【町田徹】日本は韓国に「負けて」いる…?貧弱すぎる「防衛費」の現状 懸念は「台湾有事」だけではない

防衛省は先週火曜日(7月13日)、令和3年版の防衛白書を公表した。
今年の白書は、中国の国力伸長に伴うパワーバランスの変化が原因で、既存の秩序の不確実性が増しているとの危機感をあらわにしたものだ。中国の防衛費の急拡大、米国を上回り世界最大となった海軍海上兵力のさらなる増強、尖閣諸島周辺での中国海警の活動活発化に加えて、台湾有事のリスクに警鐘を鳴らした。
photo by gettyimages

そのうえで、北朝鮮とロシアのほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新しい分野への備えの重要性も訴えている。
そして、最も憂慮せざるを得ないのが、2018年に韓国にも抜き去られたという日本の貧弱な防衛予算の現状である。
防衛白書は、国民に防衛の現状や施策、課題を理解してもらい、協力を得ることを目的に、防衛省が毎年発行している。
今年版は内容面で中国への危機感を明確にしたほか、体裁面では本文の前に分厚いダイジェストを設け、写真やグラフをふんだんに使って分かり易く解説する工夫がみられる。自衛隊員の採用難を映して、若者への情報提供も盛り込んだ。
防衛省のホームページにアクセスすれば、無料で読んだり、ダウンロードしたりできるので、興味のある人は一読してほしい。分量は膨大だが、表現は平易だ。筆者もひと晩で“一気読み”した。中国だけでなく、韓国にも…時間の無い人は、巻頭の岸信夫大臣の挨拶だけ読む手もあるだろう。2020年を振り返り、様々な安全保障上の課題や不安定要因がより顕在化・先鋭化し、国際社会の平和と繁栄を支えてきた普遍的価値に基づく国際秩序が大きな試練に晒されたと概観している。そのうえで、日本の周辺では、中国が東、南シナ海で一方的な現状変更を試み続けていると指摘。中国海警船が尖閣周辺の接続水域でほぼ毎日確認されているばかりか、領海侵入を繰り返し、日本の漁船に接近を試みる事態も発生。状況は深刻になっているという。 白書は5部構成だが、最初に押さえたいのは、「現在の安全保障環境の特徴」というタイトルの第1部の第1章「概観」に記された日本周辺の兵力だ。各国別の陸上兵力、艦艇、航空機の概数が示されている。このうち艦艇に着目すると、中国の730隻・212万トンに対し、日本は140隻・51万トンと遠く及ばない。米第7艦隊も30隻・40万トンに過ぎず、万が一にも有事となれば、この物量の差はいかんともしがたいように映る。また、概観では、日本の航空機350機が、韓国の640機や北朝鮮の550機に及ばないことも明記している。後述する第2章第2節には、日中の最新の装備状況も明記されている。潜水艦は中国の52隻に対し日本は21隻、駆逐艦・フリゲート艦は71隻に対し47隻、戦闘機は1146機に対し313機とここでも大きな開きがあるのだ。次に注目したいのは、「諸外国の防衛政策など」というタイトルが付けられた「第1部第2章」だ。この章には全部で10節あり、中東や北アフリカを含む世界各地の安全保障の情勢を分析している。肝は、最初の3節、つまり「第1節 米国」、「第2節 中国」、「第3節 米国と中国の関係など」と言ってよいだろう。「近い国」台湾との関係まず、米国。今年1月就任のバイデン大統領は米国第一主義と決別、国際社会復帰を決め、同盟関係の修復を掲げ、対中国で米国の優位性を再構築する構えだと紹介。中国については、過去30年以上、透明性を欠いたまま国防費を増加。今年度の国防予算がおよそ20兆3301億円と発表していることに言及した。世界最大と言われる海軍海上戦力の近代化が進められていることや、尖閣周辺での中国海警船の活動に詳しく触れたうえで、改正海警法の問題への憂慮を表明した。前述の近代的装備の多さは、この節に記載されている。米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
時間の無い人は、巻頭の岸信夫大臣の挨拶だけ読む手もあるだろう。2020年を振り返り、様々な安全保障上の課題や不安定要因がより顕在化・先鋭化し、国際社会の平和と繁栄を支えてきた普遍的価値に基づく国際秩序が大きな試練に晒されたと概観している。そのうえで、日本の周辺では、中国が東、南シナ海で一方的な現状変更を試み続けていると指摘。中国海警船が尖閣周辺の接続水域でほぼ毎日確認されているばかりか、領海侵入を繰り返し、日本の漁船に接近を試みる事態も発生。状況は深刻になっているという。 白書は5部構成だが、最初に押さえたいのは、「現在の安全保障環境の特徴」というタイトルの第1部の第1章「概観」に記された日本周辺の兵力だ。各国別の陸上兵力、艦艇、航空機の概数が示されている。このうち艦艇に着目すると、中国の730隻・212万トンに対し、日本は140隻・51万トンと遠く及ばない。米第7艦隊も30隻・40万トンに過ぎず、万が一にも有事となれば、この物量の差はいかんともしがたいように映る。また、概観では、日本の航空機350機が、韓国の640機や北朝鮮の550機に及ばないことも明記している。後述する第2章第2節には、日中の最新の装備状況も明記されている。潜水艦は中国の52隻に対し日本は21隻、駆逐艦・フリゲート艦は71隻に対し47隻、戦闘機は1146機に対し313機とここでも大きな開きがあるのだ。次に注目したいのは、「諸外国の防衛政策など」というタイトルが付けられた「第1部第2章」だ。この章には全部で10節あり、中東や北アフリカを含む世界各地の安全保障の情勢を分析している。肝は、最初の3節、つまり「第1節 米国」、「第2節 中国」、「第3節 米国と中国の関係など」と言ってよいだろう。「近い国」台湾との関係まず、米国。今年1月就任のバイデン大統領は米国第一主義と決別、国際社会復帰を決め、同盟関係の修復を掲げ、対中国で米国の優位性を再構築する構えだと紹介。中国については、過去30年以上、透明性を欠いたまま国防費を増加。今年度の国防予算がおよそ20兆3301億円と発表していることに言及した。世界最大と言われる海軍海上戦力の近代化が進められていることや、尖閣周辺での中国海警船の活動に詳しく触れたうえで、改正海警法の問題への憂慮を表明した。前述の近代的装備の多さは、この節に記載されている。米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
そのうえで、日本の周辺では、中国が東、南シナ海で一方的な現状変更を試み続けていると指摘。中国海警船が尖閣周辺の接続水域でほぼ毎日確認されているばかりか、領海侵入を繰り返し、日本の漁船に接近を試みる事態も発生。状況は深刻になっているという。 白書は5部構成だが、最初に押さえたいのは、「現在の安全保障環境の特徴」というタイトルの第1部の第1章「概観」に記された日本周辺の兵力だ。各国別の陸上兵力、艦艇、航空機の概数が示されている。このうち艦艇に着目すると、中国の730隻・212万トンに対し、日本は140隻・51万トンと遠く及ばない。米第7艦隊も30隻・40万トンに過ぎず、万が一にも有事となれば、この物量の差はいかんともしがたいように映る。また、概観では、日本の航空機350機が、韓国の640機や北朝鮮の550機に及ばないことも明記している。後述する第2章第2節には、日中の最新の装備状況も明記されている。潜水艦は中国の52隻に対し日本は21隻、駆逐艦・フリゲート艦は71隻に対し47隻、戦闘機は1146機に対し313機とここでも大きな開きがあるのだ。次に注目したいのは、「諸外国の防衛政策など」というタイトルが付けられた「第1部第2章」だ。この章には全部で10節あり、中東や北アフリカを含む世界各地の安全保障の情勢を分析している。肝は、最初の3節、つまり「第1節 米国」、「第2節 中国」、「第3節 米国と中国の関係など」と言ってよいだろう。「近い国」台湾との関係まず、米国。今年1月就任のバイデン大統領は米国第一主義と決別、国際社会復帰を決め、同盟関係の修復を掲げ、対中国で米国の優位性を再構築する構えだと紹介。中国については、過去30年以上、透明性を欠いたまま国防費を増加。今年度の国防予算がおよそ20兆3301億円と発表していることに言及した。世界最大と言われる海軍海上戦力の近代化が進められていることや、尖閣周辺での中国海警船の活動に詳しく触れたうえで、改正海警法の問題への憂慮を表明した。前述の近代的装備の多さは、この節に記載されている。米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
白書は5部構成だが、最初に押さえたいのは、「現在の安全保障環境の特徴」というタイトルの第1部の第1章「概観」に記された日本周辺の兵力だ。各国別の陸上兵力、艦艇、航空機の概数が示されている。このうち艦艇に着目すると、中国の730隻・212万トンに対し、日本は140隻・51万トンと遠く及ばない。米第7艦隊も30隻・40万トンに過ぎず、万が一にも有事となれば、この物量の差はいかんともしがたいように映る。また、概観では、日本の航空機350機が、韓国の640機や北朝鮮の550機に及ばないことも明記している。後述する第2章第2節には、日中の最新の装備状況も明記されている。潜水艦は中国の52隻に対し日本は21隻、駆逐艦・フリゲート艦は71隻に対し47隻、戦闘機は1146機に対し313機とここでも大きな開きがあるのだ。次に注目したいのは、「諸外国の防衛政策など」というタイトルが付けられた「第1部第2章」だ。この章には全部で10節あり、中東や北アフリカを含む世界各地の安全保障の情勢を分析している。肝は、最初の3節、つまり「第1節 米国」、「第2節 中国」、「第3節 米国と中国の関係など」と言ってよいだろう。「近い国」台湾との関係まず、米国。今年1月就任のバイデン大統領は米国第一主義と決別、国際社会復帰を決め、同盟関係の修復を掲げ、対中国で米国の優位性を再構築する構えだと紹介。中国については、過去30年以上、透明性を欠いたまま国防費を増加。今年度の国防予算がおよそ20兆3301億円と発表していることに言及した。世界最大と言われる海軍海上戦力の近代化が進められていることや、尖閣周辺での中国海警船の活動に詳しく触れたうえで、改正海警法の問題への憂慮を表明した。前述の近代的装備の多さは、この節に記載されている。米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
白書は5部構成だが、最初に押さえたいのは、「現在の安全保障環境の特徴」というタイトルの第1部の第1章「概観」に記された日本周辺の兵力だ。各国別の陸上兵力、艦艇、航空機の概数が示されている。このうち艦艇に着目すると、中国の730隻・212万トンに対し、日本は140隻・51万トンと遠く及ばない。米第7艦隊も30隻・40万トンに過ぎず、万が一にも有事となれば、この物量の差はいかんともしがたいように映る。また、概観では、日本の航空機350機が、韓国の640機や北朝鮮の550機に及ばないことも明記している。後述する第2章第2節には、日中の最新の装備状況も明記されている。潜水艦は中国の52隻に対し日本は21隻、駆逐艦・フリゲート艦は71隻に対し47隻、戦闘機は1146機に対し313機とここでも大きな開きがあるのだ。次に注目したいのは、「諸外国の防衛政策など」というタイトルが付けられた「第1部第2章」だ。この章には全部で10節あり、中東や北アフリカを含む世界各地の安全保障の情勢を分析している。肝は、最初の3節、つまり「第1節 米国」、「第2節 中国」、「第3節 米国と中国の関係など」と言ってよいだろう。「近い国」台湾との関係まず、米国。今年1月就任のバイデン大統領は米国第一主義と決別、国際社会復帰を決め、同盟関係の修復を掲げ、対中国で米国の優位性を再構築する構えだと紹介。中国については、過去30年以上、透明性を欠いたまま国防費を増加。今年度の国防予算がおよそ20兆3301億円と発表していることに言及した。世界最大と言われる海軍海上戦力の近代化が進められていることや、尖閣周辺での中国海警船の活動に詳しく触れたうえで、改正海警法の問題への憂慮を表明した。前述の近代的装備の多さは、この節に記載されている。米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
このうち艦艇に着目すると、中国の730隻・212万トンに対し、日本は140隻・51万トンと遠く及ばない。米第7艦隊も30隻・40万トンに過ぎず、万が一にも有事となれば、この物量の差はいかんともしがたいように映る。また、概観では、日本の航空機350機が、韓国の640機や北朝鮮の550機に及ばないことも明記している。後述する第2章第2節には、日中の最新の装備状況も明記されている。潜水艦は中国の52隻に対し日本は21隻、駆逐艦・フリゲート艦は71隻に対し47隻、戦闘機は1146機に対し313機とここでも大きな開きがあるのだ。次に注目したいのは、「諸外国の防衛政策など」というタイトルが付けられた「第1部第2章」だ。この章には全部で10節あり、中東や北アフリカを含む世界各地の安全保障の情勢を分析している。肝は、最初の3節、つまり「第1節 米国」、「第2節 中国」、「第3節 米国と中国の関係など」と言ってよいだろう。「近い国」台湾との関係まず、米国。今年1月就任のバイデン大統領は米国第一主義と決別、国際社会復帰を決め、同盟関係の修復を掲げ、対中国で米国の優位性を再構築する構えだと紹介。中国については、過去30年以上、透明性を欠いたまま国防費を増加。今年度の国防予算がおよそ20兆3301億円と発表していることに言及した。世界最大と言われる海軍海上戦力の近代化が進められていることや、尖閣周辺での中国海警船の活動に詳しく触れたうえで、改正海警法の問題への憂慮を表明した。前述の近代的装備の多さは、この節に記載されている。米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
また、概観では、日本の航空機350機が、韓国の640機や北朝鮮の550機に及ばないことも明記している。後述する第2章第2節には、日中の最新の装備状況も明記されている。潜水艦は中国の52隻に対し日本は21隻、駆逐艦・フリゲート艦は71隻に対し47隻、戦闘機は1146機に対し313機とここでも大きな開きがあるのだ。次に注目したいのは、「諸外国の防衛政策など」というタイトルが付けられた「第1部第2章」だ。この章には全部で10節あり、中東や北アフリカを含む世界各地の安全保障の情勢を分析している。肝は、最初の3節、つまり「第1節 米国」、「第2節 中国」、「第3節 米国と中国の関係など」と言ってよいだろう。「近い国」台湾との関係まず、米国。今年1月就任のバイデン大統領は米国第一主義と決別、国際社会復帰を決め、同盟関係の修復を掲げ、対中国で米国の優位性を再構築する構えだと紹介。中国については、過去30年以上、透明性を欠いたまま国防費を増加。今年度の国防予算がおよそ20兆3301億円と発表していることに言及した。世界最大と言われる海軍海上戦力の近代化が進められていることや、尖閣周辺での中国海警船の活動に詳しく触れたうえで、改正海警法の問題への憂慮を表明した。前述の近代的装備の多さは、この節に記載されている。米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
後述する第2章第2節には、日中の最新の装備状況も明記されている。潜水艦は中国の52隻に対し日本は21隻、駆逐艦・フリゲート艦は71隻に対し47隻、戦闘機は1146機に対し313機とここでも大きな開きがあるのだ。次に注目したいのは、「諸外国の防衛政策など」というタイトルが付けられた「第1部第2章」だ。この章には全部で10節あり、中東や北アフリカを含む世界各地の安全保障の情勢を分析している。肝は、最初の3節、つまり「第1節 米国」、「第2節 中国」、「第3節 米国と中国の関係など」と言ってよいだろう。「近い国」台湾との関係まず、米国。今年1月就任のバイデン大統領は米国第一主義と決別、国際社会復帰を決め、同盟関係の修復を掲げ、対中国で米国の優位性を再構築する構えだと紹介。中国については、過去30年以上、透明性を欠いたまま国防費を増加。今年度の国防予算がおよそ20兆3301億円と発表していることに言及した。世界最大と言われる海軍海上戦力の近代化が進められていることや、尖閣周辺での中国海警船の活動に詳しく触れたうえで、改正海警法の問題への憂慮を表明した。前述の近代的装備の多さは、この節に記載されている。米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
次に注目したいのは、「諸外国の防衛政策など」というタイトルが付けられた「第1部第2章」だ。この章には全部で10節あり、中東や北アフリカを含む世界各地の安全保障の情勢を分析している。肝は、最初の3節、つまり「第1節 米国」、「第2節 中国」、「第3節 米国と中国の関係など」と言ってよいだろう。「近い国」台湾との関係まず、米国。今年1月就任のバイデン大統領は米国第一主義と決別、国際社会復帰を決め、同盟関係の修復を掲げ、対中国で米国の優位性を再構築する構えだと紹介。中国については、過去30年以上、透明性を欠いたまま国防費を増加。今年度の国防予算がおよそ20兆3301億円と発表していることに言及した。世界最大と言われる海軍海上戦力の近代化が進められていることや、尖閣周辺での中国海警船の活動に詳しく触れたうえで、改正海警法の問題への憂慮を表明した。前述の近代的装備の多さは、この節に記載されている。米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
まず、米国。今年1月就任のバイデン大統領は米国第一主義と決別、国際社会復帰を決め、同盟関係の修復を掲げ、対中国で米国の優位性を再構築する構えだと紹介。中国については、過去30年以上、透明性を欠いたまま国防費を増加。今年度の国防予算がおよそ20兆3301億円と発表していることに言及した。世界最大と言われる海軍海上戦力の近代化が進められていることや、尖閣周辺での中国海警船の活動に詳しく触れたうえで、改正海警法の問題への憂慮を表明した。前述の近代的装備の多さは、この節に記載されている。米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
中国については、過去30年以上、透明性を欠いたまま国防費を増加。今年度の国防予算がおよそ20兆3301億円と発表していることに言及した。世界最大と言われる海軍海上戦力の近代化が進められていることや、尖閣周辺での中国海警船の活動に詳しく触れたうえで、改正海警法の問題への憂慮を表明した。前述の近代的装備の多さは、この節に記載されている。米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
米中関係では、様々な分野で両国の戦略的競争が一層顕在化していくと分析。今年3月の議会公聴会で、インド太平洋軍司令官が「中国の台湾に対する野心が今後6年以内に明らかになる」と証言したことを紹介した。軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
軍事大国として存在感を強め続ける中国/photo by gettyimages 実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
実際に、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させている例も列挙。この地域の安定は日本だけでなく、国際社会にとっても重要であり、一層の緊張感を持って注視する必要があると強調している。確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
確かに、台湾は日本に近い。筆者は釣りが好きで、与那国島沖に釣りに行ったことがあるが、天気が良ければ、台湾は与那国島から視認できる距離だ。いざ、台湾有事となれば、米軍機が沖縄本島の嘉手納基地から出撃するとみられ、嘉手納基地つまり沖縄が中国からの攻撃にさらされ、戦場と化すリスクは大きい。筆者が非公式の席で防衛省幹部に取材したところ、この幹部もこうしたリスクを否定しなかった。白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
白書は、中国関連の次に北朝鮮、その次にロシアに詳しく触れている。北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
北朝鮮は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっているとし、これまでの6回の核実験の実施や、弾道ミサイルの発射の繰り返しに触れ、小型化した核兵器を弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる、と強い危機感を示した。また、サイバー領域の大規模な部隊の保持やその能力の侮れなさも指摘している。ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
ロシアの極東戦力はピーク時に比べると大幅に削減されたものの、依然として核戦力を含む相当規模の戦力があると分析。新たな部隊や装備を配備する動きのほか、中国と緊密な軍事協力を進めており、引き続き注視すべき存在だと結論付けている。韓国はさらに国防費を増強このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
このほか、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域への対応が重要になっているとして、世界や各国の状況について第1部に章を一つ設けて論述。自衛隊の対応を第3部「わが国の防衛の3つの柱」で明らかにしている。それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
それによると、昨年5月、自衛隊は初の専門部隊として宇宙作戦隊を新しく編制。状況の監視など宇宙空間の安定的利用確保に資する体制整備を進めている。また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
また、サイバー防衛体制の強化も進めており、新たな部隊の創設や人材の確保・育成、最新技術の活用、システム・ネットワークの安全性強化などにも取り組んでいるという。 気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
気掛かりなのが、防衛費の現状だ。第2部第4章の第2節「防衛力整備など」によると、今年度の日本の防衛関係費は5兆1235億円と昨年度に比べて547億円増えた。全体の4割強は人件費と糧食費だ。防衛関係費の増加は9年連続だが、前述の中国や韓国、北朝鮮の兵力増強ぶりを勘案すると、筆者には十分な増額だったと思えない。定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
定義そのものが曖昧で中身は一致していないだろうが、今年度、中国が認めている国防予算額は日本のほぼ4倍だ。国防費のGDP(国内総生産)比をみても、中国は1.25%と日本の0.94%を上回る。日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
日本の防衛費は、2018年にお隣の韓国にも逆転されている。この年、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。2025年には韓国の国防費は日本の1.5倍に膨らむ見通しだそうだ。GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
GDPで世界10位の韓国が世界3位の日本をしのいでいるのは、より多くを軍事費に割いているからである。2020年の韓国の国防費のGDPに対する割合は2.61%。これは日本の2.8倍だ。第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
第1部第2章の第4節の「朝鮮半島」の「韓国」の部分では、韓国が2019年1月に発刊した「2018国防白書」で、引き続き北朝鮮の大量破壊兵器は朝鮮半島の平和と安定に対する脅威であるとしつつも、北朝鮮を敵とする表現が消え、「韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」との表現が用いられていると指摘。今年2月発刊の「2020国防白書」にも、北朝鮮を敵とする表現はみられなかったとしている。「GDP比2%以上」の防衛費そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
そうした中で、韓国は国防改革を継続しており、陸軍はもとより海・空軍を含めた近代化に努めており、海軍は新型イージス艦、潜水艦、軽空母、大型輸送艦、国産駆逐艦などの導入を進め、空軍はステルス性を備えた次世代戦闘機としてF-35A戦闘機の導入を推進しているという。最新兵器の獲得のほか、超小型衛星、無人機などによる朝鮮半島の準リアルタイム監視網も構築中だ。これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
これらの装備の中には、対北朝鮮戦で必要とは考えにくい装備も少なくないと聞く。そもそもムン・ジェイン政権が北朝鮮融和政策を採る中で、これほど軍備を増強していることには首を傾げざるを得ないというのだ。私見だが、元徴用工や慰安婦の問題を巡る韓国の理不尽な態度の背景には、軍事力拡大を背景とした“危うい自信”が隠されているのかもしれない。 防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
防衛費拡充を話題にすると、日本には今なお「防衛費はGDP比で1%以内」という不文律が存在していると考える人がいるかもしれない。確かに、かつて周辺国から日本の軍事大国化が懸念されたことに配慮、三木武夫内閣時代の1976年に国民総生産(GNP)比で1%以内という上限枠を閣議決定した経緯はある。しかし、中曽根康弘内閣時代にこの枠を撤廃し、突破した年もあった。すでに1%枠は存在しないのだ。では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
では、いったい、どの程度の防衛予算が必要なのだろうか。参考になるのが、トランプ前政権時代に米国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国に対して要求した水準だ。GDP比で言えば、2%以上の防衛費である。日本も他人事とせず、早急に検討する必要があるだろう。現状を放置すると、「思いやり予算」の名目で、米国の軍事費の肩代わりの拡大を迫られかねない。一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
一方、米中デカップリング時代を迎えてサプライチェーンの見直し議論が高まる中で、政府・自民党や経済産業省では、「経済安全保障」を合言葉に、とっくに国際競争力を失った日本の半導体メーカーのテコ入れなどに巨額の公的資金投入を求める議論が熱を帯びている。昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
昨年の東芝の株主総会では、改正外為法の規定を持ち出して、米国の投資家の株主権行使をけん制する行為まであり、結果として東芝の経営を揺るがせていることは周知の事実だ。こうした実質破たん企業への乱暴な支援の継続は、公的資金の無駄遣いであるばかりか、淘汰されるべきゾンビ企業を存続させて市場の機能を損なう愚行に他ならない。百害あって一利なし、である。むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
むしろ、必要なのは、防衛に不可欠な装備をしっかりと精査して、必要最低限の予算を防衛費に加算していくことだろう。コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。
コロナ危機対策の結果、財政の一段のひっ迫は避けられないが、“世界の火薬庫”化しつつある東アジアで、日本の持続的安全を確保するには、知恵と外交努力が不可欠だ。そのうえで、それらを裏打ちする相応の防衛費の拡大も重要になっているのではないだろうか。