罵声に低賃金…日本人女性が海外出稼ぎ売春「悲惨すぎる現実」

コロナ禍で日本人女性の海外出稼ぎ売春が、横行している。TwitterなどのSNSで募集を見たという人も多いだろう。だが、その実態とはヒドい。
海外出稼ぎ売春を斡旋した、女性の証言をもとに再現する――。
Webクリエーターの亜香里さん(27、仮名、以下同)が海外売春のことを知ったのは、今年7月の半ばに風俗店の運営者・黒崎(38)からかかってきた一本の電話からだった。
「ロスにある豪邸で売春ビジネスを行っている中国人の依頼で、女の子を探している。紹介してもらえないかということでした。Twitterで検索すると、確かに黒崎が言う『劉』という中国人が海外出稼ぎの女の子を募集していることがわかりました」(以下、発言は亜香里さん)
黒崎は、亜香里さんが学生時代にバイトをしていた風俗店のボーイだった。亜香里さんは大学卒業後看護師になると風俗嬢を辞めるが、勤務していた病院を退職してから再び風俗に復職した。だが好きな男性に「やめてほしい」と涙で懇願されたため、すっぱりと辞めた。webスクールで学んでフリーランスのクリエーターとなったが、今でも風俗関係の女性達とは繋がっている。
「海外出稼ぎ売春はピラミッド型の組織で、黒崎のほかにハーフスカウトマンなど複数のスカウトマンがいるようです。ハーフスカウトマンは自分の彼女をはじめ複数の女性を海外出稼ぎに送り込んだと黒崎から聞きました。Twitterで募集を呼びかけているのが劉という性別不明の課金係で、別名『でろーん』。その上に中国人のボスが君臨しているそうです」
黒崎は「海外出稼ぎ売春の業界では日本人女性が人気で、特にアイドルやAV女優は高値がつく」と説明。「できたらAV嬢の紹介を頼む。チップを上乗せすればかなり稼げるから」と力説した。そして「斡旋料として売上の20%を払うよ」と口約束をしたという。
高額な斡旋料に気を良くした亜香里さんは、知り合いのAV嬢・真純さん(32)に話を持ち掛けた。コロナ禍で風俗嬢はもちろん、撮影やイベントなどの仕事が無職同然のAV嬢たちが困窮していたからだ。
「真純ちゃんは体の弱い両親に仕送りをしていたし男にも貢いでいたので、お金にとても困っていました。橋本環奈似の可愛い系AV嬢なら、高額で稼げるよと説得したんです」
海外出稼ぎ売春の期間は2週間。AV女優のトップクラスになると、2週間で1000万円も稼ぐという。真純さんは30歳を超えていたが、見た目は20代に見えるので500万円はかたいと踏んだ。だが結果はかなり低額になった。
「真純ちゃんはビデオ面接でお腹がたるんでいると言われて、60分2万円と単価がかなり低くなったんです。でも『でろーん』から『チップで稼げるから』と説得されたので、承諾したそうです。2週間でどの程度稼げるかは、出発前には予想できなかった」
ロスに出国前に真純さんは日本でPCR検査を受けると陰性と判明。「ロスに観光」という理由で成田からフライトし、到着後陰性証明を見せると、簡単に空港から外に出られた。
「指示は全て『でろーん』のLINE。空港の外で、『ママ』と呼ばれる女性が真純ちゃんを迎えに来たそうです。ロスのホテルまで送ってくれて、そこで一泊。『一日観光をするように』という『でろーん』の指示があったものの、真純ちゃんは海外出稼ぎ売春のことがアメリカ当局にバレてしまって、日本に戻れないのではないかとその頃から怖かったそうです」
ロス到着から緊張しっぱなしの真純さん。2日目に、ロス郊外の豪邸に移動した。おしゃれなインテリアの部屋には、豪華なダブルベッドがあり、真純さんは軟禁状態で一日12時間、客の相手をした。その部屋での状況は「監禁」といっていいほど劣悪だった。
「食事は朝と夜の2回だけ。朝はフルーツとフレーク。夜はハンバーガー。おやつはなし。真純ちゃんは持参した『じゃがりこ』をつまんでいたそうです。バストイレは高級感がハンパなく、まるでホテルのようだったとか。午前11時に出勤確認があるため起床はその頃。12時から深夜0時まで12時間働いたそうです。就寝は深夜の2時頃。部屋にはベッドと小さなデスクのみでテレビはなかったそうです」
客はほとんどが当日に決まる。たまに予約があるものの、当日まで教えてもらえなかったという。リピーターはなしで、世話係はママ。ランドリーはタオル等をまとめて出していたという。
「プレイはゴムをつけての本番。日本のソープに近いそうです。プレイ以外に客からチップをもらうように、中国人ボスから強要されたそうですが、チップを払ってくれる客はほとんどいなかったそうです。時代がキャッシュレスのせいだからでしょうか。最大200ドル(約2万3000円)。紹介の時にチップで稼げると謳っていたのに。詐欺です」
客はほとんどが中国人。中には巨漢の大男や、でっぷりと太った中年男性もいた。薬物中毒者が半分ほどいて、真純さんは震え上がりながらプレイをしたという。
「豪邸にいるボスは、女性たちの監視も行っていました。真純ちゃんがボスに対する恐怖感を覚えたのは、仕事が終わったある夜、隣の部屋のアジア人らしい女性とボスの口論を聞いてから。ボスは、女性に怒鳴ったり罵声を浴びせていたそうです」
ボスには逆らわず、無事に帰国することを願い続け、やっと14日間のお勤めを終了した。
「真純ちゃんは換金係の『でろーん』から2週間で、チップを含んで250万円の稼ぎと伝えられました。予想よりもかなり低かった。手数料を引いて、180万円を帰国してから振り込むと言われたそうです」
帰りの飛行機が飛び立つ前まで、びくびくとおびえていた真純さん。東京五輪が終わって感染拡大がさらに広がり、自宅療養中の人が亡くなるという悲惨な状況にあった日本に帰国した。
「真純ちゃんには、『でろーん』から180万円振り込まれました。私は中間手数料70万円のうち、黒崎から20万円を紹介斡旋料としてもらう予定でしたが、黒崎が持ち逃げして、現在行方不明です」
紹介料を踏み倒された亜香里さんは悔しそうな表情を浮かべながらも、「Twitterで大々的に勧誘している。今も誰かがロスの豪邸売春宿で働いているだろう」と語った。
日本女性が中国人に狙われ、安い値段で海外売春させられる。このリアルを見逃してはならない。
取材・文:夏目かをるコラムニスト、小説家、ライター。秋田県出身。立教大学文学部日本文学科卒。2万人以上のワーキングウーマンの仕事、恋愛、婚活、結婚を取材。女性目線のコラム「”賞味期限”が女を不機や嫌にする」(現代ビジネス)などや映画コラムも。ルポ「同窓会恋愛」(婦人公論)、「高学歴女性の貧困」(サンデー毎日)など。「戦略的に離婚しない女たち」(週刊朝日)などで夫婦問題にも言及。「33歳女の壁その後」(朝日新聞社telling)では40万以上のPVを獲得。2020年4月日刊SPAの記事でYahoo!ランキング総合第一位に。連載小説「眠れない夜」(Wome)ランキング第一位。2007年10万人に一人の難病・ギランバレー症候群を後遺症なしに完治。