病院火災の原因は「放火」が最多…理由と対策を日本病院会に聞いた

病院の火災の原因…最多は「放火」で33件12月17日、大阪・北新地の心療内科クリニックで起きた放火殺人事件では、25人が死亡し、警察は重篤な状態となっている谷本盛雄容疑者による犯行と特定し、調べている。クリニックの防犯カメラには、谷本容疑者が、ガソリンとみられる液体にライターで火をつけた後、脱出しようとする人に体当たりする様子が映っていた。ビル内のクリニックで起きた放火事件で、ビル内の防火対策の課題も指摘されている。一方で、病院での火災に目を向けると、火災の原因などを明らかにした、興味深い調査結果がある。

全国の2485の病院が加盟する(2021年12月18日現在)、一般社団法人日本病院会が2018年と2019年に行い、2019年の11月に公表した調査だ。調査は2回行われ、1回目は2018年。調査の対象は、火災を経験した日本病院会の会員病院の96病院。この96病院で回答があった火災の事例は102件だった。2回目の調査が行われたのは2019年。火災を経験した96病院に再び調査し、回答があった災の事例63件が調査結果に反映されている。2回にわたって行われたこの調査で、病院の出火原因で最も多かったのは「放火」で、33件あることが分かった。次に多いのが、「たばこ」と「調理機器」の14件。「医療機器等」が9件、「配線・コンセント」が7件で続いた。「携帯電話」からの火災も3件、報告されている。放火された場所は、「病室内」が最も多く7件、次に多いのが「トイレ」で5件という結果だった。日本病院会の調査結果では、「これが病院における放場所の般的な傾向と思われる」としている。放火の手段は「ライター」が最も多く11件、次が「不明」で4件、3番目に多いのが「たばこ」で2件だった。今回の調査対象は、火災を経験した日本病院会の会員病院の96病院と限られてはいるが、病院の火災の原因で最も多いのが「放火」というのは驚きの結果だ。一体なぜ、「放火」が多いのだろうか?また、「放火」に備え、病院ではどのような対策が必要なのだろうか?日本病院会の専門委員会「救急・災害医療対策委員会」の委員で、病院の防災訓練のガイドラインの作成に関与した、戸田中央医科グループ 災害対策室長兼災害対策特別顧問、野口英一さんに話を聞いた。「放火」の件数が多い理由――今回の調査、ビル内のクリニックは対象?調査の対象ではありません。――2018年と2019年の2回、調査を行った理由は?本病院会の「救急・災害医療対策委員会」として、さらに実践的なガイドラインとするには、実際の災時の対応を調査・分析し、ガイドラインの各項を検証し、適宜補遺・改訂をう必要があるとの結論にりました。2回目の調査は、火災を経験した会員病院に対し、アンケートを行い、発した災時の対応動事例の収集・調査を行いました。――2回目の調査の結果は、放火場所や放火手段の件数に反映されている?放火場所などの内容、件数に反映しています。――1965年~2018年までの53年間で、日本病院会の会員病院の火災は102件。これは多い?それとも少ない?こちらの調査は、日本病院会の会員の病院のうち、アンケートに答えていただいた96病院が対象となっています。日本の病院の全てが網羅できているわけではなく、日本病院会の会員の全てではありませんので、多いか、少ないかの判断をするのは難しいです。――放火33件のうち、放火場所が明らかになっているのは19件。残りの14件は?不明です。アンケートに回答がありませんでした。――放火したのがどのような人物なのかは調査していない?はい。設問に設けませんでした。――今回の調査では「放火」の件数が最も多かった。この理由として考えられることは?繰り返しになりますが、今回の調査は、日本の病院の全てが網羅できているわけではありません。アンケートに答えていただいた、日本病院会の会員の96病院では放火が最も多かったということです。これを前提に、ここからは私の個人的な印象をお話しします。昭和40年代前後は、病室のたばこの不始末や、石油ストーブの灯油を給油中に火がうつるなど、過失による火災が多かったという印象があります。人が亡くなる火災もありました。こうした状況を受け、建物の壁や天井を不燃化する、スプリンクラーなど消防用設備を自動化する、といった防災対策の強化が進められ、病院では火災が起きづらくなりました。これに伴い、”過失による火災”も減りました。それなのに、なぜ病院で火災が起きるのかといいますと、これは”故意による火災”です。”過失による火災”は減る一方で、”故意による火災”は変わらないので、相対的に放火の件数が多く見えてしまうということだと思います。放火を防ぐための3つの対策――病院での放火を未然に防ぐためには、どのような対策が必要?まずは、「ライターなどの持ち込みを規制すること」です。火を付ける道具を持ち込ませないようにすれば、放火は防ぐことができます。つづいて、「整理整頓」。廊下に物を出しっぱなしにするなど、整理整頓ができていないと、病院内に火を付けることを可能とする死角ができてしまいます。こうした死角をなくすためには、病院内の整理整頓が重要です。そして、「病院内の見回り」。診察のとき以外にも、意図的に病院内を見回ることは放火を防ぐことにつながります。――多くの病院はこうした対策をすでに行っている?はい。行っています。――万が一、病院が放火された時に備えて、どのような準備が必要?火災が起きた時にどのように逃げるのかを想定した、避難訓練を実施しておくことです。――多くの病院はこうした避難訓練、実施している?はい。実施しています。――ビル内のクリニックでは放火に備えて、どのような準備が必要?放火された時にどのように逃げるのかを考え、避難経路を目立つ場所に掲示しておくことが重要です。また、避難経路を複数、持っておくことも大事です。――大阪の放火事件を受けて、感じたことは?不特定多数の人が出入りする場所では、当事者意識を持って対策をとる必要があると感じました。不特定多数が出入りする場所を訪れた際は、必ず、避難経路を確認してください。相対的に放火の件数が多く見えてしまうのではという見解だったが、病院内での放火を防ぐために必要な対策は「ライターなどの持ち込みを規制すること」「整理整頓」「病院内の見回り」の3つで、万が一、放火された時の準備としては「どのように逃げるのかを想定した避難訓練の実施」が必要とのことで、これらはすでに多くの病院で行われていることが分かった。
12月17日、大阪・北新地の心療内科クリニックで起きた放火殺人事件では、25人が死亡し、警察は重篤な状態となっている谷本盛雄容疑者による犯行と特定し、調べている。
クリニックの防犯カメラには、谷本容疑者が、ガソリンとみられる液体にライターで火をつけた後、脱出しようとする人に体当たりする様子が映っていた。
ビル内のクリニックで起きた放火事件で、ビル内の防火対策の課題も指摘されている。一方で、病院での火災に目を向けると、火災の原因などを明らかにした、興味深い調査結果がある。
全国の2485の病院が加盟する(2021年12月18日現在)、一般社団法人日本病院会が2018年と2019年に行い、2019年の11月に公表した調査だ。
調査は2回行われ、1回目は2018年。調査の対象は、火災を経験した日本病院会の会員病院の96病院。この96病院で回答があった火災の事例は102件だった。
2回目の調査が行われたのは2019年。火災を経験した96病院に再び調査し、回答があった災の事例63件が調査結果に反映されている。
2回にわたって行われたこの調査で、病院の出火原因で最も多かったのは「放火」で、33件あることが分かった。次に多いのが、「たばこ」と「調理機器」の14件。「医療機器等」が9件、「配線・コンセント」が7件で続いた。「携帯電話」からの火災も3件、報告されている。
放火された場所は、「病室内」が最も多く7件、次に多いのが「トイレ」で5件という結果だった。
日本病院会の調査結果では、「これが病院における放場所の般的な傾向と思われる」としている。
放火の手段は「ライター」が最も多く11件、次が「不明」で4件、3番目に多いのが「たばこ」で2件だった。
今回の調査対象は、火災を経験した日本病院会の会員病院の96病院と限られてはいるが、病院の火災の原因で最も多いのが「放火」というのは驚きの結果だ。
一体なぜ、「放火」が多いのだろうか?また、「放火」に備え、病院ではどのような対策が必要なのだろうか?
日本病院会の専門委員会「救急・災害医療対策委員会」の委員で、病院の防災訓練のガイドラインの作成に関与した、戸田中央医科グループ 災害対策室長兼災害対策特別顧問、野口英一さんに話を聞いた。
――今回の調査、ビル内のクリニックは対象?
調査の対象ではありません。
――2018年と2019年の2回、調査を行った理由は?
本病院会の「救急・災害医療対策委員会」として、さらに実践的なガイドラインとするには、実際の災時の対応を調査・分析し、ガイドラインの各項を検証し、適宜補遺・改訂をう必要があるとの結論にりました。
2回目の調査は、火災を経験した会員病院に対し、アンケートを行い、発した災時の対応動事例の収集・調査を行いました。
――2回目の調査の結果は、放火場所や放火手段の件数に反映されている?
放火場所などの内容、件数に反映しています。
――1965年~2018年までの53年間で、日本病院会の会員病院の火災は102件。これは多い?それとも少ない?
こちらの調査は、日本病院会の会員の病院のうち、アンケートに答えていただいた96病院が対象となっています。
日本の病院の全てが網羅できているわけではなく、日本病院会の会員の全てではありませんので、多いか、少ないかの判断をするのは難しいです。
――放火33件のうち、放火場所が明らかになっているのは19件。残りの14件は?
不明です。アンケートに回答がありませんでした。
――放火したのがどのような人物なのかは調査していない?
はい。設問に設けませんでした。
――今回の調査では「放火」の件数が最も多かった。この理由として考えられることは?
繰り返しになりますが、今回の調査は、日本の病院の全てが網羅できているわけではありません。アンケートに答えていただいた、日本病院会の会員の96病院では放火が最も多かったということです。
これを前提に、ここからは私の個人的な印象をお話しします。
昭和40年代前後は、病室のたばこの不始末や、石油ストーブの灯油を給油中に火がうつるなど、過失による火災が多かったという印象があります。人が亡くなる火災もありました。
こうした状況を受け、建物の壁や天井を不燃化する、スプリンクラーなど消防用設備を自動化する、といった防災対策の強化が進められ、病院では火災が起きづらくなりました。
これに伴い、”過失による火災”も減りました。それなのに、なぜ病院で火災が起きるのかといいますと、これは”故意による火災”です。
”過失による火災”は減る一方で、”故意による火災”は変わらないので、相対的に放火の件数が多く見えてしまうということだと思います。
――病院での放火を未然に防ぐためには、どのような対策が必要?
まずは、「ライターなどの持ち込みを規制すること」です。火を付ける道具を持ち込ませないようにすれば、放火は防ぐことができます。
つづいて、「整理整頓」。廊下に物を出しっぱなしにするなど、整理整頓ができていないと、病院内に火を付けることを可能とする死角ができてしまいます。こうした死角をなくすためには、病院内の整理整頓が重要です。
そして、「病院内の見回り」。診察のとき以外にも、意図的に病院内を見回ることは放火を防ぐことにつながります。
――多くの病院はこうした対策をすでに行っている?
はい。行っています。
――万が一、病院が放火された時に備えて、どのような準備が必要?
火災が起きた時にどのように逃げるのかを想定した、避難訓練を実施しておくことです。
――多くの病院はこうした避難訓練、実施している?
はい。実施しています。
――ビル内のクリニックでは放火に備えて、どのような準備が必要?
放火された時にどのように逃げるのかを考え、避難経路を目立つ場所に掲示しておくことが重要です。また、避難経路を複数、持っておくことも大事です。
――大阪の放火事件を受けて、感じたことは?
不特定多数の人が出入りする場所では、当事者意識を持って対策をとる必要があると感じました。不特定多数が出入りする場所を訪れた際は、必ず、避難経路を確認してください。
相対的に放火の件数が多く見えてしまうのではという見解だったが、病院内での放火を防ぐために必要な対策は「ライターなどの持ち込みを規制すること」「整理整頓」「病院内の見回り」の3つで、万が一、放火された時の準備としては「どのように逃げるのかを想定した避難訓練の実施」が必要とのことで、これらはすでに多くの病院で行われていることが分かった。