元保育士による女児わいせつ、スマホから消された動画の復元に成功…「動かぬ証拠」に

パソコンやスマートフォンから削除されたメールや画像などを復元する技術「デジタル・フォレンジック」が、福井県内の事件捜査でも活用されている。
客観的な証拠がより重視される中で、県警は「高度化する犯罪を立件する切り札になる」と期待を寄せる。(長沢勇貴)
■■スマホからわいせつ動画
「デジタル・フォレンジックがなければ立件できず、被害者も保護者も泣き寝入りするしかなかったかもしれない」。捜査関係者が振り返るのは、元保育士の男による強制わいせつ事件だ。
県警は、男が勤務していた保育園の女児の保護者から1月に相談を受けて捜査を開始。男のスマートフォンなどを押収したが、わいせつな行為を撮影した動画などは消去されていた。
県警から依頼を受けた中部管区警察局は、スマートフォンなどをデジタル・フォレンジックで解析。動画などの復元に成功した。幼い被害者からの詳細な聞き取りは難しく、目撃者もいなかったため、動画などは重要な証拠となった。県警は4月、男の逮捕を発表。7月には強制わいせつ罪などで地裁の実刑判決が確定した。
捜査幹部は「最初は否認していた容疑者に動かぬ証拠を示すことができた。複雑化する現在の犯罪捜査では必要不可欠になるだろう」と話す。
■■破損機器からも再現
県内の事件捜査でデジタル・フォレンジックを担うのは、主に中部管区警察局の福井県情報通信部情報技術解析課だ。県警から年間200件ほどの依頼を受けている。
同課によるとメールや画像はスマートフォンやパソコンから削除されても、消えているのは辞典の索引のような部分で、元データ自体や消去した痕跡は残っているという。
そのため、解析ソフトなどを使い、アルファベットや数字の列を丹念に読み解いて、データを復元する。容疑者が証拠を隠すために電子機器を破損したとしても、残されたICチップなどから取り出した細切れの情報をつなぎ合わせ、データを再現できることもある。
元データを誤って変えてしまうと証拠能力を損なうため、復元には慎重な作業が求められる。解析前に全データをハードディスクにコピーするほか、誰が作業しても復元できるよう解析方法も記録し、証拠としての価値を保つよう努める。
中部管区警察局の担当者は「正確な作業で犯罪の立証に貢献したい」としている。
■捜査に活用、全国で
デジタル・フォレンジックは近年、全国各地で活用が進んでいる。
2018年に和歌山県田辺市の資産家で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた会社経営者が急性覚醒剤中毒で殺害された事件では、同県警がデジタル・フォレンジックを活用し、容疑者のスマートフォンの履歴から事件に関係するやり取りを復元した。
河井克行・元法相による19年7月の参院選を巡る大規模買収事件でも東京地検特捜部が活用したとされる。
◆デジタル・フォレンジック=「電子鑑識」の意味で、電子機器から消去されたり書き換えられたりしたデータを解析、復元する技術の総称。サーバーやハードディスクにある痕跡から復元することができ、近年は捜査現場で活用が進んでいる。