なくならない「夜逃げ」背景にあるそれぞれの事情

借金や家賃が払えなくなり、行き先を告げずにこっそり逃げてしまう人たちにはどのような何があったのか(写真:ぱりろく/PIXTA)
神奈川県座間市に全国でも数少ない、一般には敬遠されがちな高齢者、母子家庭、障がい者などといった住宅困窮者を受け入れ、部屋探しに尽力しているプライムという不動産会社がある。その経営者である石塚惠氏がつぶやいた一言が気になっていた。
「夜逃げが3件続きました。全員、男性です」
必ずしも夜中に逃げるわけではないものの、借金や家賃が払えなくなり、行き先を告げずにこっそり逃げることを夜逃げという。夜逃げに関する統計、研究などはなく、正確にはわからないが、家賃滞納が100件あったとして夜逃げに発展するのは1件あるかないか。それほど起こるものではない。それが2年弱に3件の発生は非常に多い。
さらにひっかかったのは「男性」という部分。全員男性というのは偶然だろうか。それとも、男性が夜逃げに追い込まれやすい事情があるのか。背景を探るため、賃貸トラブルに詳しい専門家、そして石塚氏に聞いてみることにした。
まず、訪れたのはこれまでの20年間で夜逃げも含め、約2600件もの家賃滞納トラブルに対処してきたOAG司法書士法人代表の太田垣章子氏。家賃滞納トラブルに関してはプロ中のプロである。「夜逃げは男性に多いのか」という質問に対して返ってきた答えは「9割以上が男性です」だった。太田垣氏によると、全体を100とした場合、女性の夜逃げは多くて2くらい。失業による困窮、借金、家賃滞納など経済的な要因で消えることが多い男性に比べると、女性は女性特有の要因で姿を消すことが多い。主な夜逃げの要因は2つあると太田垣氏。1つはストーカーに追われて、あるいはドメスティック・バイオレンス(DV)から逃げるため、もう1つは男性の家に同居した後、前住居を放置することによるものだ。ただし、それ以外の場合、夜逃げに至ることは少ないようだ。女性の場合は家賃滞納に陥ることがあっても、友人宅や親しい男性宅に身を寄せるなど、誰かに頼るという選択肢を取れる人が多いのかもしれない。「女性のほうが社会とつながりがあり、金銭的な計算ができていることが多いようです」と太田垣氏は指摘する。また、同氏によると、女性の夜逃げでは本人を探せない状態に陥ることは少ない。女性側が提供する情報がすべてうそということは少なく、親族や勤め先の人など、誰かしらコンタクトを取れる人がいることも少なくない。「ところが男性、特に60代以上の場合には、何十年もそこに住んでいながら周囲との人間関係がまったくなく、住民票も移しておらず、契約書に書かれた住所が逃げた場所の住所になっているなど、本人を探す手がかりがないこともしばしば。身元不明で、本当にその人が存在していたのか、疑いたくなることがあるほどです」(太田垣氏)現在の賃貸借契約で住民票その他公的な本人確認書類を添付しないことは考えられないが、20年前、30年前にはそうした契約もありえた。免許証、保険証のコピーすらない契約だったケースで、住民税、年金、保険を払わず、身元確認が必要ない、日払いの仕事をしていた場合、探しようがない。名前すら本名かどうかも疑わしいのだ。身元不明者は男性のほうが多い実際、男性のほうが身元不明になる確率が高いことを示すデータがある。行旅死亡人の統計だ。行旅死亡人とは氏名、本籍地や住所などがわからず、かつ遺体の引き取り手のない人のことを言う。漢字の印象から行き倒れて身元がわからない状況を想像するが、実際には亡くなった場所や死因は問わず、自室で亡くなっていても身元がわからない、身分証明書を持っていても身分証明書の本人とは断定できなければ行旅死亡人とされる。自然災害で被災、身元不明の死亡者も同様である。明治23年の「行旅病人及行旅死亡人取扱法」は「行旅人」が死亡した場合、死亡地の自治体が行うべきことを定めているが、その1つに官報への公告がある。それを収集、行旅死亡人データベースとして集計しているサイトがあるのだが、それによると2010年1月以降2021年8月23日までに公告された行旅死亡人は9393人。そのうち、865人は性別不明で、男性は7096人、女性は1432人。身元不明のまま、亡くなった人のうち、4分の3は男性なのである。太田垣氏によると夜逃げで目立つのは、高齢男性と20代の若い男性だという。若い人の一部にはそもそも夜逃げという言葉を知らず、夜逃げしている感覚がない例も少なくないという。「家賃が払えない、出ていけと言われた、だから出てきた、いらないモノは置いてきた、何が悪いんですか?と言うのです。契約を解除しないと次の人に貸せない、残置物は勝手に処分できないから法的手続きが必要などを説明するとわかってもらえるのですが、他人にその影響が及んでいる感覚が薄いようです」続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
太田垣氏によると、全体を100とした場合、女性の夜逃げは多くて2くらい。失業による困窮、借金、家賃滞納など経済的な要因で消えることが多い男性に比べると、女性は女性特有の要因で姿を消すことが多い。主な夜逃げの要因は2つあると太田垣氏。1つはストーカーに追われて、あるいはドメスティック・バイオレンス(DV)から逃げるため、もう1つは男性の家に同居した後、前住居を放置することによるものだ。ただし、それ以外の場合、夜逃げに至ることは少ないようだ。女性の場合は家賃滞納に陥ることがあっても、友人宅や親しい男性宅に身を寄せるなど、誰かに頼るという選択肢を取れる人が多いのかもしれない。「女性のほうが社会とつながりがあり、金銭的な計算ができていることが多いようです」と太田垣氏は指摘する。また、同氏によると、女性の夜逃げでは本人を探せない状態に陥ることは少ない。女性側が提供する情報がすべてうそということは少なく、親族や勤め先の人など、誰かしらコンタクトを取れる人がいることも少なくない。「ところが男性、特に60代以上の場合には、何十年もそこに住んでいながら周囲との人間関係がまったくなく、住民票も移しておらず、契約書に書かれた住所が逃げた場所の住所になっているなど、本人を探す手がかりがないこともしばしば。身元不明で、本当にその人が存在していたのか、疑いたくなることがあるほどです」(太田垣氏)現在の賃貸借契約で住民票その他公的な本人確認書類を添付しないことは考えられないが、20年前、30年前にはそうした契約もありえた。免許証、保険証のコピーすらない契約だったケースで、住民税、年金、保険を払わず、身元確認が必要ない、日払いの仕事をしていた場合、探しようがない。名前すら本名かどうかも疑わしいのだ。身元不明者は男性のほうが多い実際、男性のほうが身元不明になる確率が高いことを示すデータがある。行旅死亡人の統計だ。行旅死亡人とは氏名、本籍地や住所などがわからず、かつ遺体の引き取り手のない人のことを言う。漢字の印象から行き倒れて身元がわからない状況を想像するが、実際には亡くなった場所や死因は問わず、自室で亡くなっていても身元がわからない、身分証明書を持っていても身分証明書の本人とは断定できなければ行旅死亡人とされる。自然災害で被災、身元不明の死亡者も同様である。明治23年の「行旅病人及行旅死亡人取扱法」は「行旅人」が死亡した場合、死亡地の自治体が行うべきことを定めているが、その1つに官報への公告がある。それを収集、行旅死亡人データベースとして集計しているサイトがあるのだが、それによると2010年1月以降2021年8月23日までに公告された行旅死亡人は9393人。そのうち、865人は性別不明で、男性は7096人、女性は1432人。身元不明のまま、亡くなった人のうち、4分の3は男性なのである。太田垣氏によると夜逃げで目立つのは、高齢男性と20代の若い男性だという。若い人の一部にはそもそも夜逃げという言葉を知らず、夜逃げしている感覚がない例も少なくないという。「家賃が払えない、出ていけと言われた、だから出てきた、いらないモノは置いてきた、何が悪いんですか?と言うのです。契約を解除しないと次の人に貸せない、残置物は勝手に処分できないから法的手続きが必要などを説明するとわかってもらえるのですが、他人にその影響が及んでいる感覚が薄いようです」続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
主な夜逃げの要因は2つあると太田垣氏。1つはストーカーに追われて、あるいはドメスティック・バイオレンス(DV)から逃げるため、もう1つは男性の家に同居した後、前住居を放置することによるものだ。ただし、それ以外の場合、夜逃げに至ることは少ないようだ。女性の場合は家賃滞納に陥ることがあっても、友人宅や親しい男性宅に身を寄せるなど、誰かに頼るという選択肢を取れる人が多いのかもしれない。「女性のほうが社会とつながりがあり、金銭的な計算ができていることが多いようです」と太田垣氏は指摘する。また、同氏によると、女性の夜逃げでは本人を探せない状態に陥ることは少ない。女性側が提供する情報がすべてうそということは少なく、親族や勤め先の人など、誰かしらコンタクトを取れる人がいることも少なくない。「ところが男性、特に60代以上の場合には、何十年もそこに住んでいながら周囲との人間関係がまったくなく、住民票も移しておらず、契約書に書かれた住所が逃げた場所の住所になっているなど、本人を探す手がかりがないこともしばしば。身元不明で、本当にその人が存在していたのか、疑いたくなることがあるほどです」(太田垣氏)現在の賃貸借契約で住民票その他公的な本人確認書類を添付しないことは考えられないが、20年前、30年前にはそうした契約もありえた。免許証、保険証のコピーすらない契約だったケースで、住民税、年金、保険を払わず、身元確認が必要ない、日払いの仕事をしていた場合、探しようがない。名前すら本名かどうかも疑わしいのだ。身元不明者は男性のほうが多い実際、男性のほうが身元不明になる確率が高いことを示すデータがある。行旅死亡人の統計だ。行旅死亡人とは氏名、本籍地や住所などがわからず、かつ遺体の引き取り手のない人のことを言う。漢字の印象から行き倒れて身元がわからない状況を想像するが、実際には亡くなった場所や死因は問わず、自室で亡くなっていても身元がわからない、身分証明書を持っていても身分証明書の本人とは断定できなければ行旅死亡人とされる。自然災害で被災、身元不明の死亡者も同様である。明治23年の「行旅病人及行旅死亡人取扱法」は「行旅人」が死亡した場合、死亡地の自治体が行うべきことを定めているが、その1つに官報への公告がある。それを収集、行旅死亡人データベースとして集計しているサイトがあるのだが、それによると2010年1月以降2021年8月23日までに公告された行旅死亡人は9393人。そのうち、865人は性別不明で、男性は7096人、女性は1432人。身元不明のまま、亡くなった人のうち、4分の3は男性なのである。太田垣氏によると夜逃げで目立つのは、高齢男性と20代の若い男性だという。若い人の一部にはそもそも夜逃げという言葉を知らず、夜逃げしている感覚がない例も少なくないという。「家賃が払えない、出ていけと言われた、だから出てきた、いらないモノは置いてきた、何が悪いんですか?と言うのです。契約を解除しないと次の人に貸せない、残置物は勝手に処分できないから法的手続きが必要などを説明するとわかってもらえるのですが、他人にその影響が及んでいる感覚が薄いようです」続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
ただし、それ以外の場合、夜逃げに至ることは少ないようだ。女性の場合は家賃滞納に陥ることがあっても、友人宅や親しい男性宅に身を寄せるなど、誰かに頼るという選択肢を取れる人が多いのかもしれない。「女性のほうが社会とつながりがあり、金銭的な計算ができていることが多いようです」と太田垣氏は指摘する。また、同氏によると、女性の夜逃げでは本人を探せない状態に陥ることは少ない。女性側が提供する情報がすべてうそということは少なく、親族や勤め先の人など、誰かしらコンタクトを取れる人がいることも少なくない。「ところが男性、特に60代以上の場合には、何十年もそこに住んでいながら周囲との人間関係がまったくなく、住民票も移しておらず、契約書に書かれた住所が逃げた場所の住所になっているなど、本人を探す手がかりがないこともしばしば。身元不明で、本当にその人が存在していたのか、疑いたくなることがあるほどです」(太田垣氏)現在の賃貸借契約で住民票その他公的な本人確認書類を添付しないことは考えられないが、20年前、30年前にはそうした契約もありえた。免許証、保険証のコピーすらない契約だったケースで、住民税、年金、保険を払わず、身元確認が必要ない、日払いの仕事をしていた場合、探しようがない。名前すら本名かどうかも疑わしいのだ。身元不明者は男性のほうが多い実際、男性のほうが身元不明になる確率が高いことを示すデータがある。行旅死亡人の統計だ。行旅死亡人とは氏名、本籍地や住所などがわからず、かつ遺体の引き取り手のない人のことを言う。漢字の印象から行き倒れて身元がわからない状況を想像するが、実際には亡くなった場所や死因は問わず、自室で亡くなっていても身元がわからない、身分証明書を持っていても身分証明書の本人とは断定できなければ行旅死亡人とされる。自然災害で被災、身元不明の死亡者も同様である。明治23年の「行旅病人及行旅死亡人取扱法」は「行旅人」が死亡した場合、死亡地の自治体が行うべきことを定めているが、その1つに官報への公告がある。それを収集、行旅死亡人データベースとして集計しているサイトがあるのだが、それによると2010年1月以降2021年8月23日までに公告された行旅死亡人は9393人。そのうち、865人は性別不明で、男性は7096人、女性は1432人。身元不明のまま、亡くなった人のうち、4分の3は男性なのである。太田垣氏によると夜逃げで目立つのは、高齢男性と20代の若い男性だという。若い人の一部にはそもそも夜逃げという言葉を知らず、夜逃げしている感覚がない例も少なくないという。「家賃が払えない、出ていけと言われた、だから出てきた、いらないモノは置いてきた、何が悪いんですか?と言うのです。契約を解除しないと次の人に貸せない、残置物は勝手に処分できないから法的手続きが必要などを説明するとわかってもらえるのですが、他人にその影響が及んでいる感覚が薄いようです」続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
また、同氏によると、女性の夜逃げでは本人を探せない状態に陥ることは少ない。女性側が提供する情報がすべてうそということは少なく、親族や勤め先の人など、誰かしらコンタクトを取れる人がいることも少なくない。「ところが男性、特に60代以上の場合には、何十年もそこに住んでいながら周囲との人間関係がまったくなく、住民票も移しておらず、契約書に書かれた住所が逃げた場所の住所になっているなど、本人を探す手がかりがないこともしばしば。身元不明で、本当にその人が存在していたのか、疑いたくなることがあるほどです」(太田垣氏)現在の賃貸借契約で住民票その他公的な本人確認書類を添付しないことは考えられないが、20年前、30年前にはそうした契約もありえた。免許証、保険証のコピーすらない契約だったケースで、住民税、年金、保険を払わず、身元確認が必要ない、日払いの仕事をしていた場合、探しようがない。名前すら本名かどうかも疑わしいのだ。身元不明者は男性のほうが多い実際、男性のほうが身元不明になる確率が高いことを示すデータがある。行旅死亡人の統計だ。行旅死亡人とは氏名、本籍地や住所などがわからず、かつ遺体の引き取り手のない人のことを言う。漢字の印象から行き倒れて身元がわからない状況を想像するが、実際には亡くなった場所や死因は問わず、自室で亡くなっていても身元がわからない、身分証明書を持っていても身分証明書の本人とは断定できなければ行旅死亡人とされる。自然災害で被災、身元不明の死亡者も同様である。明治23年の「行旅病人及行旅死亡人取扱法」は「行旅人」が死亡した場合、死亡地の自治体が行うべきことを定めているが、その1つに官報への公告がある。それを収集、行旅死亡人データベースとして集計しているサイトがあるのだが、それによると2010年1月以降2021年8月23日までに公告された行旅死亡人は9393人。そのうち、865人は性別不明で、男性は7096人、女性は1432人。身元不明のまま、亡くなった人のうち、4分の3は男性なのである。太田垣氏によると夜逃げで目立つのは、高齢男性と20代の若い男性だという。若い人の一部にはそもそも夜逃げという言葉を知らず、夜逃げしている感覚がない例も少なくないという。「家賃が払えない、出ていけと言われた、だから出てきた、いらないモノは置いてきた、何が悪いんですか?と言うのです。契約を解除しないと次の人に貸せない、残置物は勝手に処分できないから法的手続きが必要などを説明するとわかってもらえるのですが、他人にその影響が及んでいる感覚が薄いようです」続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
「ところが男性、特に60代以上の場合には、何十年もそこに住んでいながら周囲との人間関係がまったくなく、住民票も移しておらず、契約書に書かれた住所が逃げた場所の住所になっているなど、本人を探す手がかりがないこともしばしば。身元不明で、本当にその人が存在していたのか、疑いたくなることがあるほどです」(太田垣氏)現在の賃貸借契約で住民票その他公的な本人確認書類を添付しないことは考えられないが、20年前、30年前にはそうした契約もありえた。免許証、保険証のコピーすらない契約だったケースで、住民税、年金、保険を払わず、身元確認が必要ない、日払いの仕事をしていた場合、探しようがない。名前すら本名かどうかも疑わしいのだ。身元不明者は男性のほうが多い実際、男性のほうが身元不明になる確率が高いことを示すデータがある。行旅死亡人の統計だ。行旅死亡人とは氏名、本籍地や住所などがわからず、かつ遺体の引き取り手のない人のことを言う。漢字の印象から行き倒れて身元がわからない状況を想像するが、実際には亡くなった場所や死因は問わず、自室で亡くなっていても身元がわからない、身分証明書を持っていても身分証明書の本人とは断定できなければ行旅死亡人とされる。自然災害で被災、身元不明の死亡者も同様である。明治23年の「行旅病人及行旅死亡人取扱法」は「行旅人」が死亡した場合、死亡地の自治体が行うべきことを定めているが、その1つに官報への公告がある。それを収集、行旅死亡人データベースとして集計しているサイトがあるのだが、それによると2010年1月以降2021年8月23日までに公告された行旅死亡人は9393人。そのうち、865人は性別不明で、男性は7096人、女性は1432人。身元不明のまま、亡くなった人のうち、4分の3は男性なのである。太田垣氏によると夜逃げで目立つのは、高齢男性と20代の若い男性だという。若い人の一部にはそもそも夜逃げという言葉を知らず、夜逃げしている感覚がない例も少なくないという。「家賃が払えない、出ていけと言われた、だから出てきた、いらないモノは置いてきた、何が悪いんですか?と言うのです。契約を解除しないと次の人に貸せない、残置物は勝手に処分できないから法的手続きが必要などを説明するとわかってもらえるのですが、他人にその影響が及んでいる感覚が薄いようです」続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
現在の賃貸借契約で住民票その他公的な本人確認書類を添付しないことは考えられないが、20年前、30年前にはそうした契約もありえた。免許証、保険証のコピーすらない契約だったケースで、住民税、年金、保険を払わず、身元確認が必要ない、日払いの仕事をしていた場合、探しようがない。名前すら本名かどうかも疑わしいのだ。身元不明者は男性のほうが多い実際、男性のほうが身元不明になる確率が高いことを示すデータがある。行旅死亡人の統計だ。行旅死亡人とは氏名、本籍地や住所などがわからず、かつ遺体の引き取り手のない人のことを言う。漢字の印象から行き倒れて身元がわからない状況を想像するが、実際には亡くなった場所や死因は問わず、自室で亡くなっていても身元がわからない、身分証明書を持っていても身分証明書の本人とは断定できなければ行旅死亡人とされる。自然災害で被災、身元不明の死亡者も同様である。明治23年の「行旅病人及行旅死亡人取扱法」は「行旅人」が死亡した場合、死亡地の自治体が行うべきことを定めているが、その1つに官報への公告がある。それを収集、行旅死亡人データベースとして集計しているサイトがあるのだが、それによると2010年1月以降2021年8月23日までに公告された行旅死亡人は9393人。そのうち、865人は性別不明で、男性は7096人、女性は1432人。身元不明のまま、亡くなった人のうち、4分の3は男性なのである。太田垣氏によると夜逃げで目立つのは、高齢男性と20代の若い男性だという。若い人の一部にはそもそも夜逃げという言葉を知らず、夜逃げしている感覚がない例も少なくないという。「家賃が払えない、出ていけと言われた、だから出てきた、いらないモノは置いてきた、何が悪いんですか?と言うのです。契約を解除しないと次の人に貸せない、残置物は勝手に処分できないから法的手続きが必要などを説明するとわかってもらえるのですが、他人にその影響が及んでいる感覚が薄いようです」続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
実際、男性のほうが身元不明になる確率が高いことを示すデータがある。行旅死亡人の統計だ。行旅死亡人とは氏名、本籍地や住所などがわからず、かつ遺体の引き取り手のない人のことを言う。漢字の印象から行き倒れて身元がわからない状況を想像するが、実際には亡くなった場所や死因は問わず、自室で亡くなっていても身元がわからない、身分証明書を持っていても身分証明書の本人とは断定できなければ行旅死亡人とされる。自然災害で被災、身元不明の死亡者も同様である。明治23年の「行旅病人及行旅死亡人取扱法」は「行旅人」が死亡した場合、死亡地の自治体が行うべきことを定めているが、その1つに官報への公告がある。それを収集、行旅死亡人データベースとして集計しているサイトがあるのだが、それによると2010年1月以降2021年8月23日までに公告された行旅死亡人は9393人。そのうち、865人は性別不明で、男性は7096人、女性は1432人。身元不明のまま、亡くなった人のうち、4分の3は男性なのである。太田垣氏によると夜逃げで目立つのは、高齢男性と20代の若い男性だという。若い人の一部にはそもそも夜逃げという言葉を知らず、夜逃げしている感覚がない例も少なくないという。「家賃が払えない、出ていけと言われた、だから出てきた、いらないモノは置いてきた、何が悪いんですか?と言うのです。契約を解除しないと次の人に貸せない、残置物は勝手に処分できないから法的手続きが必要などを説明するとわかってもらえるのですが、他人にその影響が及んでいる感覚が薄いようです」続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
明治23年の「行旅病人及行旅死亡人取扱法」は「行旅人」が死亡した場合、死亡地の自治体が行うべきことを定めているが、その1つに官報への公告がある。それを収集、行旅死亡人データベースとして集計しているサイトがあるのだが、それによると2010年1月以降2021年8月23日までに公告された行旅死亡人は9393人。そのうち、865人は性別不明で、男性は7096人、女性は1432人。身元不明のまま、亡くなった人のうち、4分の3は男性なのである。太田垣氏によると夜逃げで目立つのは、高齢男性と20代の若い男性だという。若い人の一部にはそもそも夜逃げという言葉を知らず、夜逃げしている感覚がない例も少なくないという。「家賃が払えない、出ていけと言われた、だから出てきた、いらないモノは置いてきた、何が悪いんですか?と言うのです。契約を解除しないと次の人に貸せない、残置物は勝手に処分できないから法的手続きが必要などを説明するとわかってもらえるのですが、他人にその影響が及んでいる感覚が薄いようです」続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
太田垣氏によると夜逃げで目立つのは、高齢男性と20代の若い男性だという。若い人の一部にはそもそも夜逃げという言葉を知らず、夜逃げしている感覚がない例も少なくないという。「家賃が払えない、出ていけと言われた、だから出てきた、いらないモノは置いてきた、何が悪いんですか?と言うのです。契約を解除しないと次の人に貸せない、残置物は勝手に処分できないから法的手続きが必要などを説明するとわかってもらえるのですが、他人にその影響が及んでいる感覚が薄いようです」続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
「家賃が払えない、出ていけと言われた、だから出てきた、いらないモノは置いてきた、何が悪いんですか?と言うのです。契約を解除しないと次の人に貸せない、残置物は勝手に処分できないから法的手続きが必要などを説明するとわかってもらえるのですが、他人にその影響が及んでいる感覚が薄いようです」続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
続いて訪れたのは、冒頭で紹介したプライム。石塚氏によると、住む家を失い、同社に部屋を探してほしいと来る人の9割以上は男性だという。「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
「女性の場合はDV被害、母子家庭、障害があるなどという方からの相談が多いのですが、男性では『雇止めになって住む場所がないから助けてほしい』という相談が多く、しかも、ぎりぎりまで人に頼りたくない、自分でなんとかしようと思うのか、手持ちのお金がまったくなくなった状態になってから相談に来る人が目立ちます」2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
2012年に活動を始めた当初は高齢者が多かったものの、最近は何度もメディアに取り上げられているため、それをネットで見て訪れる30代~50代が増えている。最近、夜逃げをした3人もそうした人たちだった。一時はボランティアの手伝いもしていたが1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
1人目はずっと車上生活をしてきた30代の男性。車中での暮らしはつらいのではないかと思うが、同社を訪れる人には車上生活者は意外に多いという。日雇いでお金はあったものの仕事がなくなって突然訪れた。生活保護を勧めたものの、車を手放したくないと拒否。そこで市役所に同行し、プライムが所有する物件に入居することにして仕事を紹介してもらった。その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
その後しばらくは、石塚氏が高校時代の同級生と立ち上げたNPOでのフードバンクの作業の手伝いにも来ていたものの、ある日、事故を起こしたと連絡があり、以降音信不通に。電話もラインも通じなくなり、第三者立ち合いのもとに部屋に入ってみるとごみを残してもぬけの殻だった。おそらく車上生活に戻ったのであろうが、一言もなく消えた。 2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
2人目も同年代で、家賃滞納で住んでいたところを追い出され、友人宅を転々とした後、ネットで見たと来訪。配送関連の仕事をしており、保証会社の審査も通ったというが2カ月目には早くも家賃を滞納し始めた。連絡をすると払いますとは言うし、夜取りに来てくださいとは言うものの、行ってみるといないという状態が続いた。ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
ようやく、在宅しているタイミングで訪れると、カギはもちろん、チェーンの掛けられた状態だった。外から契約解除になること、カギを返してもらいたいことなど伝えているうちにチェーンが外れ、それに驚いたのか、2階の窓から飛び降りてそのまま行方不明になってしまったという。3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
3人目は50代。親元から追い出されてネットカフェで生活していたものの、こちらに住民票を移してやり直したいと懇願。工場で派遣の仕事を見つけたが、4カ月後には滞納が始まり、すぐに音信不通になってしまった。連絡先という親族に電話をしても「知らん」と言われるだけだったという。太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
太田垣氏が経験した周囲とあまりつながりをもたないまま夜逃げしてしまった高齢男性たちに比べると他人とコミュニケーションは取れており、孤立、孤独とは無縁のようだが、共通するのはラインでつながる遊び仲間はいても、それ以上に本人を知る人や頼れる人がいない、という点ではないだろうか。今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
今回の3人はいずれも若くて体力も、その気になれば仕事もある。だが、こうした生活を続けられたとしても、年齢とともに状況は厳しくなる可能性がある。太田垣氏の経験でも高齢者の夜逃げでは60代以上で、健康を害したなどでの理由から日雇いで働き続けるのが難しくなり、家賃が払えなくなってのものが多いという。男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
男性、特に単身の高齢者は社会とのつながりが希薄とされている。例えば、2017年の国立社会保障・人口問題研究所の生活と支え合いに関する調査(旧:社会保障実態調査)には年齢、性別、家族構成別の周囲とのつながりに関する項目があるのだが、単独男性高齢世帯では14.8%が2週間に1回以下しか他人と会話をしていない。単独女性高齢世帯では5.4%である。同様に日頃のちょっとしたことで頼れる人がいるかとの問いに対し、単独男性高齢世帯ではいないとの回答が30.1%に対し、女性は9.1%となっている。孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
孤独死も圧倒的に男性が多い。2021年6月に発表された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の第6回孤独死現状レポートによれば、2015年4月~2021年3月までに亡くなった5543人のうち、男性は4614人で83.1%を占めている。亡くなってから発見されるまでの日数は、平均すると男女とも変わらず17日となるが、3日目までに発見される割合は女性が50%なのに対し、男性は38.4%となってもいる。不動産業界も手を打ち始めているそうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
そうしたことを考えると、石塚氏のように「頼ることができる」存在は大きい。実際、これまで石塚氏を頼って来た人たちの中には、ここで得た住まいと仕事から暮らしを立て直している人も少なくないという。石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
石塚氏のようにボランティアでこうした活動をする人を増やすことは容易ではないが、幸い、2021年7月28日には厚生労働省が不安定居住者のための支援情報サイトと住まいの困りごと相談窓口「すまこま。」をスタートさせるなど、国や業界団体なども手を打ち始めている。滞納が発生してもきちんと相談すれば、分割で払えるような方法を一緒に考えてくれる不動産会社もある。ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
ただ、社会からの孤立、人に頼りたくないという気持ちなどが夜逃げにつながっているのだとしたら、不動産からのアプローチだけでなく、もっと社会的な対策が必要なのかもしれない。夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。
夜逃げについては正式な統計がないため、個別のケースを総括して男性のほうが多いと結論づけることは避けたい。しかし、これまでは住宅に困っている人の課題は十把一からげにされがちだった。実際にはそれぞれに異なる事情があるはず。もう少しきめ細かに各人の事情を調査、研究、対策を考えるなどの必要があるのではなかろうか。