「炎上してもかまわない」元マクドナルド社長・原田泳幸氏、ユーチューバーデビューで独占告白 アップル、マック、ベネッセ時代の裏話や経営指南も

アップルコンピュータ(現アップル)日本法人や日本マクドナルドホールディングスなどで経営トップを務めた原田泳幸(えいこう)氏 (72 )がユーチューバーデビューした。「プロ経営者」として実績を残した一方、批判も少なくなかった。私生活でのトラブルもあったが、何を発信していくのか。本人を直撃した。
14日に開設したのは、「原田泳幸のビジネスチャンネル」。初回は英語の習得法やアップルのマーケティング責任者を務めたエピソードが語られている。
その後もアップルに復帰した創業者のスティーブ・ジョブズ氏との対話や初代「iMac(アイマック)」をヒットさせた裏話、アップル辞任を打ち明けた際の現CEOのティム・クック氏の意外な反応などが紹介されるという。
ユーチューブを始めたきっかけについて原田氏は「経営者の友人に『グローバルな経験もあり、多岐に渡る業種で20年にわたる経験もある。成功もしているし、修羅場もくぐっている。もっと発信した方がいい』と勧められた」と話す。
配信内容は「回顧録」や「いまだから言える本当の話」のほか、人事、マーケティングなど「ビジネスケーススタディー」が中心だという。
原田氏はアップルでの成功を受け、2004年に経営が悪化していた日本マクドナルドのトップに就き、「100円マック」やフランチャイズ(FC)店改革などでV字回復させた。
その後、同社の業績が悪化したことについて、店頭からのメニューを一時、撤去したことなど、原田氏の経営失敗とも報じられたが、「退任するときに業績が落ちていたことは事実だが、私の失策でも何でもなく、当時の後継者が失敗したものだ」と強調する。
同社は現状好調だが、今後については「心配している。マクドナルドの一番の強みはお得感だが、今は価格が高い。コロナが明けたら競合が仕掛けてくるので非常にリスクは高いと思う」と古巣に懸念を示す。
14年にベネッセホールディングスの会長兼社長となったが、直後に顧客情報の漏洩(ろうえい)が発覚。2期連続最終赤字となり約2年で退任した。この経緯も「就任前に起こった漏洩を、私が就任1週間後に気付いて能動的に危機管理したものだ。退任したのは業績の結果が出なかったけじめだ」と説明。「ユーチューブで戦うつもりはないが、事実誤認のところだけはちゃんと説明しようと思っている。炎上しても構わない」と語る。
19年には台湾発のタピオカミルクティーなどで知られるゴンチャジャパンを率いたが、今年2月に妻でシンガー・ソングライターの谷村有美 (56 )に対する傷害罪で罰金30万円の略式命令を受け、退任した。
いまは若手経営者らを対象とした経営塾や複数の企業の顧問を務めている。経営者として現場に戻る気はないのか。
「いまのところは考えていないが、役に立てるとしたら日本企業のグローバル展開だろう。若い経営者をトップレベルに引き上げるというミッションならやってもいい」と話していた。
◆原田泳幸氏との一問一答は以下の通り。
――ユーチューブを始めたきっかけは
「ゴルフ場で知り合った経営者の友人に勧められたことです。『あなたはグローバルな経験もあり、多岐に渡る業種で20年にわたる経験もある。成功もしているし修羅場もくぐっている。もっと発信した方がいい』と言われました。マスコミには真実と違うことを相当書かれているし、過去の大変革のときに役員クラスの大胆な入れ替えをやったこともあって、匿名で流言飛語をネットで書き込んだりしている。誰が書いたか分かりますよ。友人に『ユーチューブで反論する必要はないけど、淡々と語ることで正しい認知になり、若い人のためにもなる』と強く勧められました。経営塾を5年やっていますが、ユーチューブではもっと多くの人に話せて後に残せる。微力ながら社会貢献になるという思いもあります」
――ユーチューブは若者の視聴者も多い
「それがいちばんの動機付けです。日本の中小企業もグローバルの競争にさらされています。グローバルの視点、デジタルで世の中がどう変わっていくかも教えていきたいですね。世の中に経営セミナーはたくさんありますが、いいポスターと悪いポスターの違い、人事や採用のやり方など、理念ではなく実践的なことを話していきたいと思います」
――閲覧数や登録者数の目標は
「ユーチューブでアクセスが多いのがエンターテインメント系で、ビジネスや政治系はアクセス数が少ないのでターゲットは設定していません。地道にやっていくことで、瞬間的なアクセスより継続的に見ていただければと考えています」
――収益化は
「経営塾の集客につながればというのはあります。反応が高ければ、質問を受けたり、実践的な課題をコンサルティングしたりするような有料オンラインも視野に入れています」
――ビジネスでの成功エピソードが中心に?
「ユーチューブで話す中身は、『回顧録』と『いまだから言える本当の話』。アップルやマクドナルドを辞めた本当の理由、業績不振の本当の理由など、いまは言える話も結構あります。一番の中身は『ビジネスケーススタディー』で、人事、マーケティング、フランチャイズの多店舗展開、事業インフラなど多岐に及びます。危機管理の実践的な事例は、多分ほかの方が経験されていない独自の内容かと思います」
――マクドナルドの経営では、いったんV字回復した後、店頭からのメニュー撤退などの施策が反発され、業績が悪化して退任したといわれている
「全く違います。退任するときに業績が落ちていたことは事実ですが、背景は私の失策でも何でもなく、当時の後継者が大失敗したものです。私がそれまで大成功したので、はしごを外すような記事が売れるのでしょう。1つそういう記事が出ると、参照した記事が拡散するんですね」
――ベネッセでも就任直後に情報漏洩(ろうえい)が発覚し、2年連続の赤字になって退任したと
「実際には、就任前に起こった漏洩を、私が就任1週間後に気が付いて能動的に危機管理したものです。私の就任前の出来事であろうと、トップは業績の結果が出なかった場合けじめをつけるべきですから、退任しました。ただ、時が過ぎると『情報漏洩』と『引責辞任』という言葉だけが残ってしまいます。ユーチューブで戦うつもりはないですが、事実誤認のところだけはちゃんと説明しようと思っています。炎上しても構わないと思っていますよ」
――コメント欄はチェックする?
「コメント欄はあまり見ないようにしています。見ないことが経営者の健康管理です」
――これまで大きな失敗だと自分で考えていることは
「たくさんありますよ。エンジニアの時代にもあったし、経営者としても全部うまくいったわけではありません。採用を間違えたり、ヒットしなかった商品もあります。ただ、業績を大きく毀損するような、私に直接、一次的な責任があるような失敗はなかったですね」
――現在マクドナルドは好調だが、在任中の店舗改革がベースと考えている?
「はっきりそう思っていますよ。半分以上店舗を入れ替えましたし、ドライブスルーの整理もやりました。誰もやらない時代からデリバリーをスタートしていましたし、デジタルマーケティングのインフラも作りました。そうした基盤作りがコロナの中で追い風になっています」
――これからも好調は続きますか
「いまのマクドナルドを心配していますよ。ブランド政策にも疑問に思う点がたくさんありますが、一番は価格政策ですね。マクドナルドの一番の強みは、全ての価格帯におけるお得感ですが、今はめちゃ高いわけですし、あっという間に1000円行きますから。コロナで厳しい中で、デリバリーやデジタルマーケティングでが追い風になったので値上げに踏み込んでいますが、コロナが明けたらまた競合が仕掛けてきますから、非常にリスクは高いなと思っていますね」
――ゴンチャジャパンでは就任直後にコロナ禍に見舞われた
「コロナの影響はもちろんありましたが、そのなかでも私は構造改革やメニュー政策をやり、EBITDA(キャッシュベースの利益)も2ケタまで持っていきました。売り上げも前年対比で倍ぐらいにまでしたのかな」
――道半ばで退任。現在の夫婦の関係は
「回答を差し控えさせてください」
――現在の仕事は
「経営塾を継続的にやっている企画会社が3社あって、あと1社はスポットでやっています。来年から歯医者さんとお医者さんと対象にした経営塾も始まります」
――企業の顧問も
「いくつかやっています」
――また経営の現場に立ちたいという思いは
「いまのところ考えていないですね」
――もしどこかから声がかかったら
「まあ一応話は聞きますけど」
――関心のある業界は
「私がいまからお役に立てるとしたら日本企業のグローバル展開などですね。今後もグローバルなビジネスモデルでないと成功しないと思います。若い経営者をトップレベルに引き上げるというミッションならやってもいいですが、自分がトップに居座るというのはやっちゃいけないと思います」
――若いビジネスマンへの期待は大きい?
「社長を引退して初めて気づいたのですが、一番伸びしろのある世代は30代前半です。吸収が速いし、適度な経験と適度な未熟さがある。頭が柔軟ですから。50代以上はいかに若者を引き上げるかというのがミッションですが、現実には部長クラスが若者の成長を抑えている。部下が提案を持ってきても失敗を恐れて承認しないなど大企業になればなるほどチャレンジしない若者もいる。そうしたところで苦しんでいる若者もたくさんいますよ」
――日本に「プロ経営者」は
「いなくはないですが少ないですね。大企業では上に行けば行くほど仕事をしていないですね。グローバル企業は上ほど忙しく、実践的です。日本のITベンチャーはAI(人工知能)やデータサイエンスなどテクノロジーが細分化されていますが、それらをつないでビジネス化するという指導がないですね」
――そうしたところをユーチューブでも伝えていきたいと
「時々IT企業の若い経営者をゲストに呼んで、そういったこともやろうと思っています」