空気注入で殺害された男性、当初は搬送先が「病死」診断…CT画像の気泡で「故意」と判断

茨城県古河市の介護老人保健施設で2020年、入所者の鈴木喜作さん(当時84歳)が急死した事件で、鈴木さんは当初、搬送先の病院で病死と診断されていた。
県警が殺人事件と判断した決め手の一つは、コンピューター断層撮影法(CT)の画像。施設で起きた別の殺人事件を捜査する過程で、鈴木さんの血管に空気が故意に注入された疑いのあることを突き止め、殺人の疑いで元施設職員の再逮捕にこぎ着けた。
■不審死の通報なし
県警によると、古河市仁連(にれい)の介護老人保健施設「けやきの舎(いえ)」で20年5月30日午後3時半頃、点滴を受けていた鈴木さんは容体が急変した。心肺が停止した状態で病院に運ばれ、約2時間後に死亡が確認された。
病院は鈴木さんの死因を病死と判断。病院や施設から県警に、不審死に関する通報はなかった。
医師法によると、医師は死因に不審な点がある時は警察に届け出なければならない。捜査関係者は医師から連絡がなかったことについて、「医師が異状なしと判断したのだろう」と推察する。
■端緒は目撃情報
施設では20年7月6日、入所者の吉田節次さん(当時76歳)も点滴中に急死した。2日後の8日、施設関係者から県警に、元施設職員の赤間恵美容疑者(36)が不審な動きをしていたとの目撃情報が寄せられた。
赤間容疑者は吉田さんの近くで、注射筒(シリンジ)のピストンを押し引きしていたとされる。吉田さんの死後、他の職員から問いただされ、その日のうちに施設をやめていた。
県警は捜査を開始し、吉田さんのCT画像を分析。気泡が写り込んでいるのを確認した。医療の専門家にも意見を求め、空気の量は通常の点滴などで混入する場合を超えており、空気が故意に注入されたと判断。赤間容疑者を今月8日、殺人容疑で逮捕した。
■手口の類似性
吉田さんに関する捜査の過程で県警は、病院が鈴木さんのCT画像を撮影していたことも把握。分析の結果、鈴木さんの体内画像にも気泡が写っていた。大量の空気を故意に注入されて死亡した疑いが強まった。
鈴木さんの体調が急変する前、赤間容疑者が鈴木さんの部屋に入っていく姿も他の職員に目撃されていた。心肺が停止した鈴木さんの「第一発見者」として、誰よりも早く周囲に異変を伝えていたのも赤間容疑者だった。
鈴木さんの死因は、吉田さんと同じ空気塞栓(そくせん)症による急性循環不全。鈴木さんに外傷や抵抗した痕跡がなかったとみられる点も、吉田さんと共通する。県警は、空気注入という手口の類似性や目撃証言などから、赤間容疑者が鈴木さんを殺害したとの見方を強めた。
県警は今月29日、鈴木さんを殺害した疑いで赤間容疑者を再逮捕した。鈴木さんが死亡してから、1年7か月が過ぎていた。