<音声入手> 「月45時間を超えても構わない」 ワタミ執行役員が“残業要求”で厳重注意

大手外食チェーン「ワタミ」の執行役員が、社員に対し、労働基準法で定められた残業時間の上限を超える労働を求めたと受け取れる発言をしていたことが、「週刊文春」の取材でわかった。社内ネットで配信された動画を入手した。
【画像】残業を強要した執行役員の肱岡氏 創業者の渡邉美樹氏(62)が12年ぶりに社長に復帰したワタミ。コロナ禍で外食事業が厳しい中、渡邉氏が新たな収益源として力を注いでいるのが、「ワタミの宅食」だ。11月12日発表の中間決算でも、宅食事業の売上高は約178億円で、国内外食事業の約75億円を大きく上回った。

社長に復帰した渡邉氏 共同通信社 一方、ワタミを巡っては、過去に新入社員が過労自殺するなどブラックぶりが問題視されてきた。宅食事業を巡っても、昨年9月、営業所長の残業代未払いに関して労働基準監督署から是正勧告が出されている。さらに今年3月にも、月75時間を超える残業をさせていたとして、是正勧告が出されていた。 その宅食事業のトップである宅食事業本部長に10月1日付で起用されたのが、執行役員の肱岡彰彦氏だ。 10月の最終週、全国で数百名いる「ワタミの宅食」営業所の所長に向け、社内ネットで1本の動画が配信された。「週刊文春」が入手した動画によれば、肱岡氏は以下のように語っている(音声のみ公開)。肱岡「11月の残業が増えるということは……増えるということは問題がありませんし、逆に言うと、増やして下さい。で、必ずいま述べたような施策を、必ずやるというふうに考えて下さい」 労働基準法で定められた残業時間の上限は原則的に月45時間だが、次のように続けた。肱岡「残業に関してはですね、会社の考え方として、残業は必要に応じてして下さい、というスタンスですけれども。ただし皆さんの健康を考えて45時間というのを目安にしてます。ですから45時間というのを一つの目安として、上長とご相談をしてみて下さい。ただ11月はですね、強化月間ということで、45時間を超えるということがあってもいいというふうに考えてます。どうしても労働基準法に触れるので80時間というのはできませんけれども、45時間超えるということも、会社としては構いませんので」 そして、動画の最後はこう締めくくったのだった。肱岡「一番の優先順位を営業活動にすると。残業守る、ということじゃなく、営業活動するということを最重要に考えて頂いて、11月、頑張って下さい」 労働法に詳しい光永享央弁護士が指摘する。「新入社員が過労自殺した際、渡邉氏らは全面的に責任を認め、再発防止を誓約した。ところが昨年、再び残業を巡って是正勧告を受け、悪弊を断ち切れていないことが窺えます。そんな中で、労基法の原則的上限である45時間を守るより営業活動が優先と発信すれば、長時間労働に苦しむ社員が生まれ、新たな犠牲者も出しかねません。明らかに不適切な発言です」ワタミは肱岡氏の発言をどう受け止めているのか ワタミに事実関係の確認を求めたところ、以下のように回答した。「当該執行役員はご指摘の動画内で『労働基準法を守った上で、残業する場合は上司に相談して適切な手続きをするように』とも発言し法令を遵守する姿勢の発言を明確にしております。実際、ワタミ宅食事業の今年度の平均残業時間は法令を下回る水準となっており、法令遵守を徹底しております。 一方で会長兼社長の渡邉美樹が、労働環境改善を掲げる企業方針を打ち出している中で、今回の発言は誤解を生む表現であり適切でないと真摯に受け止め改善致します。 渡邉からは、当該執行役員に対して今回の発言は誤解を生む表現であり、適切ではないと厳しく注意がなされました」 ワタミを巡っては、社員の労働環境を巡る問題が相次ぎ、そのたびに渡邉氏は労働環境の改善を掲げてきた。そうした中で、宅食事業部門のトップ自らが残業を求める動画の存在が明るみに出たことで、社員に過大な労働を求める同社の企業体質が改めて問われることになりそうだ。 11月17日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」および11月18日(木)発売の「週刊文春」では、「ワタミの宅食」の営業所長らの証言、残業を求める発言を行った肱岡氏の経歴などについても報じている。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年11月25日号)
創業者の渡邉美樹氏(62)が12年ぶりに社長に復帰したワタミ。コロナ禍で外食事業が厳しい中、渡邉氏が新たな収益源として力を注いでいるのが、「ワタミの宅食」だ。11月12日発表の中間決算でも、宅食事業の売上高は約178億円で、国内外食事業の約75億円を大きく上回った。
社長に復帰した渡邉氏 共同通信社
一方、ワタミを巡っては、過去に新入社員が過労自殺するなどブラックぶりが問題視されてきた。宅食事業を巡っても、昨年9月、営業所長の残業代未払いに関して労働基準監督署から是正勧告が出されている。さらに今年3月にも、月75時間を超える残業をさせていたとして、是正勧告が出されていた。
その宅食事業のトップである宅食事業本部長に10月1日付で起用されたのが、執行役員の肱岡彰彦氏だ。
10月の最終週、全国で数百名いる「ワタミの宅食」営業所の所長に向け、社内ネットで1本の動画が配信された。「週刊文春」が入手した動画によれば、肱岡氏は以下のように語っている(音声のみ公開)。
肱岡「11月の残業が増えるということは……増えるということは問題がありませんし、逆に言うと、増やして下さい。で、必ずいま述べたような施策を、必ずやるというふうに考えて下さい」
労働基準法で定められた残業時間の上限は原則的に月45時間だが、次のように続けた。
肱岡「残業に関してはですね、会社の考え方として、残業は必要に応じてして下さい、というスタンスですけれども。ただし皆さんの健康を考えて45時間というのを目安にしてます。ですから45時間というのを一つの目安として、上長とご相談をしてみて下さい。ただ11月はですね、強化月間ということで、45時間を超えるということがあってもいいというふうに考えてます。どうしても労働基準法に触れるので80時間というのはできませんけれども、45時間超えるということも、会社としては構いませんので」
そして、動画の最後はこう締めくくったのだった。肱岡「一番の優先順位を営業活動にすると。残業守る、ということじゃなく、営業活動するということを最重要に考えて頂いて、11月、頑張って下さい」 労働法に詳しい光永享央弁護士が指摘する。「新入社員が過労自殺した際、渡邉氏らは全面的に責任を認め、再発防止を誓約した。ところが昨年、再び残業を巡って是正勧告を受け、悪弊を断ち切れていないことが窺えます。そんな中で、労基法の原則的上限である45時間を守るより営業活動が優先と発信すれば、長時間労働に苦しむ社員が生まれ、新たな犠牲者も出しかねません。明らかに不適切な発言です」ワタミは肱岡氏の発言をどう受け止めているのか ワタミに事実関係の確認を求めたところ、以下のように回答した。「当該執行役員はご指摘の動画内で『労働基準法を守った上で、残業する場合は上司に相談して適切な手続きをするように』とも発言し法令を遵守する姿勢の発言を明確にしております。実際、ワタミ宅食事業の今年度の平均残業時間は法令を下回る水準となっており、法令遵守を徹底しております。 一方で会長兼社長の渡邉美樹が、労働環境改善を掲げる企業方針を打ち出している中で、今回の発言は誤解を生む表現であり適切でないと真摯に受け止め改善致します。 渡邉からは、当該執行役員に対して今回の発言は誤解を生む表現であり、適切ではないと厳しく注意がなされました」 ワタミを巡っては、社員の労働環境を巡る問題が相次ぎ、そのたびに渡邉氏は労働環境の改善を掲げてきた。そうした中で、宅食事業部門のトップ自らが残業を求める動画の存在が明るみに出たことで、社員に過大な労働を求める同社の企業体質が改めて問われることになりそうだ。 11月17日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」および11月18日(木)発売の「週刊文春」では、「ワタミの宅食」の営業所長らの証言、残業を求める発言を行った肱岡氏の経歴などについても報じている。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年11月25日号)
そして、動画の最後はこう締めくくったのだった。
肱岡「一番の優先順位を営業活動にすると。残業守る、ということじゃなく、営業活動するということを最重要に考えて頂いて、11月、頑張って下さい」
労働法に詳しい光永享央弁護士が指摘する。
「新入社員が過労自殺した際、渡邉氏らは全面的に責任を認め、再発防止を誓約した。ところが昨年、再び残業を巡って是正勧告を受け、悪弊を断ち切れていないことが窺えます。そんな中で、労基法の原則的上限である45時間を守るより営業活動が優先と発信すれば、長時間労働に苦しむ社員が生まれ、新たな犠牲者も出しかねません。明らかに不適切な発言です」
ワタミに事実関係の確認を求めたところ、以下のように回答した。
「当該執行役員はご指摘の動画内で『労働基準法を守った上で、残業する場合は上司に相談して適切な手続きをするように』とも発言し法令を遵守する姿勢の発言を明確にしております。実際、ワタミ宅食事業の今年度の平均残業時間は法令を下回る水準となっており、法令遵守を徹底しております。
一方で会長兼社長の渡邉美樹が、労働環境改善を掲げる企業方針を打ち出している中で、今回の発言は誤解を生む表現であり適切でないと真摯に受け止め改善致します。
渡邉からは、当該執行役員に対して今回の発言は誤解を生む表現であり、適切ではないと厳しく注意がなされました」
ワタミを巡っては、社員の労働環境を巡る問題が相次ぎ、そのたびに渡邉氏は労働環境の改善を掲げてきた。そうした中で、宅食事業部門のトップ自らが残業を求める動画の存在が明るみに出たことで、社員に過大な労働を求める同社の企業体質が改めて問われることになりそうだ。 11月17日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」および11月18日(木)発売の「週刊文春」では、「ワタミの宅食」の営業所長らの証言、残業を求める発言を行った肱岡氏の経歴などについても報じている。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年11月25日号)
ワタミを巡っては、社員の労働環境を巡る問題が相次ぎ、そのたびに渡邉氏は労働環境の改善を掲げてきた。そうした中で、宅食事業部門のトップ自らが残業を求める動画の存在が明るみに出たことで、社員に過大な労働を求める同社の企業体質が改めて問われることになりそうだ。
11月17日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」および11月18日(木)発売の「週刊文春」では、「ワタミの宅食」の営業所長らの証言、残業を求める発言を行った肱岡氏の経歴などについても報じている。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年11月25日号)