なぜモテない男性ほど世帯年収が高く、モテる男性ほど世帯年収が低くなるのか

11月22日は「いい夫婦の日」です。記念にこの日に入籍するカップルも多く、毎年11月は婚姻数の多い月でもあります。
ところで、実際に結婚している夫婦というのは、どのようなマッチング形態なのでしょうか。恋愛力の高い恋愛強者同士がマッチングしているのか、それとも、恋愛強者と恋愛弱者が結婚においてマッチングすることがあるのでしょうか。とはいえ、実際に結婚した夫婦がどういう組み合わせ同士の結婚なのか? について、なかなか通常の国の基幹統計では調査されません。
私は20~50代の全国約1000組2000人の夫婦を対象に調査したことがあります。今回はその結果から分かる、結婚と恋愛強者・弱者の相関についてご紹介します。
その前に「恋愛強者」とは何を指すのでしょうか? 以前、「恋愛強者3割の法則」についてご紹介しました(独身が増え続ける原因を「若者の恋愛離れ」にしたがるメディアの大ウソ)。恋愛強者は3割で、反対に恋愛最弱者も3割います。残りの4割は中間層です。出生動向基本調査にもある通り、30年以上も前から独身者の「恋人がいる率」というのは常に3割程度で推移していますし、同様に、恋愛する時期を逸したと思われる35~39歳での性体験なし率も不思議とずっと男女とも3割程度で推移しています。
私も、2015年より20~50代の未婚男性に対して継続的な調査による恋愛強者率を算定していますが、ほぼ同じ傾向が出ます。
具体的には、「自分は恋愛上手であるか否か」「恋愛に対して能動的であるか否か」「異性に対して告白したことがあるか否か」「異性から告白されたことがあるか否か」「自分の容姿に自信があるか否か」「これまで付き合ったことのある人数」など恋愛行動に関する複数の項目の結果を5段階評価に分け、全項目平均で4以上の対象者を恋愛強者として分類しています。それによれば、2020年時点の最新結果でも、未婚男性の恋愛強者率は、20~30代平均で25%、未婚女性も35%程度でそう大きく違いません。
そういうと、未婚者の統計だけで、恋愛強者3割と断じるのは乱暴ではないかというご指摘もあります。なぜなら、今や恋愛結婚が9割を占めるご時世、既婚者は全員恋愛経験者であり、恋愛弱者ではないではないか、というわけです。そもそも、日本の有配偶率は約6割なんだから3割しか恋愛強者がいないのはおかしい、と。確かにそれも一理あります。
しかし、よく考えてほしいのは、既婚者だからといって、全員が恋愛強者と言えるのか、という点です。恋愛を経験したことがある者が恋愛強者ではありません。受け身でも恋愛経験者にはなれます。
結論からいえば、既婚者で同様の調査をしても、実は未婚者と変わらず大体3割程度なのです。20代既婚者こそ恋愛強者率は男女とも4割を超えますが、30代以上は男女とも3割前後に落ち着きます。20代だけ突出するのは、そもそも20代での婚姻数が少ないことと、20代で結婚に至る若者に恋愛強者が集中するからです。言い換えれば、恋愛強者以外の人たちが結婚しているからこそ有配偶率6割が達成できているとみるべきです。
さて、前置きが長くなりましたが、実際の夫婦のそれぞれの恋愛強者率から見ていきましょう。
まさに「恋愛強者3割の法則」通り、男女ともほぼきれいに3分の1ずつに分かれました。夫婦で調査しても、恋愛強者は大体3割なのです。
興味深いのは、それぞれのマッチング状況でした。恋愛強者は強者同士でマッチングされると思いがちですが、そうではなかったのです。それぞれのマッチングを細かく見たのが以下のグラフです。
意外にも、恋愛強者同士の夫婦は全体の15%しかいません。恋愛強者3割のうち恋愛強者同士で夫婦となるのはその半分しかいないのです。恋愛強者夫は9%が中間者妻と、7%が最弱者妻と結婚します。同様に、恋愛強者妻も10%が中間者夫と、7%が最弱者夫と結婚します。夫婦ともに強者×最弱者のペアが7%いるわけです。恋愛力だけで結婚のマッチングが成立するわけではないことが分かります。
さらに、注目すべきは、強者同士・中間者同士・最弱者同士という組み合わせがもっとも多く、全体の半数近い48%を占めます。年の差婚が減って年齢同類婚が増えているという話は以前しましたが(岡村隆史さんの「年の差婚」を羨ましがる中年男性に降りかかる現実)、恋愛力においてもやはり同類婚が多いようです。
一方、夫の方が恋愛強者で妻が弱者という、いわば恋愛力における「弱者女の恋愛下剋上婚」は全体の24%、逆の「弱者男の恋愛下剋上婚」は28%もあります。経済力における上方婚(年収が夫のほうが高い)は2017年就業構造基本調査によれば、30代夫婦で夫の個人年収が400万~500万円の場合、7~8割が夫>妻の年収の夫婦です。それと比べれば、恋愛力ではきわめて男女平等のマッチングとなっています。「破れ鍋に綴じ蓋」ではありませんが、互いの長所と短所を補完し合う形で夫婦となっている例も少なくないのでしょう。
さらに、実際、夫婦となったカップルの恋愛力によるマッチング別に、夫婦の世帯年収に格差はあるのかについて調べました。前提として、本夫婦調査は世帯年収300万円未満を対象外としています。結果は以下のようになりました。
恋愛力同類婚夫婦の平均世帯年収は760万円。「弱者女の恋愛下剋上婚」(男性のほうが恋愛強者である夫婦)は686万円、「弱者男の恋愛下剋上婚」(女性のほうが恋愛強者である夫婦)の場合がもっとも世帯年収が高く、777万円でした。
つまり、「恋愛弱者夫×恋愛強者妻」による組み合わせ夫婦がもっとも世帯年収が高いということです。これは言い換えれば、あまりモテない男性でも高年収によって、モテる恋愛強者の女性と結婚することができた、と見ることもできるでしょう。結婚においては、経済力が恋愛力を凌駕するのです。
参考までに、2019年国民生活基礎調査に基づけば、核家族世帯の平均年収は約616万円ですが、世帯年収300万円以上の核家族だけに絞ると平均世帯年収は725万円となります。その全国平均を唯一下回るのが、「恋愛強者夫×恋愛弱者妻」の組み合わせです。「色男、金と力はなかりけり」とことわざにあるように、恋愛力と経済力は必ずしも一致しません。
このように、結婚という視点で見ると、男性の恋愛力はさほど大きなポイントにはならないのかもしれません。確かに、学生や20代などの若いうちは容姿やモテるコミュニケーション力などの恋愛力が物を言いますが、その神通力は結婚には通用しないということです。「恋愛と結婚は別物である」とよくいわれるのもそういうことでしょう。
しかし、そう考えると「結婚相手には高年収の男がいい」と希望する婚活女性の真のライバルは、恋愛強者の女性ということになります。相当、熾烈(しれつ)な戦いになることを覚悟したほうがよさそうです。
どんな組み合わせにしろ、調査した夫婦の幸せ度を100点満点で個別に採点してもらったところ、夫も妻も仲良く平均73点で、まあまあ幸せそうです。独身時代にモテたかどうかということではなく、結婚してパートナーとなった後にどういう関係性を築けたかが重要なのでしょう。
余談ですが、「生まれ変わっても今の相手を選びますか?」という質問に対して、夫は48%、妻は43%と、いずれも過半数割れでした。「今が幸せでも次があるならそれは別」という割り切りもまた夫婦を経験したからこその判断なのかもしれません。
———-荒川 和久(あらかわ・かずひさ)コラムニスト・独身研究家ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)、『結婚しない男たち―増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)など。韓国、台湾などでも翻訳本が出版されている。新著に荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。———-
(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)