「私の青春でした」 今年でお別れ、雑誌・店舗・サービス・出演者…

2021年もあと1日。
移りゆく時代とともに人々に愛された風景やものたちが去っていった。懐かしさがこみ上げ、甘酸っぱい思い出がよみがえるものも。それぞれの思いを聞いた。
女子中高生らのファッションのお手本だった集英社の雑誌「Seventeen(セブンティーン)」は今年10月号を最後に、月刊発行を終えた。「週刊セブンティーン」として1968年に創刊した。
「初めて見たときは衝撃的でした。こんなにかわいい人たちがいるんだ、と」
さいたま市浦和区の会社員岡紗恵子さん(35)はこう振り返る。中学3年のとき、友人の家で初めて目にして心を奪われ、発売日に必ず買いに走るようになった。
■いまインスタ、当時は雑誌でしか
モデルが制服にリボンやネクタイのアイテムをプラスして着こなす姿に憧れた。進学先の高校は校則が厳しかったため、制服のアレンジを楽しむのは放課後や休日。黄色やピンクのワイシャツに着替え、ラルフローレンやイーストボーイのセーターを羽織って友人と街に繰り出した。
放課後のスケジュール、恋愛の話、ポーチの中身……。モデルの私生活がかいま見られる企画が好きだった。「いまはインスタグラムでモデルさんが発信しているけど、当時は雑誌でしか近づけなかった」と岡さん。特に憧れていたのが「えみちぃ」ことモデルの鈴木えみさんだ。同世代で「お人形さんみたいにかわいいのに飾らない雰囲気が好きだった」。
細い眉毛をまねして整えるつもりが、失敗してなくしてしまったことも。「中高生で試行錯誤した経験があったからこそ、自分に合うファッションがわかるようになった」と話す。
「えみちぃ」のセブンティーン卒業とともに、岡さんも購読をやめ、大学生になると別の雑誌へ。それでも、月刊発行がなくなるのは寂しい。
「セブンティーンは、私の青春でした」
■リラックス空間と思いきや、ごちゃ混ぜ空間に興奮
94年に日本に進出した米国発祥のカジュアルウェアブランド「エディー・バウアー」は今年限りで日本から撤退する。今年暮れに新宿サザンテラス店を訪れた埼玉県和光市の会社員高井裕哉さん(56)は「毎シーズン、買っていた。ビジネスにもカジュアルにも使える落ち着いたデザインで気に入っていたのに残念」と話した。
多くの人を楽しませた東京・お台場の温浴テーマパーク「大江戸温泉物語」も今年9月に閉店した。全国展開する他の施設は営業を続けている。
「Saraba! Oedo Onsen」。シンガポールに住む音楽家でブロガーのシド・ヨンさん(47)はブログにこう書き、別れを惜しんだ。
初めて訪れたのは開業翌年の04年。浴衣を着て館内に入ったとたん驚かされた。「リラックス空間と思いきや、ショーやイベントで活気もあふれる。素晴らしかった!」
ねぶた、駄菓子、アニメに富士山……。日本文化のごちゃ混ぜ空間に興奮した。仕事や観光で日本に来るたびに、お台場の大江戸温泉を訪れること6回。日本に来たら必ず行く場所だった。
新型コロナウイルスの感染拡大で渡航がかなわず、3年前が最後の訪問となった。「残念。でも、これからも忘れない」
「Max」の愛称で知られ、国内で最後の2階建て新幹線「E4系」も10月、定期運行を終えた。8両編成を2本連結したときの定員は1634人で、高速列車では世界最大級だった。ラストランの東京駅のホームには、約1千人の乗客らが詰めかけた。
■「紅白歌合戦に呼んでくれませんかね」
東京五輪とパラリンピックのマスコット「ミライトワ」「ソメイティ」も年内で活動を終える。
18年に小学生の投票でデザインが選ばれ、3年間で300回以上イベントに出演した。大会組織委員会によると、国際オリンピック委員会(IOC)などとのマーケティング契約で期限が年内と定められ、着ぐるみのキャラクターのイベント参加も原則年内で終了する。在庫分のグッズも年内で販売が取りやめになるという。来年以降は、IOCなどの承認が得られればイベントに出演できるという。
組織委の担当職員は「あの子たちの最後の活動として、紅白歌合戦に呼んでくれませんかね……」と淡い期待を抱く。
「喝!」「あっぱれ!」でおなじみの野球解説者張本勲さんも、今月をもってTBS系「サンデーモーニング」を「卒業」した。スポーツコーナーで「ご意見番」を23年務めた。来年も時々番組に登場するが、いったん一区切りとなる。
いつもスタジオで一緒だったアナウンサーの唐橋ユミさんは「ハリさんの『喝!』には、ずっと見ているよ、という優しさと愛がありました」と語る。
毎朝何紙もの新聞を隅々まで読んで放送に臨んでいたが、歯に衣(きぬ)着せぬ「喝!」は時に物議を醸すことも。「喝!」を出した後の楽屋で「どうだったかなあ」と漏らすこともあった。
「とてもシャイな方なんです。あの姿を見たら、みんなハリさんを好きになっちゃう」と唐橋さん。
■「大大大、あっぱれ!」
コロナ前の番組の宴会。実家が福島の酒蔵を営む唐橋さんは、張本さんから日本酒を何本か持ってくるよう頼まれた。そのお酒で盛り上がった夜、張本さんからお金を手渡された。「お札が汗でふにゃふにゃなんです。ずっと握りしめて、声をかけるタイミングを待っていたんだと思います」。宴席では端に座るスタッフのグラスの進み具合まで気を配っていたという。
張本さんの仕事や人柄を間近で見つめた唐橋さんはこう語る。「私に番組で『あっぱれ』を出す権利はありません。でも、いまハリさんに伝えたいです。『大大大、あっぱれ!』って」(小林直子、江戸川夏樹、抜井規泰)