【小島 拓】理想の3人家族を「崩壊」させた、「3LDK」タワマンのヤバすぎる住環境 「24時間ずっと一緒」という地獄

2歳年上のIT企業勤務の夫・孝之さんと結婚し、念願の「タワマン住み専業主婦」という身分を手に入れた佐藤理恵さん(仮名・36歳)。5歳の息子の拓也くんと家族3人で不自由なく生活していた。
しかし【前編】『憧れの「タワマン」に住み、夫婦関係が「完全に壊れた」36歳・専業主婦の大誤算』でも説明した通り、コロナをきっかけに孝之さんの会社が完全テレワーク勤務に移行。それが佐藤さん夫婦の幸せな暮らしを、少しずつ脅かしていく……。
孝之さんの会社は先進的なITベンチャーだけあって、テレワークへの移行が非常に早かった。2020年の4月に最初の緊急事態宣言が東京に発令されるやいなや、全社員に無期限のテレワークを義務付け、緊急事態宣言が解除されてもテレワーク主体という体制は続いた。
「最初は楽観していましたよ。でも、『もう限界!』というくらいストレスが溜まるまで、1か月もかかりませんでした」
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理恵さんは、なぜ1か月という短期間で、こうまで追い込まれたのか。それは理恵さん宅の間取りにも要因があったといえる。「うちは80平米くらいで3LDK。ざっくりいうと、リビングダイニング、夫婦の寝室、子ども部屋というレイアウトです。だから、主人の仕事の場はリビングダイニング。でも、リビングはわたしがくつろぐ場所でもあるわけです。主人が仕事をしていると、テレビをつけるわけにもいかないし。しかもアイランドキッチンで、食事のしたくにも気を使うんです。主人がオンライン会議をしているときに、炒めものなんてできないですよ。いちどアサリの酒蒸しをつくるのに、フライパンがジューっと大きな音を立ててしまって、すごく嫌な顔をされました。主人の好物をつくってあげようとしたんですけど」さらに、この状況に追い討ちをかけたのが、子どもの幼稚園の休園だ。「遊びたいさかりの5歳の子どもが、ずっと家にいるんです。男の子ですからとにかく動きが激しくて。子ども部屋というかおもちゃ部屋はありますが、とてもその中で収まらないですよ。電車と新幹線が大好きで、リビングダイニング全体を使ってプラレールを組んで走らせるんです。主人からすれば邪魔でしかないし、しかもあれって、踏むとすごく痛いんですよね。主人が何回か踏んで、イライラしてひとりで怒鳴って線路を蹴っ飛ばしていました」Photo by iStock フラストレーションが溜まった結果……家族仲がギスギスしはじめたのは、「外出禁止要請」が出たことも大きかったようだ。「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
理恵さんは、なぜ1か月という短期間で、こうまで追い込まれたのか。それは理恵さん宅の間取りにも要因があったといえる。「うちは80平米くらいで3LDK。ざっくりいうと、リビングダイニング、夫婦の寝室、子ども部屋というレイアウトです。だから、主人の仕事の場はリビングダイニング。でも、リビングはわたしがくつろぐ場所でもあるわけです。主人が仕事をしていると、テレビをつけるわけにもいかないし。しかもアイランドキッチンで、食事のしたくにも気を使うんです。主人がオンライン会議をしているときに、炒めものなんてできないですよ。いちどアサリの酒蒸しをつくるのに、フライパンがジューっと大きな音を立ててしまって、すごく嫌な顔をされました。主人の好物をつくってあげようとしたんですけど」さらに、この状況に追い討ちをかけたのが、子どもの幼稚園の休園だ。「遊びたいさかりの5歳の子どもが、ずっと家にいるんです。男の子ですからとにかく動きが激しくて。子ども部屋というかおもちゃ部屋はありますが、とてもその中で収まらないですよ。電車と新幹線が大好きで、リビングダイニング全体を使ってプラレールを組んで走らせるんです。主人からすれば邪魔でしかないし、しかもあれって、踏むとすごく痛いんですよね。主人が何回か踏んで、イライラしてひとりで怒鳴って線路を蹴っ飛ばしていました」Photo by iStock フラストレーションが溜まった結果……家族仲がギスギスしはじめたのは、「外出禁止要請」が出たことも大きかったようだ。「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
「うちは80平米くらいで3LDK。ざっくりいうと、リビングダイニング、夫婦の寝室、子ども部屋というレイアウトです。だから、主人の仕事の場はリビングダイニング。でも、リビングはわたしがくつろぐ場所でもあるわけです。主人が仕事をしていると、テレビをつけるわけにもいかないし。しかもアイランドキッチンで、食事のしたくにも気を使うんです。主人がオンライン会議をしているときに、炒めものなんてできないですよ。いちどアサリの酒蒸しをつくるのに、フライパンがジューっと大きな音を立ててしまって、すごく嫌な顔をされました。主人の好物をつくってあげようとしたんですけど」さらに、この状況に追い討ちをかけたのが、子どもの幼稚園の休園だ。「遊びたいさかりの5歳の子どもが、ずっと家にいるんです。男の子ですからとにかく動きが激しくて。子ども部屋というかおもちゃ部屋はありますが、とてもその中で収まらないですよ。電車と新幹線が大好きで、リビングダイニング全体を使ってプラレールを組んで走らせるんです。主人からすれば邪魔でしかないし、しかもあれって、踏むとすごく痛いんですよね。主人が何回か踏んで、イライラしてひとりで怒鳴って線路を蹴っ飛ばしていました」Photo by iStock フラストレーションが溜まった結果……家族仲がギスギスしはじめたのは、「外出禁止要請」が出たことも大きかったようだ。「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
主人が仕事をしていると、テレビをつけるわけにもいかないし。しかもアイランドキッチンで、食事のしたくにも気を使うんです。主人がオンライン会議をしているときに、炒めものなんてできないですよ。いちどアサリの酒蒸しをつくるのに、フライパンがジューっと大きな音を立ててしまって、すごく嫌な顔をされました。主人の好物をつくってあげようとしたんですけど」さらに、この状況に追い討ちをかけたのが、子どもの幼稚園の休園だ。「遊びたいさかりの5歳の子どもが、ずっと家にいるんです。男の子ですからとにかく動きが激しくて。子ども部屋というかおもちゃ部屋はありますが、とてもその中で収まらないですよ。電車と新幹線が大好きで、リビングダイニング全体を使ってプラレールを組んで走らせるんです。主人からすれば邪魔でしかないし、しかもあれって、踏むとすごく痛いんですよね。主人が何回か踏んで、イライラしてひとりで怒鳴って線路を蹴っ飛ばしていました」Photo by iStock フラストレーションが溜まった結果……家族仲がギスギスしはじめたのは、「外出禁止要請」が出たことも大きかったようだ。「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
いちどアサリの酒蒸しをつくるのに、フライパンがジューっと大きな音を立ててしまって、すごく嫌な顔をされました。主人の好物をつくってあげようとしたんですけど」さらに、この状況に追い討ちをかけたのが、子どもの幼稚園の休園だ。「遊びたいさかりの5歳の子どもが、ずっと家にいるんです。男の子ですからとにかく動きが激しくて。子ども部屋というかおもちゃ部屋はありますが、とてもその中で収まらないですよ。電車と新幹線が大好きで、リビングダイニング全体を使ってプラレールを組んで走らせるんです。主人からすれば邪魔でしかないし、しかもあれって、踏むとすごく痛いんですよね。主人が何回か踏んで、イライラしてひとりで怒鳴って線路を蹴っ飛ばしていました」Photo by iStock フラストレーションが溜まった結果……家族仲がギスギスしはじめたのは、「外出禁止要請」が出たことも大きかったようだ。「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
さらに、この状況に追い討ちをかけたのが、子どもの幼稚園の休園だ。「遊びたいさかりの5歳の子どもが、ずっと家にいるんです。男の子ですからとにかく動きが激しくて。子ども部屋というかおもちゃ部屋はありますが、とてもその中で収まらないですよ。電車と新幹線が大好きで、リビングダイニング全体を使ってプラレールを組んで走らせるんです。主人からすれば邪魔でしかないし、しかもあれって、踏むとすごく痛いんですよね。主人が何回か踏んで、イライラしてひとりで怒鳴って線路を蹴っ飛ばしていました」Photo by iStock フラストレーションが溜まった結果……家族仲がギスギスしはじめたのは、「外出禁止要請」が出たことも大きかったようだ。「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
「遊びたいさかりの5歳の子どもが、ずっと家にいるんです。男の子ですからとにかく動きが激しくて。子ども部屋というかおもちゃ部屋はありますが、とてもその中で収まらないですよ。電車と新幹線が大好きで、リビングダイニング全体を使ってプラレールを組んで走らせるんです。主人からすれば邪魔でしかないし、しかもあれって、踏むとすごく痛いんですよね。主人が何回か踏んで、イライラしてひとりで怒鳴って線路を蹴っ飛ばしていました」Photo by iStock フラストレーションが溜まった結果……家族仲がギスギスしはじめたのは、「外出禁止要請」が出たことも大きかったようだ。「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
主人からすれば邪魔でしかないし、しかもあれって、踏むとすごく痛いんですよね。主人が何回か踏んで、イライラしてひとりで怒鳴って線路を蹴っ飛ばしていました」Photo by iStock フラストレーションが溜まった結果……家族仲がギスギスしはじめたのは、「外出禁止要請」が出たことも大きかったようだ。「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
Photo by iStock フラストレーションが溜まった結果……家族仲がギスギスしはじめたのは、「外出禁止要請」が出たことも大きかったようだ。「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
フラストレーションが溜まった結果……家族仲がギスギスしはじめたのは、「外出禁止要請」が出たことも大きかったようだ。「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
家族仲がギスギスしはじめたのは、「外出禁止要請」が出たことも大きかったようだ。「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
「それまでは、毎週末は外出していました。でも緊急事態宣言の時期って、遊びにいっちゃいけないじゃないですか。『平日も土日もずっと家にいろ』だなんて、子どもが小さいうちは本当に無理です」24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
24時間一緒にいることで、夫婦間の価値観の違いが浮き彫りになってきたようだ。「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
「わたしが夕食の準備をしたりしている間は子どもにかまえませんから、iPadでYouTubeを見せておくんです。でも、主人はそれに文句をつけてくる。『YouTubeの人工的に人を惹きつける仕組みは、知能の発達を阻害するんだ』とか『スティーブ・ジョブズは自分の子どもにはiPhoneを与えなかったんだ』とか……。育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
育児は私にまかせっきりだったのに、すごくうるさくなりました。彼もストレスが溜まっていて、八つ当たりの対象にされたのかもしれません。そう言われると私もカッとなってしまって、口ゲンカが増えました」それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
それまで理恵さんは、孝之さんの博識でクレバーな部分を好意的に受け止めていたそうだ。しかし関係が悪化して以降は、そんな孝之さんの魅力も「理屈っぽい」「口うるさい」としか感じられなくなったという。「憂さ晴らし」のはずが一大事に実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
実は理恵さんには、孝之さんに隠しておきたいことがあった。これはコロナショックが起こる前からであるそうだが、孝之さんとの結婚前に付き合っていた元カレと密に繋がっていたのだ。「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
「でも、決して不倫していたわけじゃないんです。元カレは大学時代に7年くらい付き合っていた人で、ソウルメイトみたいな存在。主人とはぜんぜん違うタイプですが、すごく気が合うんです。LINEでくだらない話を延々とできるんですよ。実は、コロナ前は、子どもが幼稚園に行っている間にふたりで遊びに行ったりしました」Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
Photo by gettyimages 理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
理恵さんは「肉体関係はなかった」というが、それを立証する手立てはない。「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
「主人がテレワークするようになって、私もとにかく愚痴りたくて、元カレとのLINEが増えました。でも、主人にスマホを見られて、それがバレちゃったんです。激怒されましたよ。問い詰められて思わず、それまでたまに会っていたことも白状させられて……」毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
毎晩子どもが寝付いてから大ゲンカがはじまり、それが1週間ほど続いたという。「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
「『元カレとは縁を切る』ということでいちおうは収まったんですが、そのときに証書を書かされたんですよ。『署名と捺印があれば、ワードでかんたんにつくった文書でも、法的効力がある』とか言われて。『はぁ?』って思いましたね。犯罪者扱いかよ、って。主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
主人からわたしへの信頼がゼロになったことがわかって、なんだか気持ちが急速に冷めました。子どももいますから、激しくケンカをするわけではありませんが、冷戦状態という感じです。主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
主人はことあるごとに『本当に反省しているのか』と、終わったはずの話を持ち出してくるし、定期的にスマホをチェックされるし。不倫していたわけじゃないのに、やりすぎだと思います。時間が経てば態度が軟化するとは思うんですが」Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
Photo by iStock コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
コロナで「別居したい」夫婦が増加傾向?しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
しかし理恵さんとしては、もはや関係修復をあきらめている面もあるという。「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
「わたしに非があるとは思うんですけど、離婚したら楽なのかな、とふっと思うことがあります。コロナは収まらないし、収まってもテレワークが続くかもしれないし。そういえば、夫とここまで一緒の時間を過ごすことって、なかったんですよね。それまでは、平日の日中は離れていて、夜と週末だけ一緒に過ごしていたわけで。毎日24時間ひとつ屋根の下という機会はなかったんです」実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
実際に離婚するには、「専業主婦」という身分が大きな障壁となる。実は、こうした悩みを抱える女性は決して少なくない。筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
筆者の付き合いのある不動産仲介会社の社員によれば、「夫婦の別居」を理由として部屋を探す女性からの相談が、コロナショック以降で増えはじめたという。しかし、仕事をしている女性であれば経済的な問題はないが、専業主婦で部屋を借りるのはまず無理である。とくに理恵さんの場合、たとえ離婚したとしても、離婚の原因が理恵さんにあると判断される可能性が高く、慰謝料もほぼ望めないことは明らかである。「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
「実は、離婚して、こどもの養育費としてどのくらいもらえるのか調べてみたことがあるんです。知らなかったんですが、主人の年収額に応じて養育費の金額が決められているんですね。わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
わたしたちの場合、月額で14万円から16万円なんです。養育費だけじゃとても暮らしていけないとわかってからは、本当に離婚することは考えなくなりました。正直、再婚相手が決まっていれば話はべつですけど、元カレとは結婚するような感じではありませんし……」家族の仲を良好に保つ「住居の工夫」「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
「幸福な家族」の崩壊――今回ご紹介した例は、コロナ禍という特殊な状況が招いた悲劇であるが、このエピソードからは「結婚生活」という概念を根本的に考え直す必要性を感じさせられる。理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
理恵さんが語るように、そもそも夫婦とは、自営業でもないかぎり日中は離れて過ごすというのが一般的なライフスタイルである。それは日本の住まいのつくりからもうかがえることだ。Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
Photo by iStock たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
たとえば、「パーソナルスペース」という概念が当たり前である欧米の住居では、「夫の部屋」が設けられているパターンが多いが、日本では理恵さん宅のように、こども部屋はあれど「夫の部屋」や「妻の部屋」が存在しない家は多い。「日中は離れているのが基本」であることからも、その必要性が低かったのであろう。しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
しかし最近の住居、とくにマンションのつくりで気になるのは、「広さ」を重視して部屋数を減らす傾向が見られることだ。「部屋数を増やすよりも広い空間をつくりたい」というニーズは多く、理恵さん宅のような「広いリビング+こども部屋+夫婦の寝室」という間取りは、ファミリー層から人気が高まっている。さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
さらにいえば、すこし前には「こども部屋をつくらず、家族のいる空間で勉強をさせるほうが学力が上がる」という説が注目を集めたが、個人的には大きな疑問を抱いている。もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
もちろん、オープンな場で集中できる能力を育てることも重要であるが、こども部屋をつくらないということは、こどもに「秘密」をつくる機会を与えないという表れであり、我が子のすべてを管理しようとする親の極端な姿勢がうかがえるように思える。Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
Photo by iStock 話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
話を戻せば、「四六時中、だれかとずっと一緒にいなければならない」というのは、それが家族であっても非常に難しいことである。しかしコロナ禍をきっかけに「テレワーク」という新しい概念が常識化した以上、今後は、夫婦が終日ずっと同じ家で過ごさなければならないという家庭はますます増えてゆくであろう。そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
そんな時代の住まいに必要なのは、家族それぞれの「パーソナルスペース」を確保することである。とくに夫婦というのは、「愛」を出発点としても「結婚」という社会的な契約において結ばれた関係であるのだから、それぞれの「個」を尊重しあえるような関係性を、住環境から成立させるためのしかけが必要であると、筆者は考えている。理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
理恵さんがかつての恋人と親しかったことは、決してよいことではないかもしれない。しかし、理恵さんが「個の時間」をもち、精神的なゆとりをもつことができていれば、LINEで孝之さんの愚痴を漏らすこともなく、現在のような状況に陥らなかったかもしれない。これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。
これは「コロナ離婚の危機」の一例であるが、理恵さん夫婦のエピソードから、これからは「住まいのありかた」「結婚・家族のありかた」とはどうあるべきか、私たちはそれを見つめなおす時期にあることを感じている。