すてきなお姉さん、なぜ救えなかった… 問い続けた渋谷バス停の1年

東京都渋谷区幡ケ谷のバス停のベンチで路上生活をしていた大林三佐子さん(当時64)が頭を殴られて死亡した事件から16日で1年。
現場周辺は今も花が絶えない。大林さんに自らを重ねる人、なぜ救えなかったかと自問自答する人――。一人の女性の死が、多くの人の心を揺さぶり続けている。
16日午前8時。近所の男性(79)は散歩中にバス停前で足を止め、いつものように手を合わせた。「寒かったろうに。一生懸命生きようとしたんだろう」
この1年、甲州街道沿いにあるバス停周辺は花や飲み物が途切れることがなかったという。「祈ることしかできず、ずっと気持ちのやりどころがなくてね。きっと同じように思っている人が多いのだろう」。男性は事件後、散歩中も千円札を1枚、持ち歩くようになった。助けが必要な人に渡すためだという。
「色々な気持ちが渦巻いて、整理がつかない」。午前10時半ごろ、世田谷区の主婦(62)は言葉を絞り出した。高校生の頃、大林さんと広島県内の同じ劇団に所属していたという。コロナ禍で外出を控えていたが、「特別な日だから」と、この日初めて献花に訪れた。
当時の大林さんは、地元の短大に通う先輩だった。旅行帰りに劇団員にお土産を買ってきてくれたり、演技の指導をしてくれたり、「優しくて面倒見がいいすてきなお姉さんだった」。劇団では1年ほど一緒で、女性が劇団を抜けた後は、連絡を取ることはなかった。
事件を知ってから、大林さんはなぜ路上で生活するまで追い詰められたのか、自分はなぜ助けられなかったのか、そんな問いがめぐり続ける。「魂が安らかでありますように」。花と一緒に供えた洋菓子の袋に、そう言葉を添えた。