《猪苗代湖ボート事故》「気づかなかった」「同乗者への口止めは虚偽の報道」被告の主張

「被害に遭われたかたの大切な命を奪い、重大なケガをさせたことは、その通りで認めます。争いません。本当に申し訳ない気持ちで一杯です。被害者、遺族には深く謝罪をいたします」
【写真】佐藤剛被告のコワモテな素顔 証言台に立った被告は、あらかじめ準備しておいたメモを読み上げ、そして率直に謝罪した。 暮れも押し迫った12月27日、朝から降り積もった雪の中、福島地方裁判所の203号法廷(三浦隆昭裁判長)で、「猪苗代湖ボート事故」を起こした福島県いわき市の佐藤剛被告(44)に業務上過失致傷を問う初公判が開廷した。

走り去った大型ボート 事故は昨年9月、福島県会津若松市の猪苗代湖で発生。男女4人が水上スキーの順番待ちをするために、ライフジャケットをつけて湖面に浮かんでいたところ、佐藤被告が運転する大型ボートが突っ込んだ。千葉県野田市の小学校3年生・豊田瑛太くん(当時8)が死亡したほか、その母親(36)ら2人が重傷を負う大惨事だった。 ところが、大型ボートはそのまま走り去ってしまう。当日は複数のボートが湖面を運航していて、目撃証言も曖昧だったことから、ボートの特定は難航した。 だが今年9月、福島県警はおよそ1年をかけてボートを特定。被告を業務上過失致死傷の疑いで佐藤被告を逮捕した。このとき被告は、「身に覚えがない」 などと否認していたはずだが……。 初公判当日、被告は黒いスーツの上下に、ネクタイなしの白いワイシャツ、白いマスク姿で出廷。被告の事故前に撮られた写真に比べて、髪はやや伸び肌はやや浅黒くなり、体型はかなりふくよかになっていた。 被告は冒頭で謝罪するも、その後は、「被害者のかたが湖面に浮いているのはまったく見えませんでした。事故については争いませんが、あの日、どうやったら被害者のかたを発見できたのか。見落とさなかったのか。私の船の同乗者は誰も被害者のかたに気づけませんでした。気づいた事実はいっさいありません」 と、事故が予見できなかったと主張。さらに被告の弁護人もこう訴えた。「事故の事実、その結果、因果関係は争うことはしません。けれども、被害者のかたがいたという認識もありません。したがって、認識なき過失です。この部分を、この法廷で審理を尽くしていただきたいと考えております」 加えて弁護人は、「一部の報道では、事故時に被告が“ヤバイ”と言った、ほかの同乗者(男性3人・女性6人)に口止めをしたなどとありますが、それはまったくの虚偽の報道です。被告も、同乗者も、誰も事故を起こしたという認識はなかったのです」ママチャリと同じスピード 一方、検察は「前方を走る仲間のボートは100メートル先で被害者らを発見し、かじを切っている」と指摘。被告の大型ボートは湖面を時速15~20キロメートルで走行していたというが、これはママチャリなどの自転車で走るスピードとほぼ同じだ。 続いて、亡くなった瑛太ちゃんの父親の証言が述べられた。「瑛太は上半身と下半身がバラバラになっていた(足は後日、発見された)。母親も足がぶらぶらの状態だった。瑛太はもうダメだと思ったが、母親だけはなんとか助けたいと思った」 母親は事故で両足の膝から下を失っている。いくら大型ボートとはいえ、運転する被告がこの大惨事を起こしたことにまったく気づかないものだろうか。 法廷が50分弱で閉廷すると、瑛太ちゃんと思われる遺影を抱いた父親らしき男性が、法廷を足早に去っていった。瑛太ちゃんは、みずからの命を奪った被告の裁判を、ちゃんと見ている。
証言台に立った被告は、あらかじめ準備しておいたメモを読み上げ、そして率直に謝罪した。
暮れも押し迫った12月27日、朝から降り積もった雪の中、福島地方裁判所の203号法廷(三浦隆昭裁判長)で、「猪苗代湖ボート事故」を起こした福島県いわき市の佐藤剛被告(44)に業務上過失致傷を問う初公判が開廷した。
事故は昨年9月、福島県会津若松市の猪苗代湖で発生。男女4人が水上スキーの順番待ちをするために、ライフジャケットをつけて湖面に浮かんでいたところ、佐藤被告が運転する大型ボートが突っ込んだ。千葉県野田市の小学校3年生・豊田瑛太くん(当時8)が死亡したほか、その母親(36)ら2人が重傷を負う大惨事だった。
ところが、大型ボートはそのまま走り去ってしまう。当日は複数のボートが湖面を運航していて、目撃証言も曖昧だったことから、ボートの特定は難航した。
だが今年9月、福島県警はおよそ1年をかけてボートを特定。被告を業務上過失致死傷の疑いで佐藤被告を逮捕した。このとき被告は、
「身に覚えがない」
などと否認していたはずだが……。
初公判当日、被告は黒いスーツの上下に、ネクタイなしの白いワイシャツ、白いマスク姿で出廷。被告の事故前に撮られた写真に比べて、髪はやや伸び肌はやや浅黒くなり、体型はかなりふくよかになっていた。
被告は冒頭で謝罪するも、その後は、
「被害者のかたが湖面に浮いているのはまったく見えませんでした。事故については争いませんが、あの日、どうやったら被害者のかたを発見できたのか。見落とさなかったのか。私の船の同乗者は誰も被害者のかたに気づけませんでした。気づいた事実はいっさいありません」
と、事故が予見できなかったと主張。さらに被告の弁護人もこう訴えた。
「事故の事実、その結果、因果関係は争うことはしません。けれども、被害者のかたがいたという認識もありません。したがって、認識なき過失です。この部分を、この法廷で審理を尽くしていただきたいと考えております」
加えて弁護人は、
「一部の報道では、事故時に被告が“ヤバイ”と言った、ほかの同乗者(男性3人・女性6人)に口止めをしたなどとありますが、それはまったくの虚偽の報道です。被告も、同乗者も、誰も事故を起こしたという認識はなかったのです」
一方、検察は「前方を走る仲間のボートは100メートル先で被害者らを発見し、かじを切っている」と指摘。被告の大型ボートは湖面を時速15~20キロメートルで走行していたというが、これはママチャリなどの自転車で走るスピードとほぼ同じだ。
続いて、亡くなった瑛太ちゃんの父親の証言が述べられた。
「瑛太は上半身と下半身がバラバラになっていた(足は後日、発見された)。母親も足がぶらぶらの状態だった。瑛太はもうダメだと思ったが、母親だけはなんとか助けたいと思った」
母親は事故で両足の膝から下を失っている。いくら大型ボートとはいえ、運転する被告がこの大惨事を起こしたことにまったく気づかないものだろうか。
法廷が50分弱で閉廷すると、瑛太ちゃんと思われる遺影を抱いた父親らしき男性が、法廷を足早に去っていった。瑛太ちゃんは、みずからの命を奪った被告の裁判を、ちゃんと見ている。