東京女子医大の現役医師が訴える深刻な労働実態

新宿区にある東京女子医大。新型コロナ患者も積極的に受け入れている(筆者撮影)
名門として知られる東京女子医科大学の付属病院で、今年3月までに医師が一斉退職した。東京・新宿の本院では約50人の内科医が去るなど、診療現場にさまざまな影響が出ている。東洋経済オンラインが伝えた医師の大量退職は、国会で取り上げられるなど、大きな反響を呼んだ。(参考記事:「スクープ!東京女子医大で医師100人超が退職」東洋経済オンライン2021年4月20日配信) 混乱の原因は、医師の負担が増える労働条件を一方的に押しつけた大学側の姿勢にあった。
一方、東京女子医大は取材を拒否しながら、本記事が配信された当日夜にウェブサイトで「東洋経済オンラインによる本学に対する偏向報道」という見出しを掲げ、内容を全面的に否定する声明を掲載している。
こうした大学の対応に疑問を抱いた現役医師たちが、新たに病院内部の状況を赤裸々に証言。一気に医師が退職した影響を明らかにした。
「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」「診療に支障をきたす事実はない」。東京女子医大のウェブサイトには、現在もこのような声明が掲載されている(5月24日現在)。だが、状況を最もよく知るのは医療現場の医師たちだろう。  「東洋経済オンラインの記事が出た後、『退職者は例年通りで、診療に支障はきたしていない』という内容の通知が職員に回ってきました。確かに退職した医師数は例年通りでも、同程度の入職者がいれば問題ありません。でも今年は明らかに入職者が少ない。通常業務に支障が出ていない、という大学の上層部の説明こそ、うそです」(A医師)
今回は医師の証言を中心に、どのような影響が病院内に出ているのか、具体的なファクトを提示したい。異なる診療科の医師たちから証言を得たが、今年の看護職員に対する「内規に反したコロナ感染では無給」騒動では、大学側が取材協力者を調査したことがあったことから、個人が特定できないように完全匿名で表記する。<影響 内科合同当直 担当医師は150人から100人に>東京女子医大の3つある付属病院で、中心的な存在が東京女子医科大学病院(東京・新宿区)。本院と呼ばれ、40を超える診療科と約1,200床を擁する巨大病院である。医師一斉退職は、本院の「内科合同当直」に深刻な影響を与えた、と本院に勤務するB医師は証言した。「今年4月から、内科合同当直を担当する医師が、約150人から約100人に減りました。医師の出入りが多い大学病院とはいえ、新人の内科医が明らかに少ない。私が東京女子医大に入局して10年以上になりますが、こんな異常事態は初めての経験です」(B医師)内科合同当直とは、血液内科、呼吸器内科、高血圧・内分泌内科、消化器内科、腎臓内科、糖尿病・代謝内科、膠原病リウマチ内科、化学療法・緩和ケア科、総合診療科の合計9つの診療科が、持ち回り制で夜間の当直を担当する方式である。1人の医師が100床以上を担当する合同当直当直する医師は1人。100人の当直要員がいても、救急外来や新型コロナ病棟などの担当もあるため、各医師に毎月2、3回は当直業務が回ってくるという。「内科合同当直で担当する入院患者は、100人以上。女子医大は重症の患者さんが多くて、夜間の急変時などに医師1人で対応しなければなりません。同じ内科とはいえ、診療科の専門性がかなり違います。病気によっては、ごくわずかな頭痛や微熱が重篤な状態に進む前のサインだったりする。専門の先生に電話で教えてもらう、オンコールというシステムもありますが、些細な症状で真夜中に電話で起こすのは、躊躇することもあります」(B医師)以前の当直体制は、診療科ごとに医師が対応していたので、夜間は常時約15人の医師がいた。それが2017年ごろ、効率化や経費削減という病院の方針で、現在の合同当直に切り替わった。現場の医師からは反対する声もあったが、押し切られたという。当初の合同当直は医師6人体制で始まったが、どんどん減らされて現在は1人になっている。<影響 コロナチームの主力医師が半減>本院では、総合診療科が中心となって新型コロナ感染症の対応をしているが、スタッフが足りないため、脳神経、循環器、消化器など内科系の診療科から応援の医師が加わり、20人の混成コロナチームが編成された。主力となっているのが、医師3年目から7年目の若手。専門医の資格をとるために、後期研修を受けている医師たちである。昨年、本院の内科には、約30人が採用された。それが、今年の採用は半分に減ってしまったという。その影響で、今年4月からコロナチームの維持が難しくなったと、C医師は証言する。「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
異なる診療科の医師たちから証言を得たが、今年の看護職員に対する「内規に反したコロナ感染では無給」騒動では、大学側が取材協力者を調査したことがあったことから、個人が特定できないように完全匿名で表記する。<影響 内科合同当直 担当医師は150人から100人に>東京女子医大の3つある付属病院で、中心的な存在が東京女子医科大学病院(東京・新宿区)。本院と呼ばれ、40を超える診療科と約1,200床を擁する巨大病院である。医師一斉退職は、本院の「内科合同当直」に深刻な影響を与えた、と本院に勤務するB医師は証言した。「今年4月から、内科合同当直を担当する医師が、約150人から約100人に減りました。医師の出入りが多い大学病院とはいえ、新人の内科医が明らかに少ない。私が東京女子医大に入局して10年以上になりますが、こんな異常事態は初めての経験です」(B医師)内科合同当直とは、血液内科、呼吸器内科、高血圧・内分泌内科、消化器内科、腎臓内科、糖尿病・代謝内科、膠原病リウマチ内科、化学療法・緩和ケア科、総合診療科の合計9つの診療科が、持ち回り制で夜間の当直を担当する方式である。1人の医師が100床以上を担当する合同当直当直する医師は1人。100人の当直要員がいても、救急外来や新型コロナ病棟などの担当もあるため、各医師に毎月2、3回は当直業務が回ってくるという。「内科合同当直で担当する入院患者は、100人以上。女子医大は重症の患者さんが多くて、夜間の急変時などに医師1人で対応しなければなりません。同じ内科とはいえ、診療科の専門性がかなり違います。病気によっては、ごくわずかな頭痛や微熱が重篤な状態に進む前のサインだったりする。専門の先生に電話で教えてもらう、オンコールというシステムもありますが、些細な症状で真夜中に電話で起こすのは、躊躇することもあります」(B医師)以前の当直体制は、診療科ごとに医師が対応していたので、夜間は常時約15人の医師がいた。それが2017年ごろ、効率化や経費削減という病院の方針で、現在の合同当直に切り替わった。現場の医師からは反対する声もあったが、押し切られたという。当初の合同当直は医師6人体制で始まったが、どんどん減らされて現在は1人になっている。<影響 コロナチームの主力医師が半減>本院では、総合診療科が中心となって新型コロナ感染症の対応をしているが、スタッフが足りないため、脳神経、循環器、消化器など内科系の診療科から応援の医師が加わり、20人の混成コロナチームが編成された。主力となっているのが、医師3年目から7年目の若手。専門医の資格をとるために、後期研修を受けている医師たちである。昨年、本院の内科には、約30人が採用された。それが、今年の採用は半分に減ってしまったという。その影響で、今年4月からコロナチームの維持が難しくなったと、C医師は証言する。「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
<影響 内科合同当直 担当医師は150人から100人に>
東京女子医大の3つある付属病院で、中心的な存在が東京女子医科大学病院(東京・新宿区)。本院と呼ばれ、40を超える診療科と約1,200床を擁する巨大病院である。医師一斉退職は、本院の「内科合同当直」に深刻な影響を与えた、と本院に勤務するB医師は証言した。「今年4月から、内科合同当直を担当する医師が、約150人から約100人に減りました。医師の出入りが多い大学病院とはいえ、新人の内科医が明らかに少ない。私が東京女子医大に入局して10年以上になりますが、こんな異常事態は初めての経験です」(B医師)内科合同当直とは、血液内科、呼吸器内科、高血圧・内分泌内科、消化器内科、腎臓内科、糖尿病・代謝内科、膠原病リウマチ内科、化学療法・緩和ケア科、総合診療科の合計9つの診療科が、持ち回り制で夜間の当直を担当する方式である。1人の医師が100床以上を担当する合同当直当直する医師は1人。100人の当直要員がいても、救急外来や新型コロナ病棟などの担当もあるため、各医師に毎月2、3回は当直業務が回ってくるという。「内科合同当直で担当する入院患者は、100人以上。女子医大は重症の患者さんが多くて、夜間の急変時などに医師1人で対応しなければなりません。同じ内科とはいえ、診療科の専門性がかなり違います。病気によっては、ごくわずかな頭痛や微熱が重篤な状態に進む前のサインだったりする。専門の先生に電話で教えてもらう、オンコールというシステムもありますが、些細な症状で真夜中に電話で起こすのは、躊躇することもあります」(B医師)以前の当直体制は、診療科ごとに医師が対応していたので、夜間は常時約15人の医師がいた。それが2017年ごろ、効率化や経費削減という病院の方針で、現在の合同当直に切り替わった。現場の医師からは反対する声もあったが、押し切られたという。当初の合同当直は医師6人体制で始まったが、どんどん減らされて現在は1人になっている。<影響 コロナチームの主力医師が半減>本院では、総合診療科が中心となって新型コロナ感染症の対応をしているが、スタッフが足りないため、脳神経、循環器、消化器など内科系の診療科から応援の医師が加わり、20人の混成コロナチームが編成された。主力となっているのが、医師3年目から7年目の若手。専門医の資格をとるために、後期研修を受けている医師たちである。昨年、本院の内科には、約30人が採用された。それが、今年の採用は半分に減ってしまったという。その影響で、今年4月からコロナチームの維持が難しくなったと、C医師は証言する。「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
医師一斉退職は、本院の「内科合同当直」に深刻な影響を与えた、と本院に勤務するB医師は証言した。「今年4月から、内科合同当直を担当する医師が、約150人から約100人に減りました。医師の出入りが多い大学病院とはいえ、新人の内科医が明らかに少ない。私が東京女子医大に入局して10年以上になりますが、こんな異常事態は初めての経験です」(B医師)内科合同当直とは、血液内科、呼吸器内科、高血圧・内分泌内科、消化器内科、腎臓内科、糖尿病・代謝内科、膠原病リウマチ内科、化学療法・緩和ケア科、総合診療科の合計9つの診療科が、持ち回り制で夜間の当直を担当する方式である。1人の医師が100床以上を担当する合同当直当直する医師は1人。100人の当直要員がいても、救急外来や新型コロナ病棟などの担当もあるため、各医師に毎月2、3回は当直業務が回ってくるという。「内科合同当直で担当する入院患者は、100人以上。女子医大は重症の患者さんが多くて、夜間の急変時などに医師1人で対応しなければなりません。同じ内科とはいえ、診療科の専門性がかなり違います。病気によっては、ごくわずかな頭痛や微熱が重篤な状態に進む前のサインだったりする。専門の先生に電話で教えてもらう、オンコールというシステムもありますが、些細な症状で真夜中に電話で起こすのは、躊躇することもあります」(B医師)以前の当直体制は、診療科ごとに医師が対応していたので、夜間は常時約15人の医師がいた。それが2017年ごろ、効率化や経費削減という病院の方針で、現在の合同当直に切り替わった。現場の医師からは反対する声もあったが、押し切られたという。当初の合同当直は医師6人体制で始まったが、どんどん減らされて現在は1人になっている。<影響 コロナチームの主力医師が半減>本院では、総合診療科が中心となって新型コロナ感染症の対応をしているが、スタッフが足りないため、脳神経、循環器、消化器など内科系の診療科から応援の医師が加わり、20人の混成コロナチームが編成された。主力となっているのが、医師3年目から7年目の若手。専門医の資格をとるために、後期研修を受けている医師たちである。昨年、本院の内科には、約30人が採用された。それが、今年の採用は半分に減ってしまったという。その影響で、今年4月からコロナチームの維持が難しくなったと、C医師は証言する。「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
「今年4月から、内科合同当直を担当する医師が、約150人から約100人に減りました。医師の出入りが多い大学病院とはいえ、新人の内科医が明らかに少ない。私が東京女子医大に入局して10年以上になりますが、こんな異常事態は初めての経験です」(B医師)内科合同当直とは、血液内科、呼吸器内科、高血圧・内分泌内科、消化器内科、腎臓内科、糖尿病・代謝内科、膠原病リウマチ内科、化学療法・緩和ケア科、総合診療科の合計9つの診療科が、持ち回り制で夜間の当直を担当する方式である。1人の医師が100床以上を担当する合同当直当直する医師は1人。100人の当直要員がいても、救急外来や新型コロナ病棟などの担当もあるため、各医師に毎月2、3回は当直業務が回ってくるという。「内科合同当直で担当する入院患者は、100人以上。女子医大は重症の患者さんが多くて、夜間の急変時などに医師1人で対応しなければなりません。同じ内科とはいえ、診療科の専門性がかなり違います。病気によっては、ごくわずかな頭痛や微熱が重篤な状態に進む前のサインだったりする。専門の先生に電話で教えてもらう、オンコールというシステムもありますが、些細な症状で真夜中に電話で起こすのは、躊躇することもあります」(B医師)以前の当直体制は、診療科ごとに医師が対応していたので、夜間は常時約15人の医師がいた。それが2017年ごろ、効率化や経費削減という病院の方針で、現在の合同当直に切り替わった。現場の医師からは反対する声もあったが、押し切られたという。当初の合同当直は医師6人体制で始まったが、どんどん減らされて現在は1人になっている。<影響 コロナチームの主力医師が半減>本院では、総合診療科が中心となって新型コロナ感染症の対応をしているが、スタッフが足りないため、脳神経、循環器、消化器など内科系の診療科から応援の医師が加わり、20人の混成コロナチームが編成された。主力となっているのが、医師3年目から7年目の若手。専門医の資格をとるために、後期研修を受けている医師たちである。昨年、本院の内科には、約30人が採用された。それが、今年の採用は半分に減ってしまったという。その影響で、今年4月からコロナチームの維持が難しくなったと、C医師は証言する。「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
内科合同当直とは、血液内科、呼吸器内科、高血圧・内分泌内科、消化器内科、腎臓内科、糖尿病・代謝内科、膠原病リウマチ内科、化学療法・緩和ケア科、総合診療科の合計9つの診療科が、持ち回り制で夜間の当直を担当する方式である。1人の医師が100床以上を担当する合同当直当直する医師は1人。100人の当直要員がいても、救急外来や新型コロナ病棟などの担当もあるため、各医師に毎月2、3回は当直業務が回ってくるという。「内科合同当直で担当する入院患者は、100人以上。女子医大は重症の患者さんが多くて、夜間の急変時などに医師1人で対応しなければなりません。同じ内科とはいえ、診療科の専門性がかなり違います。病気によっては、ごくわずかな頭痛や微熱が重篤な状態に進む前のサインだったりする。専門の先生に電話で教えてもらう、オンコールというシステムもありますが、些細な症状で真夜中に電話で起こすのは、躊躇することもあります」(B医師)以前の当直体制は、診療科ごとに医師が対応していたので、夜間は常時約15人の医師がいた。それが2017年ごろ、効率化や経費削減という病院の方針で、現在の合同当直に切り替わった。現場の医師からは反対する声もあったが、押し切られたという。当初の合同当直は医師6人体制で始まったが、どんどん減らされて現在は1人になっている。<影響 コロナチームの主力医師が半減>本院では、総合診療科が中心となって新型コロナ感染症の対応をしているが、スタッフが足りないため、脳神経、循環器、消化器など内科系の診療科から応援の医師が加わり、20人の混成コロナチームが編成された。主力となっているのが、医師3年目から7年目の若手。専門医の資格をとるために、後期研修を受けている医師たちである。昨年、本院の内科には、約30人が採用された。それが、今年の採用は半分に減ってしまったという。その影響で、今年4月からコロナチームの維持が難しくなったと、C医師は証言する。「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
当直する医師は1人。100人の当直要員がいても、救急外来や新型コロナ病棟などの担当もあるため、各医師に毎月2、3回は当直業務が回ってくるという。「内科合同当直で担当する入院患者は、100人以上。女子医大は重症の患者さんが多くて、夜間の急変時などに医師1人で対応しなければなりません。同じ内科とはいえ、診療科の専門性がかなり違います。病気によっては、ごくわずかな頭痛や微熱が重篤な状態に進む前のサインだったりする。専門の先生に電話で教えてもらう、オンコールというシステムもありますが、些細な症状で真夜中に電話で起こすのは、躊躇することもあります」(B医師)以前の当直体制は、診療科ごとに医師が対応していたので、夜間は常時約15人の医師がいた。それが2017年ごろ、効率化や経費削減という病院の方針で、現在の合同当直に切り替わった。現場の医師からは反対する声もあったが、押し切られたという。当初の合同当直は医師6人体制で始まったが、どんどん減らされて現在は1人になっている。<影響 コロナチームの主力医師が半減>本院では、総合診療科が中心となって新型コロナ感染症の対応をしているが、スタッフが足りないため、脳神経、循環器、消化器など内科系の診療科から応援の医師が加わり、20人の混成コロナチームが編成された。主力となっているのが、医師3年目から7年目の若手。専門医の資格をとるために、後期研修を受けている医師たちである。昨年、本院の内科には、約30人が採用された。それが、今年の採用は半分に減ってしまったという。その影響で、今年4月からコロナチームの維持が難しくなったと、C医師は証言する。「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
「内科合同当直で担当する入院患者は、100人以上。女子医大は重症の患者さんが多くて、夜間の急変時などに医師1人で対応しなければなりません。同じ内科とはいえ、診療科の専門性がかなり違います。病気によっては、ごくわずかな頭痛や微熱が重篤な状態に進む前のサインだったりする。専門の先生に電話で教えてもらう、オンコールというシステムもありますが、些細な症状で真夜中に電話で起こすのは、躊躇することもあります」(B医師)以前の当直体制は、診療科ごとに医師が対応していたので、夜間は常時約15人の医師がいた。それが2017年ごろ、効率化や経費削減という病院の方針で、現在の合同当直に切り替わった。現場の医師からは反対する声もあったが、押し切られたという。当初の合同当直は医師6人体制で始まったが、どんどん減らされて現在は1人になっている。<影響 コロナチームの主力医師が半減>本院では、総合診療科が中心となって新型コロナ感染症の対応をしているが、スタッフが足りないため、脳神経、循環器、消化器など内科系の診療科から応援の医師が加わり、20人の混成コロナチームが編成された。主力となっているのが、医師3年目から7年目の若手。専門医の資格をとるために、後期研修を受けている医師たちである。昨年、本院の内科には、約30人が採用された。それが、今年の採用は半分に減ってしまったという。その影響で、今年4月からコロナチームの維持が難しくなったと、C医師は証言する。「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
以前の当直体制は、診療科ごとに医師が対応していたので、夜間は常時約15人の医師がいた。それが2017年ごろ、効率化や経費削減という病院の方針で、現在の合同当直に切り替わった。現場の医師からは反対する声もあったが、押し切られたという。当初の合同当直は医師6人体制で始まったが、どんどん減らされて現在は1人になっている。<影響 コロナチームの主力医師が半減>本院では、総合診療科が中心となって新型コロナ感染症の対応をしているが、スタッフが足りないため、脳神経、循環器、消化器など内科系の診療科から応援の医師が加わり、20人の混成コロナチームが編成された。主力となっているのが、医師3年目から7年目の若手。専門医の資格をとるために、後期研修を受けている医師たちである。昨年、本院の内科には、約30人が採用された。それが、今年の採用は半分に減ってしまったという。その影響で、今年4月からコロナチームの維持が難しくなったと、C医師は証言する。「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
<影響 コロナチームの主力医師が半減>
本院では、総合診療科が中心となって新型コロナ感染症の対応をしているが、スタッフが足りないため、脳神経、循環器、消化器など内科系の診療科から応援の医師が加わり、20人の混成コロナチームが編成された。主力となっているのが、医師3年目から7年目の若手。専門医の資格をとるために、後期研修を受けている医師たちである。昨年、本院の内科には、約30人が採用された。それが、今年の採用は半分に減ってしまったという。その影響で、今年4月からコロナチームの維持が難しくなったと、C医師は証言する。「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
主力となっているのが、医師3年目から7年目の若手。専門医の資格をとるために、後期研修を受けている医師たちである。昨年、本院の内科には、約30人が採用された。それが、今年の採用は半分に減ってしまったという。その影響で、今年4月からコロナチームの維持が難しくなったと、C医師は証言する。「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
「後期研修の医師が昨年の半分に減って、コロナチームのローテーションが組めなくなりました。それで指導医クラスの医師も駆り出されています。医師不足だからといって、コロナ対応に影響を出すわけにはいかず、残っている現場の医師で維持するしかありません。4月からずっとオーバーワークです」(C医師)現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
現在は、20人だったコロナチームを16人に縮小して、指導医を務める立場の医師(助教など)も加わっている。コロナ病棟の担当になると、当直は月4回。コロナ陽性の患者対応では、昼夜を問わず常に緊張が強いられる。最近ではコロナではない、外科系疾患の患者まで診ることになり、体力的にも精神的にも厳しいという。「無理をすれば何とかなる。やるしかありません」コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
コロナチームの対応もしている前出のA医師は、本音を話してくれた。「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
「私たちが無理をすれば、何とかなる。他に代わりの医者はいませんから、やるしかありません。でもコロナチーム以外に、内科の合同当直、救急外来の当番、そして所属している診療科の仕事もあります。若手内科医の負担は、本当に大きくなりました」(A医師)<影響 診療チーム3班が1班に縮小>東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
<影響 診療チーム3班が1班に縮小>
東京女子医大には、レベルの高い診断力や治療スキルを若手医師に丁寧に教える伝統があった。それが急激な医師の減少で、失われようとしているという。「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
「うちでは10年以上の経験を積んだ医師が班長になって、若手医師6、7人のチームを指導しながら病棟の患者を受け持ちます。これくらいの人数だと班長の指導が行き届いて、担当患者を丁寧に診ることができますし、検査の見落としなどのミスも防げます。しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
しかし、今年3月末に指導医クラスの医師が一気に辞めてしまい、内科のある診療科では3チームから1チームに縮小されました。その診療科では若手のフォローが十分にできなくなっています。診療の質にも影響しますので、ミスや事故が起きないか、心配ですね」(前出のA医師)指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
<影響 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>
本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
東京女子医大は、「3月の退職者数は、ほぼ例年通り」と主張しているが、これまで具体的な数字は示していない。本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
本院の中には、医師数が大幅に減少した診療科がある一方、変動がほとんどないところや逆に医師が増えた診療科もあるという。医師数についての回答そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
そこで、5月初旬、東京女子医大・広報室に対して医師数などに関する質問状を改めて送付した。取材拒否だった前回とは違い、回答書が返ってきた。3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
3つの付属病院について、今年4月1日時点で在籍している医師数を尋ねたところ、東京女子医大からは、昨年のデータも合わせて回答があった。医師数は常勤医のみで、非常勤や出向・派遣は含まないことを確認している。<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345 昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
<回答 付属病院の医師数>2020年4月1日 本院890 東医療269 八千代医療219  合計1,378 2021年4月1日 本院889 東医療246 八千代医療210  合計1,345
昨年から今年にかけて本院の医師数は「-1」。ほとんど変動がないという回答だった。3病院合計では「-33」となる。次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
次に年度替わりで、どれだけの医師が入れ替わったのかを確認するため、「今年3月末で退職した医師数」と「4月1日以降に入職した医師数」を質問した。<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163 本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
<回答 3月退職&4月入職の医師数>退職:2021.3  本院121  東医療41  八千代医療39  合計201 入職:2021.4  本院104  東医療33  八千代医療26  合計163
本院の場合、3月に退職した医師数と4月の入職との差は「-17」。3病院の合計では、医師201人が退職、入職は163人だったので、「-38」になる。4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
4月20日の記事において、筆者はその時点で確証を得ていた「3病院で100人以上の医師が減り、今年度の採用はこの数に及ばない」と記した。今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
今回、東京女子医大が明らかにした医師の退職者数は、記事の数字を大きく上まわる「3病院で201人」だった。一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
一方、今年度の採用は、退職した医師数よりも38人少なかったが、取材への回答書では、「医師数が若干減少しても、適正な水準は維持できている。一般診療、新型コロナ対応に影響はまったくない」と主張している。ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
ではなぜ、東京女子医大の現役医師たちから、悲痛な叫びともいえる証言があるのか。それは全体の医師数でみると「若干」という数字でも、特定の診療分野にとっては、深刻な影響を与えるからである。本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
本院では、約50人の内科医が減ったことで、当直業務やコロナ対応に影響が出ていると、現場の医師たちが証言している。分院の診療科では、数人の常勤医がいなくなった影響で、新規の外来患者や入院治療を中止する事態となった。大学病院ならではの事情深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
深刻な影響が内科系の診療科に起きているのは、大学病院ならではの事情が関係している。「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
「診療、教育、研究」という3つの役割を担う大学病院では、すべての診療科に高度な専門知識や経験、診療スキルを兼ね備えた医師を揃えていなければならない。診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
診療科(医局)によって所属の医師数も差が大きく、東京女子医大には数十人の医師がいるメジャーな診療科がある一方、10人以下のところも存在する。つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
つまり、数人の医師が退職することは、診療科によってまったく違う意味を持つのだ。前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
前述のとおり本院の内科系診療科では、指導医クラスの医師が退職した影響で、3つの診療チームが1つに縮小されて、若手医師の教育が十分にできない状態にあるという。このままでは、名門大学病院としての診療レベルが保てるのか、現場の医師が危機感を抱いているのだ。こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
こうした紛れもない事実を前にして、「診療に支障をきたす事実はない」という東京女子医大の主張は、ただ空虚に響く。医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
医師数の詳しい増減を含め、診療への影響について、東京女子医大に説明を求めたいところだが、大学からの回答書には追加取材は受けないと明示されていた。率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
率直にいえば、新型コロナ第4波のまっただ中のタイミングで、医療機関に対して批判的な報道をすることには迷いもあった。だが、東京女子医大の経営陣は、昨年のボーナスゼロ騒動や労働条件の一方的な変更など、働く人たちへの配慮に欠ける対応が目立つ。だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
だからこそ、いま東京女子医大の内部で起きている異常事態を伝える意義はあるのではないか。最終的に報道を後押ししたのは、東京女子医大に残る決断をした医師の言葉だった。「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)
「上のやり方がめちゃくちゃで、同僚がもう働けないと去っていきましたので、自分もあと1、2年かなと思っていました。そんな時に出た東洋経済の記事は、経営陣に反省を促す力になるかもしれません」(C医師)