙と同じ日にあった兵庫県豊岡市の市長選でも、自公推薦の現職が敗れています。政治の潮目の変化は地方から静かに始まるものです。こうした動きを見れば、風向きの変化を感じないわけにいきません。 今年9月30日は自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了です。今回菅政権発足後、初の国政選挙に3戦全敗したことで、早期解散はできなくなりました。来年の夏には参議院選挙があります。衆院選後1年以内の参院選挙ですから、いわば「衆参ワンセット選挙」となります。これから参院選の公認候補を揃えていく時期なので、誰を顔にして、次の選挙を戦うのかという話が必ず参院側から出てきます。 そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
今年9月30日は自民党総裁の任期満了で、10月21日が衆議院議員の任期満了です。今回菅政権発足後、初の国政選挙に3戦全敗したことで、早期解散はできなくなりました。来年の夏には参議院選挙があります。衆院選後1年以内の参院選挙ですから、いわば「衆参ワンセット選挙」となります。これから参院選の公認候補を揃えていく時期なので、誰を顔にして、次の選挙を戦うのかという話が必ず参院側から出てきます。 そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
そこで、にわかに起こり始めているのが、「党の顔を代えるべきではないか」という議論です。つまり今自民党内には、9月に総裁選を行い、新しい総裁の下で10月の衆院選を戦った方がよいというシナリオが囁かれているのです。 ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
ただ、こうした「菅おろし」の動きはまだ表面化していません。「菅さんでは総選挙を戦えない」と見ている人たちが表向き沈黙しているのは、コロナ禍で権力闘争をすれば世論の反発を受けるからです。時間が経てば経つほど、こうした水面下の動きは活発になってくる可能性があります。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立った では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
では、ポスト菅として考えられる人物は誰か。昨年の総裁選で敗れ、消えたと見られていた石破茂氏は、1月に福岡で山崎拓元副総裁らと会食していたことが報じられました。これは来るべき総裁選に向けた多数派工作と考えるべき動きです。昨年の総裁選後、石破氏は派閥会長を辞任して、退会者も出ています。そこで小なりとはいえ石原派に影響力を持つ山崎氏に接近したと見られます。ただ石破氏に関しては「安倍さんあっての石破さん」という見方があります。安倍氏が首相を辞めればライバルも存在意義を失うという意味です。 岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
岸田氏は、今回の広島の敗戦責任を押し付けられています。河井事件で名前が出た菅首相や二階幹事長は、今回の選挙で洞ヶ峠を決め込み、被害者だったはずの岸田氏が悪者の頭領になってしまいました。菅・二階の“老獪さ”に対して、岸田氏の“人の良さ”が際立つ形になりました。しかし、「お人好し」というのは、政治家にとって決して褒め言葉ではありませんから、ここからどう立て直すかが問題になってきます。ニュー太郎ブームが現実味を帯びてくる可能性 国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
国民の期待が高い河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相には、国会議員票がさほど見込めません。しかも派閥の親分たる麻生太郎氏が、ニュー太郎こと河野氏に「(総裁選の出馬は)まだ早い」と言ったという話も漏れ伝わってきます。 この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
この話の背景には、政権ナンバー2で第2派閥を率いる麻生副総理と、最大派閥・細田派の事実上のオーナーである安倍晋三前首相の意向が関係しているとみられます。麻生氏と安倍氏は「2人で党内を抑えておきたい。現在の構図を崩さないためには菅政権を支えることが現時点ではベストだ」と考えているのではないでしょうか。 ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
ただかつての小泉旋風のように国民的人気が高いとなれば恥も外聞もなく雪崩を打つのが議員心理です。ワクチン接種が成功すれば、「ニュー太郎ブーム」も現実味を帯びてくる可能性があります。 再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
再々登板への意欲が取り沙汰される安倍氏がポスト菅として再び表舞台に出てくるとは考えにくいでしょう。「桜を見る会」の問題がまだ尾を引いていますし、病気退陣から1年も経っていません。今度の衆院選と来年の参院選は黒子に徹し、その後に、どういう形で影響力を行使するようになるかでしょう。安倍氏は党内最大派閥を率いる元総理というキングメーカーだった頃の田中角栄氏と同じ立場になりつつあります。安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
安倍前首相の「復権宣言」と影響力回復の証 安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
安倍氏は5月3日に放送されたBSフジの「プライムニュース」で秋の総裁選を睨んで早々に菅首相支持を表明しました。これには2つの政治的狙いがあると思います。1つは政界全体に対する存在感の誇示、「復権宣言」と言ってもいいと思います。そして2つ目は細田派内の下村博文政調会長のように総裁選出馬に意欲を滲ませる議員に対するけん制です。田中元首相と同じく竹下登、森喜朗の両元首相は首相の在任期間は短くても政界における影響力を残しキングメーカーの立場を維持しました。派閥のオーナーだったからです。逆に中曽根康弘、小泉純一郎の両氏は首相退陣後に派閥的な背景が弱く、影響力を失いました。今国会で憲法改正のための国民投票法案が成立の見通しとなったのも安倍氏の影響力回復の証とみていいかもしれません。 こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
こうして見てみると、自民党には菅首相に対抗する総裁候補が現時点ではいないとも言えます。しかし何十年も総裁選を取材してきた私の経験から言えば、いざ総裁選となれば、必ず誰かが出てくるものです。例えば、幹事長代行の野田聖子氏、茂木敏充外務大臣の名前も浮上してくるかもしれません。キーフレーズは「誰なら生き残れるか」という議員心理です。解散の決断には山口、安倍、二階、麻生4氏の了解が必要 3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
3戦全敗という結果が出る少し前まで、ささやかれていた“4月解散”が見送られた経緯を「首相動静」から紐解いてみると、今の与党内の力関係を窺い知ることができます。まず、3月23日、首相は官邸で、公明党の山口那津男代表と昼飯を共にしています。 3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
3月29日には、衆院第1議員会館の安倍晋三事務所を、首相自ら訪ねています。総理大臣が人に会うときは官邸か公邸に迎えるのが基本で、場合によってホテルや料亭など中立的な場所を使います。わざわざ安倍事務所へ足を運んだのは、ある意味、臣下の礼をとったのと同じくらいに特筆すべきことです。 4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
4月1日、二階俊博幹事長、森山裕国対委員長、林幹雄幹事長代理と、官邸で昼飯をともにしました。二階、森山、林は「菅政権を作った3人」とも言われますが、ここで重要なのは二階氏を特別扱いしていない点です。この点は二階氏の心理に微妙な影を落としたと私は見ています。 そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
そして4月6日には、麻生副総理と官邸で昼飯。これをもって、4月の早期解散は見送られることになったとされています。 つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
つまり、菅首相が、解散するか否かといった重大な政治決断をするには、山口、安倍、二階、麻生4氏の了解を取り付けなければならないということでしょう。したがって今後、この4人と、どんな順番で、どんなタイミングで会うか、あるいは1対1で会うか複数か。そこに大きな意味が出てきます。菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
菅首相は「9月中にやる」と、解散権は自分にあることを誇示 3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
3月29日に菅総理が議員会館で安倍氏と面会した後、私は安倍氏に「菅首相に解散のアドバイスをしたのか」と尋ねました。安倍氏はそれには直接答えずに「私の場合は、選挙のことは毎日毎日考えていた」と述べました。選挙は勝てるときにやるものだというのが安倍氏の持論ですから、「なるべく早いうちにやったほうがいいと言った」という意味だったのでしょう。 菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
菅首相が重要な発言をしたのは、4月23日です。記者会見の場で、解散の時期について問われて、「私の総裁としての任期の中で」と答えたのです。その意味するところは「総裁選は行わない。衆議院選挙は、9月中にやる」。解散権は自分にあることを誇示したわけです。 しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
しかし菅総理が本当に解散権を行使できるかどうかは、政局の行方を左右する大きな2つの要素次第です。その2つとは言うまでもなく、コロナと、7月23日から9月5日まで開かれる予定の東京オリンピック・パラリンピックです。(取材・文 石井謙一郎 #2へつづく)「勝手にしろ」五輪中止発言で二階幹事長が見せた“動物的勘” 菅政権はコロナとオリンピックを乗り切れるか へ続く(後藤 謙次/Webオリジナル(特集班))
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