下着を撮影され、携帯の中身もチェック…「こんなことを日本の大企業がやるなんて」外国人労働者たちの“悲痛な嘆き”

「すべての女性が輝く社会づくり」を目的とした規制緩和政策の一つに外国人の家事支援者受け入れがある。「ニチイ学館」は日本での家事代行業の需要増を見込み、19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。しかし、家事代行の需要は予想ほど伸びず、その後、雇い止めが相次いだ。
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東京新聞記者の望月衣塑子氏はニチイ学館による雇い止めの実情を取材。10月8日に発売された著書『報道現場』(角川新書)のなかで、そのあらましを取り上げている。ここでは同書の一部を抜粋。フィリピン人女性たちの悲痛な嘆きを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
※写真はイメージ iStock.com
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新型コロナウイルスが再び猛威を振るい始めた2020年12月、年末年始は家でたまったDVDでも見ながら子どもたちとゆっくり過ごそうと考えていた。記者仲間にお正月に生活困窮者への食事の提供や生活相談を行う「大人食堂」があると聞いたのは、年末も押し迫った、そんなある日のことだった。前から関心があったのだが、足を運べていなかったので取材してみようと思った。
21年の元日、会場となった東京・四ツ谷の聖イグナチオ教会に向かう。凍てつくように寒い日だったが、会場では手作りのお弁当がふるまわれ、高齢の男性に交じり、仕事を失った若い男性や子連れの女性の姿もあった。なかでも目を引いたのは、全体の3分の1くらいを占めていた外国人の姿だった。コロナの影響が生活基盤の弱い人へ弱い人へと向かっているのを感じた。 1月2日は自宅で過ごしていたが、指宿昭一弁護士からメールが入った。指宿弁護士は外国人の労働問題に詳しい方で、直木賞作家の中島京子さんから以前、紹介してもらってあいさつを交わしたことがあった。 指宿弁護士はこの日、フィリピン人女性Aさんの相談を受けた。Aさんは、国家戦略特区の制度を利用して3年間の勤務をめどに来日しながらも、会社側から一方的に解雇を言い渡され、ほかの仕事を探しているうちに貯金もつき、手に千円札を握りしめて相談会に訪れたのだという。「ベトナム人の留学生などを雇う中小企業での不当な労働や解雇は何度も聞いていたが、大手のニチイがこんなことをしているなんて信じられない。取材してもらえませんか」 雇い主が医療介護で人材派遣大手の「ニチイ学館」と聞き、私も驚いた。頭には前日の大人食堂で長蛇の列を作っていた外国人の方々の顔が浮かび、Aさんの問題を追ってみようと思った。 休暇が明け、改めてAさんから話を聞くことにした。 Aさんは国家戦略特区の家事支援事業で2018年に来日した。家事支援事業とは、安倍前政権が掲げた「すべての女性が輝く社会づくり」を目的に行われた規制緩和政策の一つだ。 日本では、高齢者の介護や家庭の掃除など家事支援の仕事をする目的での外国人の入国は、入管難民法で原則認められていない。国家戦略特区の中でその規制を外し、現在、東京、神奈川、愛知、大阪など6つの自治体で在留資格を認めている。ただし一定の条件があり、実務経験1年以上、かつ家事支援の知識や最低限の日本語能力などが求められる。 受け入れ側の日本の企業も、各自治体に労働条件や安全衛生などを報告し、監査を受けなければならない。そのうえで最長で5年間、雇うことができる。17年3月から外国人の家事支援者の受け入れが開始され、この制度の下で21年6月末現在、728人が働く。「日本語試験で合格ラインに達していない」との理由で突然契約打ち切りに ニチイ学館でのAさんは、勤務態度もよく、顧客の評価も高くて無断欠勤などもなかったが、2年目の契約が終わる直前の20年11月、マネージャーから突然、契約更新できないとの知らせを受ける。「日本語の試験で合格ラインに達していない」との理由だった。 それまで毎月、日本語の試験はあったが、合格は絶対条件ではなく、契約打ち切りを打診されたことはなかった。そもそも家事支援の清掃スタッフなので、簡単なあいさつ程度の日本語ができればよく、日本語能力が問われる仕事ではなかった。 来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
1月2日は自宅で過ごしていたが、指宿昭一弁護士からメールが入った。指宿弁護士は外国人の労働問題に詳しい方で、直木賞作家の中島京子さんから以前、紹介してもらってあいさつを交わしたことがあった。 指宿弁護士はこの日、フィリピン人女性Aさんの相談を受けた。Aさんは、国家戦略特区の制度を利用して3年間の勤務をめどに来日しながらも、会社側から一方的に解雇を言い渡され、ほかの仕事を探しているうちに貯金もつき、手に千円札を握りしめて相談会に訪れたのだという。「ベトナム人の留学生などを雇う中小企業での不当な労働や解雇は何度も聞いていたが、大手のニチイがこんなことをしているなんて信じられない。取材してもらえませんか」 雇い主が医療介護で人材派遣大手の「ニチイ学館」と聞き、私も驚いた。頭には前日の大人食堂で長蛇の列を作っていた外国人の方々の顔が浮かび、Aさんの問題を追ってみようと思った。 休暇が明け、改めてAさんから話を聞くことにした。 Aさんは国家戦略特区の家事支援事業で2018年に来日した。家事支援事業とは、安倍前政権が掲げた「すべての女性が輝く社会づくり」を目的に行われた規制緩和政策の一つだ。 日本では、高齢者の介護や家庭の掃除など家事支援の仕事をする目的での外国人の入国は、入管難民法で原則認められていない。国家戦略特区の中でその規制を外し、現在、東京、神奈川、愛知、大阪など6つの自治体で在留資格を認めている。ただし一定の条件があり、実務経験1年以上、かつ家事支援の知識や最低限の日本語能力などが求められる。 受け入れ側の日本の企業も、各自治体に労働条件や安全衛生などを報告し、監査を受けなければならない。そのうえで最長で5年間、雇うことができる。17年3月から外国人の家事支援者の受け入れが開始され、この制度の下で21年6月末現在、728人が働く。「日本語試験で合格ラインに達していない」との理由で突然契約打ち切りに ニチイ学館でのAさんは、勤務態度もよく、顧客の評価も高くて無断欠勤などもなかったが、2年目の契約が終わる直前の20年11月、マネージャーから突然、契約更新できないとの知らせを受ける。「日本語の試験で合格ラインに達していない」との理由だった。 それまで毎月、日本語の試験はあったが、合格は絶対条件ではなく、契約打ち切りを打診されたことはなかった。そもそも家事支援の清掃スタッフなので、簡単なあいさつ程度の日本語ができればよく、日本語能力が問われる仕事ではなかった。 来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
指宿弁護士はこの日、フィリピン人女性Aさんの相談を受けた。Aさんは、国家戦略特区の制度を利用して3年間の勤務をめどに来日しながらも、会社側から一方的に解雇を言い渡され、ほかの仕事を探しているうちに貯金もつき、手に千円札を握りしめて相談会に訪れたのだという。「ベトナム人の留学生などを雇う中小企業での不当な労働や解雇は何度も聞いていたが、大手のニチイがこんなことをしているなんて信じられない。取材してもらえませんか」 雇い主が医療介護で人材派遣大手の「ニチイ学館」と聞き、私も驚いた。頭には前日の大人食堂で長蛇の列を作っていた外国人の方々の顔が浮かび、Aさんの問題を追ってみようと思った。 休暇が明け、改めてAさんから話を聞くことにした。 Aさんは国家戦略特区の家事支援事業で2018年に来日した。家事支援事業とは、安倍前政権が掲げた「すべての女性が輝く社会づくり」を目的に行われた規制緩和政策の一つだ。 日本では、高齢者の介護や家庭の掃除など家事支援の仕事をする目的での外国人の入国は、入管難民法で原則認められていない。国家戦略特区の中でその規制を外し、現在、東京、神奈川、愛知、大阪など6つの自治体で在留資格を認めている。ただし一定の条件があり、実務経験1年以上、かつ家事支援の知識や最低限の日本語能力などが求められる。 受け入れ側の日本の企業も、各自治体に労働条件や安全衛生などを報告し、監査を受けなければならない。そのうえで最長で5年間、雇うことができる。17年3月から外国人の家事支援者の受け入れが開始され、この制度の下で21年6月末現在、728人が働く。「日本語試験で合格ラインに達していない」との理由で突然契約打ち切りに ニチイ学館でのAさんは、勤務態度もよく、顧客の評価も高くて無断欠勤などもなかったが、2年目の契約が終わる直前の20年11月、マネージャーから突然、契約更新できないとの知らせを受ける。「日本語の試験で合格ラインに達していない」との理由だった。 それまで毎月、日本語の試験はあったが、合格は絶対条件ではなく、契約打ち切りを打診されたことはなかった。そもそも家事支援の清掃スタッフなので、簡単なあいさつ程度の日本語ができればよく、日本語能力が問われる仕事ではなかった。 来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「ベトナム人の留学生などを雇う中小企業での不当な労働や解雇は何度も聞いていたが、大手のニチイがこんなことをしているなんて信じられない。取材してもらえませんか」 雇い主が医療介護で人材派遣大手の「ニチイ学館」と聞き、私も驚いた。頭には前日の大人食堂で長蛇の列を作っていた外国人の方々の顔が浮かび、Aさんの問題を追ってみようと思った。 休暇が明け、改めてAさんから話を聞くことにした。 Aさんは国家戦略特区の家事支援事業で2018年に来日した。家事支援事業とは、安倍前政権が掲げた「すべての女性が輝く社会づくり」を目的に行われた規制緩和政策の一つだ。 日本では、高齢者の介護や家庭の掃除など家事支援の仕事をする目的での外国人の入国は、入管難民法で原則認められていない。国家戦略特区の中でその規制を外し、現在、東京、神奈川、愛知、大阪など6つの自治体で在留資格を認めている。ただし一定の条件があり、実務経験1年以上、かつ家事支援の知識や最低限の日本語能力などが求められる。 受け入れ側の日本の企業も、各自治体に労働条件や安全衛生などを報告し、監査を受けなければならない。そのうえで最長で5年間、雇うことができる。17年3月から外国人の家事支援者の受け入れが開始され、この制度の下で21年6月末現在、728人が働く。「日本語試験で合格ラインに達していない」との理由で突然契約打ち切りに ニチイ学館でのAさんは、勤務態度もよく、顧客の評価も高くて無断欠勤などもなかったが、2年目の契約が終わる直前の20年11月、マネージャーから突然、契約更新できないとの知らせを受ける。「日本語の試験で合格ラインに達していない」との理由だった。 それまで毎月、日本語の試験はあったが、合格は絶対条件ではなく、契約打ち切りを打診されたことはなかった。そもそも家事支援の清掃スタッフなので、簡単なあいさつ程度の日本語ができればよく、日本語能力が問われる仕事ではなかった。 来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
雇い主が医療介護で人材派遣大手の「ニチイ学館」と聞き、私も驚いた。頭には前日の大人食堂で長蛇の列を作っていた外国人の方々の顔が浮かび、Aさんの問題を追ってみようと思った。 休暇が明け、改めてAさんから話を聞くことにした。 Aさんは国家戦略特区の家事支援事業で2018年に来日した。家事支援事業とは、安倍前政権が掲げた「すべての女性が輝く社会づくり」を目的に行われた規制緩和政策の一つだ。 日本では、高齢者の介護や家庭の掃除など家事支援の仕事をする目的での外国人の入国は、入管難民法で原則認められていない。国家戦略特区の中でその規制を外し、現在、東京、神奈川、愛知、大阪など6つの自治体で在留資格を認めている。ただし一定の条件があり、実務経験1年以上、かつ家事支援の知識や最低限の日本語能力などが求められる。 受け入れ側の日本の企業も、各自治体に労働条件や安全衛生などを報告し、監査を受けなければならない。そのうえで最長で5年間、雇うことができる。17年3月から外国人の家事支援者の受け入れが開始され、この制度の下で21年6月末現在、728人が働く。「日本語試験で合格ラインに達していない」との理由で突然契約打ち切りに ニチイ学館でのAさんは、勤務態度もよく、顧客の評価も高くて無断欠勤などもなかったが、2年目の契約が終わる直前の20年11月、マネージャーから突然、契約更新できないとの知らせを受ける。「日本語の試験で合格ラインに達していない」との理由だった。 それまで毎月、日本語の試験はあったが、合格は絶対条件ではなく、契約打ち切りを打診されたことはなかった。そもそも家事支援の清掃スタッフなので、簡単なあいさつ程度の日本語ができればよく、日本語能力が問われる仕事ではなかった。 来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
休暇が明け、改めてAさんから話を聞くことにした。 Aさんは国家戦略特区の家事支援事業で2018年に来日した。家事支援事業とは、安倍前政権が掲げた「すべての女性が輝く社会づくり」を目的に行われた規制緩和政策の一つだ。 日本では、高齢者の介護や家庭の掃除など家事支援の仕事をする目的での外国人の入国は、入管難民法で原則認められていない。国家戦略特区の中でその規制を外し、現在、東京、神奈川、愛知、大阪など6つの自治体で在留資格を認めている。ただし一定の条件があり、実務経験1年以上、かつ家事支援の知識や最低限の日本語能力などが求められる。 受け入れ側の日本の企業も、各自治体に労働条件や安全衛生などを報告し、監査を受けなければならない。そのうえで最長で5年間、雇うことができる。17年3月から外国人の家事支援者の受け入れが開始され、この制度の下で21年6月末現在、728人が働く。「日本語試験で合格ラインに達していない」との理由で突然契約打ち切りに ニチイ学館でのAさんは、勤務態度もよく、顧客の評価も高くて無断欠勤などもなかったが、2年目の契約が終わる直前の20年11月、マネージャーから突然、契約更新できないとの知らせを受ける。「日本語の試験で合格ラインに達していない」との理由だった。 それまで毎月、日本語の試験はあったが、合格は絶対条件ではなく、契約打ち切りを打診されたことはなかった。そもそも家事支援の清掃スタッフなので、簡単なあいさつ程度の日本語ができればよく、日本語能力が問われる仕事ではなかった。 来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
Aさんは国家戦略特区の家事支援事業で2018年に来日した。家事支援事業とは、安倍前政権が掲げた「すべての女性が輝く社会づくり」を目的に行われた規制緩和政策の一つだ。 日本では、高齢者の介護や家庭の掃除など家事支援の仕事をする目的での外国人の入国は、入管難民法で原則認められていない。国家戦略特区の中でその規制を外し、現在、東京、神奈川、愛知、大阪など6つの自治体で在留資格を認めている。ただし一定の条件があり、実務経験1年以上、かつ家事支援の知識や最低限の日本語能力などが求められる。 受け入れ側の日本の企業も、各自治体に労働条件や安全衛生などを報告し、監査を受けなければならない。そのうえで最長で5年間、雇うことができる。17年3月から外国人の家事支援者の受け入れが開始され、この制度の下で21年6月末現在、728人が働く。「日本語試験で合格ラインに達していない」との理由で突然契約打ち切りに ニチイ学館でのAさんは、勤務態度もよく、顧客の評価も高くて無断欠勤などもなかったが、2年目の契約が終わる直前の20年11月、マネージャーから突然、契約更新できないとの知らせを受ける。「日本語の試験で合格ラインに達していない」との理由だった。 それまで毎月、日本語の試験はあったが、合格は絶対条件ではなく、契約打ち切りを打診されたことはなかった。そもそも家事支援の清掃スタッフなので、簡単なあいさつ程度の日本語ができればよく、日本語能力が問われる仕事ではなかった。 来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
日本では、高齢者の介護や家庭の掃除など家事支援の仕事をする目的での外国人の入国は、入管難民法で原則認められていない。国家戦略特区の中でその規制を外し、現在、東京、神奈川、愛知、大阪など6つの自治体で在留資格を認めている。ただし一定の条件があり、実務経験1年以上、かつ家事支援の知識や最低限の日本語能力などが求められる。 受け入れ側の日本の企業も、各自治体に労働条件や安全衛生などを報告し、監査を受けなければならない。そのうえで最長で5年間、雇うことができる。17年3月から外国人の家事支援者の受け入れが開始され、この制度の下で21年6月末現在、728人が働く。「日本語試験で合格ラインに達していない」との理由で突然契約打ち切りに ニチイ学館でのAさんは、勤務態度もよく、顧客の評価も高くて無断欠勤などもなかったが、2年目の契約が終わる直前の20年11月、マネージャーから突然、契約更新できないとの知らせを受ける。「日本語の試験で合格ラインに達していない」との理由だった。 それまで毎月、日本語の試験はあったが、合格は絶対条件ではなく、契約打ち切りを打診されたことはなかった。そもそも家事支援の清掃スタッフなので、簡単なあいさつ程度の日本語ができればよく、日本語能力が問われる仕事ではなかった。 来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
受け入れ側の日本の企業も、各自治体に労働条件や安全衛生などを報告し、監査を受けなければならない。そのうえで最長で5年間、雇うことができる。17年3月から外国人の家事支援者の受け入れが開始され、この制度の下で21年6月末現在、728人が働く。「日本語試験で合格ラインに達していない」との理由で突然契約打ち切りに ニチイ学館でのAさんは、勤務態度もよく、顧客の評価も高くて無断欠勤などもなかったが、2年目の契約が終わる直前の20年11月、マネージャーから突然、契約更新できないとの知らせを受ける。「日本語の試験で合格ラインに達していない」との理由だった。 それまで毎月、日本語の試験はあったが、合格は絶対条件ではなく、契約打ち切りを打診されたことはなかった。そもそも家事支援の清掃スタッフなので、簡単なあいさつ程度の日本語ができればよく、日本語能力が問われる仕事ではなかった。 来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
ニチイ学館でのAさんは、勤務態度もよく、顧客の評価も高くて無断欠勤などもなかったが、2年目の契約が終わる直前の20年11月、マネージャーから突然、契約更新できないとの知らせを受ける。「日本語の試験で合格ラインに達していない」との理由だった。 それまで毎月、日本語の試験はあったが、合格は絶対条件ではなく、契約打ち切りを打診されたことはなかった。そもそも家事支援の清掃スタッフなので、簡単なあいさつ程度の日本語ができればよく、日本語能力が問われる仕事ではなかった。 来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
それまで毎月、日本語の試験はあったが、合格は絶対条件ではなく、契約打ち切りを打診されたことはなかった。そもそも家事支援の清掃スタッフなので、簡単なあいさつ程度の日本語ができればよく、日本語能力が問われる仕事ではなかった。 来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
来日に当たっては、契約更新で3~5年は仕事ができると聞いており、日本で働くために3か月勉強し、日本語の面接や料理の訓練を1年以上重ねてきていたため、大きなショックを受けた。 またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
またAさんには簡単に帰国できない事情があった。離婚後21年間、女手一つで3人の子を育て、娘2人は結婚し自立したが、息子は大学で学費がかかり、母親の面倒も見ているからだ。 フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
フィリピンでもコロナ禍が拡大、フィリピン統計庁が発表した失業率は8.7%(21年4月)と高く、戻っても仕事が見つかるかわからない。Aさんは「日本で早く次の仕事を見つけなければ」と、仕事を探すため早期退職を申し出たところ、自己都合退職扱いにされた。 国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
国の指針では、「本人が在留を希望する場合、雇用主は新たな受け入れ先の確保に努める」との規定があったが、ニチイは別企業への斡旋もせず、フィリピンへの帰国を求めた。同時期に来た8人の仲間も同じ理由で雇い止めになり、失意の中、5人が帰国したという。 契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
契約解除されたAさんは国家戦略特区のビザではなく、勤務時間が制限される特定活動ビザへと変更を余儀なくされ、週40時間の労働時間は28時間へと切り下げられ、滞在期間も21年5月末までに短縮されてしまう。「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「なんとかビザが延ばせる仕事をみつけなければ」と、4カ所のハローワークとネットカフェで仕事を探しながら、カプセルホテルや低額の宿泊所を転々とした。気付くと手持ちの現金は1000円となり、相談会に駆け込んだ。「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「できるなら3年、5年と仕事をしたいと思っていました。(契約を更新しないと言われ)傷つき、とてもショックを受けました。子どもの学費や母親を支えるためにも帰るわけにはいかないんです」 私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
私とほぼ同じ歳のAさんが、切々と訴える姿に言葉もなかった。雇用の調整弁にされる外国人 なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
なぜニチイ学館はこのような対応をしているのか、取材を進めた。 ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
ニチイ学館は日本での家事代行業の需要増を見込み、18年2月に特区での事業に参画した。19年3月末で632人、20年3月末は695人のフィリピン人女性を受け入れた。 しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
しかし家事代行の需要は予想ほど伸びなかった。そのなか、19年9月には事業を推進した創業者の寺田明彦前社長が死去。家事代行事業を含めたヘルスケア部門は19年度、21億円の赤字となる。 取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
取材を重ねるうちに同社の関係者からも情報が寄せられるようになった。同社の20年8月に作成されたとされる文書には次のように書かれている。「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「スタッフ評価制度による契約不更新(雇い止め)の実施」「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「毎月実施の各種研修を基に、年間合格単位以下の者を雇い止める」 並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
並ぶ「雇い止め」の文言。事業を黒字化するという論理はわかるが、これは外国人労働者の使い捨てではないか。 私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
私は同社に回答を求めた。同社は、私がアクセスした当初から一貫して、取材に対しては面談でなく、メールで回答するとしていた。メールで質問を送ると、フィリピン人女性たちの評価制度に対して返答があった。「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「当社独自の日本語試験を年4回、行っていた。その他の要素も含め改善が見られない人は、契約を更新しなかったケースもある」 これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
これだけを読むとそれほど悪質とは思えない。実際はどうだったのか。声を寄せてくれたのは、同社の関係者だった。私にこう怒りを吐露した。「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「フィリピンから来る人たちは、シングルマザーを含めて一家の大黒柱として、きちんと働きたいとプライドをもってやってきている女性が多い。さんざん期待をさせておきながら、ニチイは、労働需要が生み出せないとなった途端、『日本語能力に問題がある』などとその場しのぎの理由をつけて、一斉に雇い止めにしました。彼女たちを雇用の調整弁として扱っており、あり得ない」「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「大量に女性を受け入れたが多くは仕事がなく、この1年は研修もせずに問題集を渡し自習させ、試験を受けさせ続けた。教育らしい教育はしていません」 フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
フィリピン人女性の頑張りを見ていた関係者たちは、社内の理不尽なやり方に憤り、女性たちへ罪悪感を覚えて、彼らもまた苦しんでいるように見えた。繰り返し試験を実施して雇い止めの理由に 関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
関係者やフィリピン人女性たちの話によれば、ニチイ学館は20 年1月ごろから、契約更新しない根拠となる試験の頻度を増やすようになった。日本語、掃除技術や知識、社内コンプライアンス、礼儀作法など多岐におよぶ試験を、ペーパーや実技で繰り返したという。8月以降は総合点の悪い女性に追試を受けさせ、合格点に満たないと契約更新しなかった。 あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
あるフィリピン人女性はこう証言した。「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「繰り返し試験され、結果が悪い人は、事務所に名前や番号が貼り出され雇い止めになっていました」 21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
21年3月末は489人が契約更新される見込みだったが、206人が退職した。自己都合の退社もあるが、一部は雇い止めだという。同社によれば98人が帰国した。驚いたことに、日本に残った108人のうち、48人の所在が把握できていない。 その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
その件を尋ねると、ニチイは短いコメントを返してきた。「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「契約更新に至らず退職した人がいたことは事実。第三者管理協議会に稼働率の低さを指摘され、雇用計画を見直さざるを得なくなった。フィリピンの関連機関に言われ、退職者の帰国を前提に対処していたが、今後は協議会とも協議の上、可能な範囲のサポートを検討したい」抜き打ちで部屋を訪れ、干された下着の写真を撮る 私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
私が問題を追いかけているさなかの2月中旬には、ニチイがフィリピン人女性たちの住む従業員寮やシェアハウス約20か所を抜き打ちで一斉調査を行っていたことも判明した。さらなる解雇を進めるために、女性たちにとってより不利な情報を洗いだそうと、プライバシーを完全に無視した手口で検査したことを知り、私は一気に怒りがこみ上げた。 この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
この情報を寄せてくれたのも関係者だ。その方も、「こんなことが許されていいのか」と心を痛めていた。 抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
抜き打ち検査は、同社の日本人従業員が二人一組となって部屋を訪れ、フィリピン人女性たちの同意もなく引き出しを開けたり、部屋干しの下着の写真を撮ったりしたという。 部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
部屋に入られたフィリピン人女性は言う。「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「下着姿の人もいる中、携帯電話もチェックされるなど、プライベートな部分にまで入り込まれ、調べられた。そしてその後、何人かが雇い止めになりました。彼らは日本人にも同じことをするのでしょうか。こんなことを日本の大企業がやるなんて。人減らしの理由をつくろうとしているようにしか見えない」 不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
不在の人もいるなかで、ベッドや引き出しの中を調べたり、写真を撮ったりして在宅勤務の態度や服装、整理整頓の様子などをチェックする。人権という概念が欠落している。どう考えてもやりすぎだ。 私はこれらのことに対して、ニチイ側に見解を求めた。「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
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「個別に回答することは差し控える。悲しい思いをした元スタッフがいることを重く受け止め、真摯に対応する。相談窓口の設置とともに対話に向けて調整を進めている」 またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
またも短いコメントが返ってきた。 さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
さらにその後の取材で、ニチイは、雇い止めや自己都合退社をするフィリピン人107人に対し「退職後は、ニチイからの支援はすべて必要なく、放棄する」などと書かれた「確認書」にサインをさせるなどしていたことも判明した。雇い止めだけでなく、責任回避のための文書にサインさせるとは信じられなかった。 これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
これについてはどういうつもりなのか。「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
「『権利放棄書』として捉えられている可能性があると推察するが、確認書はあくまで双方の意志・認識の確認を行った。確認書の提出後も個別相談に応じ、帰国手配を含めた支援をしている」 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
 その後、この問題は国会などでも取り上げられ、ニチイは釈明に追われた。 9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
9月28日には、内閣府などでつくる第三者管理協議会が、同社に対し行政指導を行った。雇用の改善や、家事支援事業の需要を喚起し、継続して働く希望がある人には、別の受け入れ機関を斡旋することなどを求めた。さらに、寮などの住居への立ち入り検査や、室内撮影を行う場合は、事前に目的や内容、時間帯を説明し、女性たちの理解を得た上で、プライバシーに最大限配慮して行うことも指導した。 記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
記事が出たことで、ニチイや内閣府の対応が変わったことを心からうれしく思う。傷ついた女性たちの気持ちが少しでも回復し、やっぱり日本に来て働いてよかったなと思ってもらえるようになってほしい。【続きを読む】《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る《日本の入管の“異様な実情”》無視され続けた「今すぐに助けて」の願い…死亡者が出ても変わらない“隠蔽体質”に迫る へ続く(望月 衣塑子)
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(望月 衣塑子)