「トー横から排除されたら帰る場所がない」路上飲酒、薬物、売春…コロナ禍の歌舞伎町に集まる少女たちの“危うさ”

ハダカを売る少女たちは、警察の摘発から追われるようにしてその土壌を変えてきた。
【写真】この記事の写真を見る(3枚) 使用済みの下着をショップを介して売ったブルセラブーム、人知れず買春客がとれた出会い系サイト、表向きは男女の出会いの場だが裏では援助交際の交渉の場として機能していた出会いカフェ、流行語大賞にノミネートまでされたJKビジネス。みな過去の舞台だ。少女たちが抱える「生きづらさ」 しかし、少女買春の逮捕者が断続的に報道されているように、売春を目論む少女たちがキレイさっぱり消えたワケではない。

「トー横キッズ」に「コンカフェ」――この、聞き慣れない単語は何か。コロナ禍で生まれた、令和の代表的な少女売春の根源である。iStock.com 東京、新宿歌舞伎町。その中心部にゴジラのハリボテで有名な「新宿東宝ビル(旧コマ劇場)」がある。「トー横キッズ」とは、ビル東側の路地でたむろする若者たちのことだ。少女たちは全身黒ずくめの服装と、泣きはらしたような赤い目元や血色感の無い肌で、病弱で心が病んでいることを主張する。「トー横」集合の目的は 新型コロナ前、SNSを通じて交流していた少女たちの一部がオフ会をする待ち合わせ場所としてトー横を使い始めた。少女らが歌舞伎町から自撮りを発信すると、裾野が広がり多くの若者たちが集まるようになった。これがトー横キッズの始まりである。 トー横集合の目的は何か。話を聞くと、少女たちはこう口を揃えた。 私たちは居場所を求めてやってきた。ここには救いがあるかもしれないから。 複雑な家庭環境や交友関係での疲弊。JKビジネスでカラダをカネに換えて承認欲求を満たしていたティーンのごとく、みな“生きづらさ”を抱えていた。“同調圧力”による感覚のズレ 境遇は様々だが、このコミュニティにあるのはステレオタイプな社会のレールから弾かれてしまった者同士ならではの、ぬめっとした連帯感だ。ひとたび誰かが非行に走れば、右に倣えと感染する。年上の若者たちに倣い路上飲みすることはもちろん、クスリの味も覚える。 2021年5月には、アパホテル新宿歌舞伎町タワーからトー横キッズと見られる18歳の男子専門学校生と14歳の女子中学生の飛び降り自殺も確認された。大人たちに誘われ援助交際に手を染める少女も少なくない。 フツーの少女はたとえ反抗期でもここまで飛躍はしない。薬物の摂取や売春、はたまた自殺に至るまでにはブレーキが働くものだ。なのに、なぜキッズたちはアクセルを踏むのか。 学校や家庭に居場所はない。トー横からも排除されたら帰る場所がない。 少女は言った。売春や薬物摂取という、親には言えない秘密を共有しあうことが絆とでも言うのか。理屈うんぬんではなく、同調圧力により感覚がズレてしまっているようだ。買春目的の大人たち「コンカフェ」は、コンセプトカフェの略称。メイドカフェとガールズバーの中間に位置する業態で、患者とナース、野球ファンとチアガールといった様々なコンセプトのもと、客はアルコールを含めたドリンクを飲みながら嬢とイメージ接客を楽しむ。 このコンカフェ、秋葉原を所轄する捜査関係者によれば、夜の店が疲弊するコロナ禍にあり、2019年の170軒から20年に270軒強まで激増し、どこも盛況だという。 名称はカフェだが、お酒がメインで、果たして実態はバーである。 ガールズバーは時給3000円は出さないと女のコが集まらないところ、コンカフェなら1500円でも応募が殺到。店もスナック程度の小スペースでいい。シャンパンなどの高級ボトルが開けばキャバクラ並の売り上げも期待できる。だから他業種からの流入が加速した―ある経営者は雄弁に内情を語る。 ここにも、度重なる摘発や条例強化によりJKビジネスから姿を消した未成年者たちが集まっている。「裏オプ」で“本番行為”も 昼過ぎから営業する店舗も多く、深夜帰宅を危惧する「親対策」もバッチリ。自然、現役高校生世代の溜まり場になった。メイドカフェ同様に、現役高校生が生息できるグレーな業態であるからである。 認知が進むと、一般的なJKたちにも「割のいいバイト」として裾野が広がる。事実、ある店舗は在籍40名のうち、約8割が18歳以下の現役か中退した少女たちだ。 少女がたむろすれば、買春目的の大人たちも集まる。彼らは少女とLINEを交換し、店を介さず店外での援助交際に誘う。そして少女もカラダをカネに換える。 手口は、JKビジネスの流れを汲む「裏オプ」という凶暴凶悪なアイデアだ。裏オプションの略で、表の接客サービスとは別に、客との直取引で手コキやフェラ、本番などの性行為をしてカネを得るのである。心の拠り所を求めて 捜査関係者は、店舗外での個人交渉による売春の摘発について、無店舗のため実態が把握しづらいと地団駄を踏んだ。 摘発も困難ななか、コンカフェだけはちゃっかり隆盛し、売買春を目論む大人と少女をつなぐ場として機能している。 暮夜ひそかに、歌舞伎町と秋葉原は売買春に魅せられた男女で賑わっていた。コロナ禍で外出自粛が要請されるなか、連日ドンチャン騒ぎが行われているというのも不思議な感じだ。 トー横で、実の父親ほど年が離れたオヤジと交渉する、17歳。コンカフェで今夜の相手を見繕う、16歳。みなこの地に心の拠り所を求めて流転した、迷える主人公である。◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。(高木 瑞穂/ノンフィクション出版)
使用済みの下着をショップを介して売ったブルセラブーム、人知れず買春客がとれた出会い系サイト、表向きは男女の出会いの場だが裏では援助交際の交渉の場として機能していた出会いカフェ、流行語大賞にノミネートまでされたJKビジネス。みな過去の舞台だ。
しかし、少女買春の逮捕者が断続的に報道されているように、売春を目論む少女たちがキレイさっぱり消えたワケではない。
「トー横キッズ」に「コンカフェ」――この、聞き慣れない単語は何か。コロナ禍で生まれた、令和の代表的な少女売春の根源である。
iStock.com
東京、新宿歌舞伎町。その中心部にゴジラのハリボテで有名な「新宿東宝ビル(旧コマ劇場)」がある。「トー横キッズ」とは、ビル東側の路地でたむろする若者たちのことだ。少女たちは全身黒ずくめの服装と、泣きはらしたような赤い目元や血色感の無い肌で、病弱で心が病んでいることを主張する。
新型コロナ前、SNSを通じて交流していた少女たちの一部がオフ会をする待ち合わせ場所としてトー横を使い始めた。少女らが歌舞伎町から自撮りを発信すると、裾野が広がり多くの若者たちが集まるようになった。これがトー横キッズの始まりである。
トー横集合の目的は何か。話を聞くと、少女たちはこう口を揃えた。
私たちは居場所を求めてやってきた。ここには救いがあるかもしれないから。
複雑な家庭環境や交友関係での疲弊。JKビジネスでカラダをカネに換えて承認欲求を満たしていたティーンのごとく、みな“生きづらさ”を抱えていた。
境遇は様々だが、このコミュニティにあるのはステレオタイプな社会のレールから弾かれてしまった者同士ならではの、ぬめっとした連帯感だ。ひとたび誰かが非行に走れば、右に倣えと感染する。年上の若者たちに倣い路上飲みすることはもちろん、クスリの味も覚える。
2021年5月には、アパホテル新宿歌舞伎町タワーからトー横キッズと見られる18歳の男子専門学校生と14歳の女子中学生の飛び降り自殺も確認された。大人たちに誘われ援助交際に手を染める少女も少なくない。
フツーの少女はたとえ反抗期でもここまで飛躍はしない。薬物の摂取や売春、はたまた自殺に至るまでにはブレーキが働くものだ。なのに、なぜキッズたちはアクセルを踏むのか。 学校や家庭に居場所はない。トー横からも排除されたら帰る場所がない。 少女は言った。売春や薬物摂取という、親には言えない秘密を共有しあうことが絆とでも言うのか。理屈うんぬんではなく、同調圧力により感覚がズレてしまっているようだ。買春目的の大人たち「コンカフェ」は、コンセプトカフェの略称。メイドカフェとガールズバーの中間に位置する業態で、患者とナース、野球ファンとチアガールといった様々なコンセプトのもと、客はアルコールを含めたドリンクを飲みながら嬢とイメージ接客を楽しむ。 このコンカフェ、秋葉原を所轄する捜査関係者によれば、夜の店が疲弊するコロナ禍にあり、2019年の170軒から20年に270軒強まで激増し、どこも盛況だという。 名称はカフェだが、お酒がメインで、果たして実態はバーである。 ガールズバーは時給3000円は出さないと女のコが集まらないところ、コンカフェなら1500円でも応募が殺到。店もスナック程度の小スペースでいい。シャンパンなどの高級ボトルが開けばキャバクラ並の売り上げも期待できる。だから他業種からの流入が加速した―ある経営者は雄弁に内情を語る。 ここにも、度重なる摘発や条例強化によりJKビジネスから姿を消した未成年者たちが集まっている。「裏オプ」で“本番行為”も 昼過ぎから営業する店舗も多く、深夜帰宅を危惧する「親対策」もバッチリ。自然、現役高校生世代の溜まり場になった。メイドカフェ同様に、現役高校生が生息できるグレーな業態であるからである。 認知が進むと、一般的なJKたちにも「割のいいバイト」として裾野が広がる。事実、ある店舗は在籍40名のうち、約8割が18歳以下の現役か中退した少女たちだ。 少女がたむろすれば、買春目的の大人たちも集まる。彼らは少女とLINEを交換し、店を介さず店外での援助交際に誘う。そして少女もカラダをカネに換える。 手口は、JKビジネスの流れを汲む「裏オプ」という凶暴凶悪なアイデアだ。裏オプションの略で、表の接客サービスとは別に、客との直取引で手コキやフェラ、本番などの性行為をしてカネを得るのである。心の拠り所を求めて 捜査関係者は、店舗外での個人交渉による売春の摘発について、無店舗のため実態が把握しづらいと地団駄を踏んだ。 摘発も困難ななか、コンカフェだけはちゃっかり隆盛し、売買春を目論む大人と少女をつなぐ場として機能している。 暮夜ひそかに、歌舞伎町と秋葉原は売買春に魅せられた男女で賑わっていた。コロナ禍で外出自粛が要請されるなか、連日ドンチャン騒ぎが行われているというのも不思議な感じだ。 トー横で、実の父親ほど年が離れたオヤジと交渉する、17歳。コンカフェで今夜の相手を見繕う、16歳。みなこの地に心の拠り所を求めて流転した、迷える主人公である。◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。(高木 瑞穂/ノンフィクション出版)
フツーの少女はたとえ反抗期でもここまで飛躍はしない。薬物の摂取や売春、はたまた自殺に至るまでにはブレーキが働くものだ。なのに、なぜキッズたちはアクセルを踏むのか。
学校や家庭に居場所はない。トー横からも排除されたら帰る場所がない。
少女は言った。売春や薬物摂取という、親には言えない秘密を共有しあうことが絆とでも言うのか。理屈うんぬんではなく、同調圧力により感覚がズレてしまっているようだ。
「コンカフェ」は、コンセプトカフェの略称。メイドカフェとガールズバーの中間に位置する業態で、患者とナース、野球ファンとチアガールといった様々なコンセプトのもと、客はアルコールを含めたドリンクを飲みながら嬢とイメージ接客を楽しむ。
このコンカフェ、秋葉原を所轄する捜査関係者によれば、夜の店が疲弊するコロナ禍にあり、2019年の170軒から20年に270軒強まで激増し、どこも盛況だという。
名称はカフェだが、お酒がメインで、果たして実態はバーである。
ガールズバーは時給3000円は出さないと女のコが集まらないところ、コンカフェなら1500円でも応募が殺到。店もスナック程度の小スペースでいい。シャンパンなどの高級ボトルが開けばキャバクラ並の売り上げも期待できる。だから他業種からの流入が加速した―ある経営者は雄弁に内情を語る。
ここにも、度重なる摘発や条例強化によりJKビジネスから姿を消した未成年者たちが集まっている。
昼過ぎから営業する店舗も多く、深夜帰宅を危惧する「親対策」もバッチリ。自然、現役高校生世代の溜まり場になった。メイドカフェ同様に、現役高校生が生息できるグレーな業態であるからである。
認知が進むと、一般的なJKたちにも「割のいいバイト」として裾野が広がる。事実、ある店舗は在籍40名のうち、約8割が18歳以下の現役か中退した少女たちだ。
少女がたむろすれば、買春目的の大人たちも集まる。彼らは少女とLINEを交換し、店を介さず店外での援助交際に誘う。そして少女もカラダをカネに換える。
手口は、JKビジネスの流れを汲む「裏オプ」という凶暴凶悪なアイデアだ。裏オプションの略で、表の接客サービスとは別に、客との直取引で手コキやフェラ、本番などの性行為をしてカネを得るのである。心の拠り所を求めて 捜査関係者は、店舗外での個人交渉による売春の摘発について、無店舗のため実態が把握しづらいと地団駄を踏んだ。 摘発も困難ななか、コンカフェだけはちゃっかり隆盛し、売買春を目論む大人と少女をつなぐ場として機能している。 暮夜ひそかに、歌舞伎町と秋葉原は売買春に魅せられた男女で賑わっていた。コロナ禍で外出自粛が要請されるなか、連日ドンチャン騒ぎが行われているというのも不思議な感じだ。 トー横で、実の父親ほど年が離れたオヤジと交渉する、17歳。コンカフェで今夜の相手を見繕う、16歳。みなこの地に心の拠り所を求めて流転した、迷える主人公である。◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。(高木 瑞穂/ノンフィクション出版)
手口は、JKビジネスの流れを汲む「裏オプ」という凶暴凶悪なアイデアだ。裏オプションの略で、表の接客サービスとは別に、客との直取引で手コキやフェラ、本番などの性行為をしてカネを得るのである。
捜査関係者は、店舗外での個人交渉による売春の摘発について、無店舗のため実態が把握しづらいと地団駄を踏んだ。
摘発も困難ななか、コンカフェだけはちゃっかり隆盛し、売買春を目論む大人と少女をつなぐ場として機能している。
暮夜ひそかに、歌舞伎町と秋葉原は売買春に魅せられた男女で賑わっていた。コロナ禍で外出自粛が要請されるなか、連日ドンチャン騒ぎが行われているというのも不思議な感じだ。
トー横で、実の父親ほど年が離れたオヤジと交渉する、17歳。コンカフェで今夜の相手を見繕う、16歳。みなこの地に心の拠り所を求めて流転した、迷える主人公である。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。
(高木 瑞穂/ノンフィクション出版)