超ハイスペック男性「婚活2年半」でズタボロの訳

40代経営学者が婚活で感じた理不尽さとは(写真:マハロ/PIXTA)
40代という年齢以外、文句なしのハイスペック男性である著者は、2年半後ズタボロ状態で婚活市場から撤退した。あくまで男性視点という注釈付きで、著者が捉えた婚活市場は、陳列棚に並べられた商品群としての男性と、それらを妥協なく比較し、試し、選んでいく女性という構図だった。最後に著者が出した答えとは。『婚活戦略 – 商品化する男女と市場の力学』を書いた東京都立大学大学院の高橋勅徳准教授に聞いた。
──婚活パーティー、結婚相談所での生々しい実体験ルポ、読んでいてかなり寒々しかったです。
たとえ高収入・安定職種でも、同じスペックならイケメン30代男性が圧勝。「いいね!」をくれた相手全員に機械的に申し込んでみたら、最後にブランド品をねだられて終了。唯一、結婚前提の交際を申し込むまで行った女性は、自分の価値を再認識し、さらに上狙いへと旅立った。
女性たちは結婚相手として必要な情報だけ聞き出し、「無価値」と判定したら即シャットダウン。会話が弾んだ後LINEでお礼メッセージを送ると、既読スルーじゃなくて未読スルー。相談所の担当者に「何が悪かったかPDCAを回しましょう」と言われても、学習のしようがない。でも、それが許される場所なんです。
──女性会員にとって快適な場にすることで成婚数を上げる。そのルールは崩せない?
データベース化された出会いの場で女性が比較検討して男性を選び、男性は選ばれる関係が固定化している。婚活パーティーで男性は年収、年齢、身長、職業など条件が設定され、女性は下手すると年齢くらい。細かな条件で相手を選べるのは女性で、男性は自分の所に来て会話してくれた人としか交流できない。ゲームバランスが男性にとって不利になりすぎています。人生を振り返って、これほど女性から理不尽かつ過酷な目に遭わされたことはなかった。
婚活男性がとくに知っておかねばならないのは、自分がいかにハイスペックであろうと、膨大なデータベース上ではつねに2番目以下の候補者であるということ。女性が思い描く“理想の結婚相手”には絶対に勝てない。同年収ならより若い男性、さらによりイケメンをという、果てしない欲望のエスカレーションが起きています。
──連敗中の高橋さんが結婚相談所へ面談に行ったとき、同じく相談に来ていた女性会員と担当者の話す声が隣室から聞こえてきた。
僕には「頑張りましょう。1万5000円で追加のサービスがありますよ」の一点張り。それに対し、女性にはより具体的・実際的なアドバイスをしていた。あの瞬間「もう、いいや」と吹っ切れた。自分は陳列棚の商品だったと気づいたんです。
高橋 勅徳(たかはしみさのり)/1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了。沖縄大学専任講師、滋賀大学准教授、首都大学東京大学院准教授を経て現職。専攻は企業家研究、ソーシャル・イノベーション論。共著書に『制度的企業家』『ソーシャル・イノベーションを理論化する』。(撮影:風間仁一郎)
男性会員はファッションやコミュニケーション講習でラッピングされた商品、ウィンドーショッピングのようにそれを見て回る女性会員はお客さん。女性が理想の結婚相手を安全に選べるように、婚活市場のビジネスモデルが設計されているのです。
──モテない男性は優しい女性に出会う偶然を待つしかない、という結論には脱力しましたが……。
自分が失敗しましたからね(笑)。現在のゲームルール上、女性は45歳までなら何度でも婚活に戻って、自分の理想を追い続けられる。学生に話を聞くと、今は彼氏がいても婚活パーティーに行くのは普通だそうです。女性が今の彼氏よりベターな人をつねに探し、それを狩りに行くのが婚活という活動の現実。
そこでは男性はつねに誰かと比較され、仮にマッチングに成功しても、女性の「もっといい人いないかな」の探索を受け入れなきゃいけない。正直、男にとって無理ゲーです。
現状ルールの中で男性の最適戦略は「待つ」しかない。必死で女性と出会う機会をつくって、理不尽な目に遭うのも我慢して、選んでもらえるまで「待つ」しかないよと。設計上僕も含めた男性は不利な状況に置かれているので、それを踏まえ自分はどう行動していくかを考えていったほうがいい。女性だって45歳になった途端、強制退場という理不尽な現実がある。逆に、そこまでして結婚を選ぶ必要があるのか、ということまで考えなきゃいけないと思います。
──いびつさに嫌気が差し、結婚そのものから離れていく人を、業界が自ら生み出している側面は?
ありますね、僕が実際そうですから。こんな目に遭うんやったらええわ。料理もできるし、週末の釣りは楽しいし、老後もたぶん何とかなる。企業は貪欲に利益を追求する組織なので、今後は一度撤退した人、シニア婚や再婚市場、面倒くさがって参入すらしてこなかった人などを対象に、サービスを広げていくはずです。最近はオタク向け婚活サービスなんかも始まりましたし。
ただしメインの市場は、下手をすると女性嫌悪の男性を量産するだけの、今の市場であることに変わりない。僕のツイッターに寄せられる反応を見ていると、男性たちが顔を引きつらせ、絶句している姿がハッキリと目に浮かぶ。
実は、読んでモヤッとさせようと、わざとそういう書き方をしています。読んで共感でも反感でも怒りでも、何でもいいので婚活というビジネス空間、そして自分の行動を変えるきっかけになればと。
──今の婚活市場、行くところまで行って破綻したほうがいいと?
そうしないと、この状況は変わらないと思う。婚活を考え直さなきゃいけないなら、自壊させるのもソリューションの1つではないか。未婚化・晩婚化に歯止めがかからず、みんな行き詰まっているのに、出てくるのは「身の程を知れ」の説教。なぜえり好みしちゃ駄目なのか? 自分の人生も人格も全否定されているように感じる。女性だって同じ思いでしょう。それでも、行き詰まった先に、現状を変える道があると思う。極端な話、リファインされたお見合い結婚への回帰。もしくは、少子化を何とかしたい国の責任で制度設計して、それこそAIマッチングで強制結婚させる社会とか。その対極は、結婚にとらわれず男女が好きに生きることを肯定し、少子化を労働力確保と福祉の問題として対応し直す制度設計を目指すこと。こういう選択を迫られる地点まで行かないと、社会は変わらない。今回、それを加速させるために、あえてあおり気味で書きました。
そうしないと、この状況は変わらないと思う。婚活を考え直さなきゃいけないなら、自壊させるのもソリューションの1つではないか。未婚化・晩婚化に歯止めがかからず、みんな行き詰まっているのに、出てくるのは「身の程を知れ」の説教。なぜえり好みしちゃ駄目なのか? 自分の人生も人格も全否定されているように感じる。女性だって同じ思いでしょう。
それでも、行き詰まった先に、現状を変える道があると思う。極端な話、リファインされたお見合い結婚への回帰。もしくは、少子化を何とかしたい国の責任で制度設計して、それこそAIマッチングで強制結婚させる社会とか。
その対極は、結婚にとらわれず男女が好きに生きることを肯定し、少子化を労働力確保と福祉の問題として対応し直す制度設計を目指すこと。こういう選択を迫られる地点まで行かないと、社会は変わらない。今回、それを加速させるために、あえてあおり気味で書きました。