「こんなにキツいと思わなかった」女性専用風俗で働く19歳男性がそう後悔する仕事内容

※本稿は、佐々木チワワ『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
「推される側」も、金銭を得るためには相応の武器がいる。外見か内面の面白さか。ただ現在でイチから「推される側」になるにはSNSの駆使は欠かせない。特に歌舞伎町のホスト、バーテンダー、メンズキャバクラや女性専用風俗のキャストは、いかにぴえん系女子を釣るかというSNS運用が求められる。店側から投稿数、フォロワー数、RT数、いいね!数などノルマを設けられるのだ。
こうした接客業のSNS運用について、メイドカフェ研究をしている社会学者の中村香住は、「現代ビジネス」2021年8月6日配信の「メイドカフェの『メイド』が悩む、時間外労働としての『SNS労働』」でこう述べている。
個人が商品として扱われやすい接客業全般で「アイドル化」と「SNS上でのアイデンティティの労働の義務化」が起きていると筆者も実感している。そうなると営業時間中は接客し、店の外でも客や従業員と交流して、日々「キャストらしさ」のために生活を営み、更にSNSの作業があるためオンとオフがなく常時労働を強いられている。逆説的に言えばそこまでしているからこそ、大金を稼げるのでもあるが――。
ホストクラブやメンチカ(※)といった業界は、こうしたSNSによるブランディングと、ファン(客)とのつながりによって支えられている側面が大きい。メジャーなアイドルや有名人は一人のファンによって売り上げや人気が左右されることはあまりないが、彼らは客との距離が近く、直接やり取りしている場合が多い。それだけ推しが「近くて手に入りそうな存在」であり、サービス以上に破格の金額を投じる女性たちがいるのもまた事実だ。
※メンチカメンズ地下アイドルの略称。ライブに加え、チェキや物販で稼ぐ。数百万円を稼ぎだすメンチカも存在する。そのため物販やチェキでの特典が過激になることもある。ハグに始まりキスなども……。某メンズ地下アイドルは、「前戯」を物販したことで炎上したらしい。
こうした距離感のリスクとしては、顧客への対応やLINEのやり取りがネット上に晒されたり、ネットストーカー傾向のある厄介な客の管理まで仕事のひとつになる場合がある。
そうした「SNSでの営業」をコンカフェキャスト以上に強いられている職業がある。女性専用風俗だ。男性向けに比べればまだまだ認知度が低いことに加え、女性が予約するには勇気がいるため、なかなか広がらなかった。筆者がある大手グループに予約のLINEを送ったとき、「勇気を出してお問い合わせいただきありがとうございます」とメッセージが返ってきたほどだ。
そんな女性用風俗界隈では、「女風に興味があるけどまだ予約までは……」といった女性がSNSのアカウントを作成することが多い。キャストはそんなアカウントに向けて営業DMを送るなど日夜を問わず活動する必要性がある業界となっている。
2018年は石田衣良の小説『娼年』が松坂桃李主演で実写化された年でもあり、女性用風俗の認知度が拡大したことで女風元年と呼ばれている。確かに過去に出張ホストなどはあったが、料金が高額、本番行為を伴うなど違法性が高かった。しかし、現在は非本番で料金設定も60分1万2000円程度で若いイケメンのセラピストが在籍する店舗が増えた。令和ならではの女性用風俗という女の新たな遊びだが、ただプレイするだけではない。そこで働き手は心身ともに疲弊しているケースが多い。
「正直、こんなに風俗の仕事がキツいとは思っていなかった」
そうこぼすのは、都内の人気店で働いて半年になる19歳のハルキだ。コロナ禍で就職予定だった美容室が倒産し、生活資金を稼ぐためになんの知識もないまま業界の門を叩いた。
店主による雑な説明と簡単な実践、そして講習料と登録料として僅かな貯金から7万円を支払いセラピストに登録したという。もともと男社会や会話でのコミュニケーションが苦手だったというハルキは、女性用風俗なら「作業」をすればいいだけだと思っていたが、実際は違った。
「ホテルでのプレイよりも、前後のやり取りに時間がかかる。一度に多数の指名客、またはSNSの予備軍とやり取りするだけで一日がつぶれます……。あと、中年女性と手をつなぎ、若者だらけの繁華街を歩いたのはキツかったです。手をつなぐのも最初は善意で一回やったら、それがお客さんの当たり前みたいになっちゃって。今更言い出せなくて、毎回そのお客さんとは駅までの15分くらいは無料サービス状態です。常連客のなかには、自分に対しどこまで無料でサービスしてくれるかで、自分の女としての価値を試そうとする人もいます。そして何かあったら『客だろ?』って上から目線なのもキツい。あとは勃起してないと怒る人もいるので、精力剤を手放せなくなりました」
店のマニュアルとして、初指名の際に水とお茶を買って女性客に選んでもらうというのがある。ハルキは本指名になった客にこれをやらなくなった。すると、彼のSNSには長文の苦情メッセージが届いたという。
「お客から『最初に比べて雑になったよね、手を抜いてるよね』と言われました。正直イラっとしました……。お茶出しのサービスは、こっちがお金を出してやってる善意なんです。ほかにもムカつくことは多々ありますよ。終了予定時刻を過ぎてもホテルを出ようとしない人とか、強引に本番しようとする人とか。女性が働くデリヘルならば店が助けてくれるんでしょうけど、女風は基本、キャスト任せ。店にはLINEで『入りました』『出ました』と報告するだけ。それで料金から半分以上の取り分をもっていくんですから、ヒドいっすよ」
半年間で、ハルキは精神的消耗から安定剤の服用を始めたという。彼は現在、セラピストとして働きつつ、店には内緒で2人ほどの女性客から“裏引き”をしているという。単純に手取りは倍になったが、悩みも倍に増えたという。
「正直、失敗したと思っています。店を通してないってことは、特別感も生まれてしまう。性的サービスを買うというよりも、一緒にいる関係とかにお金が発生している感じが強くなる。だから下手に拒否をすると、お客さんの精神状態が悪くなる、いわばメンヘラになる。さらに彼女たちは『私はほかの客と違うでしょ!』みたいなマウントまで持ち出してくる。これ、そのお客さんから来たLINEなんですけど、ちょっとすごくないですか?」
見せてきたスマホには、裏引きで会っている女性から、彼への要望が画面にビッシリ埋まっていた。
女風は一緒にいる時間に金銭が発生するため、デートだけでも有料だ。そのため、食事2時間、ホテル2時間の場合は4時間分の料金になる。ハルキはしっかり時間分を請求した結果、その女性は逆上したという。彼に届いたメールを、一部抜粋する。
「あなたはほっておくと、ご飯すら食べないんじゃないかなって心配して、会うときは食事に誘ったり軽食をもって行ったんです。ハルキを大切に思ってるからこその好意なのよ。一緒に出掛けたり、ご飯を食べて『おいしいね!』と共有するのが楽しかった。あなたも楽しかったでしょ? だから4時間分はいらないと思わない? いまはお店を通してないから、渡すお金の全額がハルキの手に渡ってる。普通に考えて時給1万なんてもらえる仕事なんてないよ? その辺も本当に私のことを大切に思っているならば、考えてほしいです」
ハルキのケースのように、女風の客はセラピストの対応次第で自分の「女らしさ」を確かめているケースが多い。前述したようにセラピストが勃起しているかを確かめたり、本番行為をねだって応えてくれるかを見ている客がいるのだ。彼女たちが利用する匿名掲示板では、「私はかわいいから本番をしてくれた」「あのセラピストはどんなブスでもすぐ本番するよ」などの書き込みが目立つ。
また、そんなセラピストにガチ恋している自分を認めたくないのか、「所詮、女の股を舐めないと生きていけない男」「学歴もないし今後どうなるんだろう?」「あんな接客で稼げるわけないのに」「バター犬のくせに」などの侮蔑的発言も散見される。夜の仕事への差別や攻撃的な発言は、男女ともに一定数あるもののようだ。
もうひとつ、未成年の男性たちの稼ぐ手段として、ママ活にも触れておきたい。筆者は18歳の現役大学生であるレオに話を聞いた。
「今は固定の太いママがいて、部屋も借りてもらってます。あとは単発でママ活していて、僕は結構安い。デートで1万、エッチで2万、合わせて3万程度です。女性と違い、妊娠のリスクないですから。でも、10歳上の好きでもない女性に、こっちが性欲ないときでも求められたら応じなきゃいけないのは結構キツいですね……。ママ活という言葉も大学だと結構ライトに飛び交いますね。同級生もSNSで頻繁に『ママほしー!』なんて呟いている。女の子はパパ活しててもセックスしていることを隠したがるけど、男側は結構あっけらかんと全部話していますね」
ママ活系のマッチングアプリも多数存在し、かつてはヒモを飼いたい女性とヒモになりたい男性をマッチングさせるサービスも存在した。筆者も2020年に利用したことがあり、特に新型コロナウイルスによる一度目の緊急事態宣言中は、バイトを失った大学生や、店が休業して収入途絶えたホストが宣材写真をアイコンにして登録するパターンもあった。
こうしたサービスは本来身分証の確認は必須だったが、すべてスマートフォン上で済ませられる時代だけに、兄の免許証などを借りて登録する未成年者も多かった事実がある。実際、ママ活アプリでマッチして出会ったら相手の男の子が15歳だったというケースも存在したそうだ。
現代は女性だけではなく、男性も未成年のうちから相手に金銭をもらうことへのハードルが下がってきているのを感じる。彼らは性的に消費されることに対する実感を持たずに要求に応えていたが、しばらくしてから「気持ち悪かった」と自覚するケースを耳にする。日本では女性の性的搾取、性暴力が取り上げられがちだが、筆者は男性の性的搾取、男性への性暴力も同じくらい重い問題だと考えている。
———-佐々木 チワワ(ささき・ちわわ)ライター2000年生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)在学中。10代のころから歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。———-
(ライター 佐々木 チワワ)