マンガ・こたつ・ハンモック…ユニーク過ぎる高校図書館、生徒たち「落ち着くわー」

マンガ、こたつ、ハンモック――。
生徒たちが自由に過ごせるユニークな図書館が、埼玉県立飯能高校(埼玉県飯能市)にある。館内には、いじめ、不登校、ジェンダーなどに関する約60冊を集めた「あなたをまもる本」のコーナーもあり、コロナ禍で傷ついた生徒たちの心を癒やしている。(塩島祐子)
■「すみっコ」
<ようこそいらっしゃいました。すみっコ図書館司書の湯川です>
校門から一番離れた校舎の最上階、学校の隅っこにあるから、通称「すみっコ図書館」。入り口の特大ポスターに写るのは、ちょっとこわもての中年男性だが、かわいらしいエプロンを身につけている。
「きょうは何する?」。ポスターそのままの格好をした司書の湯川康宏さん(56)が、ニコニコ笑って生徒に話しかけた。
館内には一般図書だけでなく、約2700冊のマンガや鉄道の玩具、ぬいぐるみ、コスプレ衣装など、学校図書館のイメージからはかけ離れたものがずらり。生徒は読書や勉強だけでなく、好きなことをして過ごす。2年の女子生徒(16)は「おしゃべりできるし、こたつもあって、家みたい」とうれしそうだ。
■「落ち着くわー」
県立図書館などに勤務していた湯川さんが同校に赴任したのは2016年春。きっと、たくさんの生徒でにぎわっているはず。そんな期待は、すぐに崩れ去った。来館者は1日1人か2人で、司書の自分がぽつねんとしていた。
このまま待っているだけでは駄目だ。でも、活字の本に親しんでいない生徒に、いきなり「読書しろ」と言っても……。思案を巡らせ、「マンガならどうだ」とひらめいた。「大人気コミック」と題する棚を作ると、大当たり。この棚を目当てに生徒が集まってきた。
「もっと居心地を良くしたい」。その後、おみくじコーナーを作り、ひいたくじに応じて“お告げの本”を貸し出したり、こたつやハンモックを設置したり。喫茶店の隅っこの席みたいに、「なんだか落ち着く」と思ってもらえたらという願いも込め、「すみっコ図書館」と名付けた。
だから、生徒たちの「落ち着くわー」という言葉が、すごくうれしい。
■手続き不要
「あなたをまもる本」のコーナーを作ったのは、着任1年目。悩みを抱えている生徒が、人目を気にして本を借りづらいことがあるかもしれない。そう考えたのがきっかけで、貸し出し手続きを不要にした。
コロナ禍で、漠然とした不安に襲われたり、目標を見失ったりして、つらい思いをしている生徒は多い。今年に入り、匿名で寄せられた本のリクエストに「えっ?」と驚かされたことがあった。自殺の方法を解説する本だったからだ。
生きづらさを軽減する狙いもあるとされる本で、リクエストカードには「この本に救われました。他にも救われる人がいるかもしれません」と書かれていた。だが、県の有害図書に指定され、館内には置けない。悩んだ末、自殺防止につながりそうな本を2冊選び、カードの返信欄に「あなたの想(おも)いに応える本を探しました。コーナーに加えます」と書いた。
コーナーの約60冊の表紙には、<あなたの心のすみっコに 小さな味方 すみっコ図書館>と記したシールを貼っている。悩みを抱えた生徒たちの心が、少しでも晴れますように。